社会人編<38>

「瑠璃さん、話って言うのは・・・」

目の前の夜景に見惚れていたあたしは、高彬のその言葉でハッと我に返り

「ちょっと待って」

慌てて遮った。

高彬が何を言い出す気かは知らないけれど、その前に色々と聞いておきたいことがある。

着けたままになっていたシートベルトを外し、あたしは運転席に座る高彬に身体を向けた。







─Up to you !─side R <第38話>






「ちょっと聞きたいことがあるの」

改まって言うと高彬は一瞬目を見開いたものの、すぐに

「いいよ。何でも答えるよ」

と意を決したように頷いた。

頷き返しながら小さく息を整える。

車の中は静かで、遠くから聞こえるカモメの鳴き声だけが、締め切った窓ガラス越しに車内に流れ込んでくる。

膝の上のドーナツの紙箱からは甘い匂いがしていて、少し考えて足元に置くことにした。

何か、この匂い嗅いでたら気が散るって言うかさ。

ほら、あたしの胃袋って正直だから、また盛大にお腹が鳴ったりしたら困るし。

「あの・・・」

口を開きかけ、はたと考え込んでしまった。

───何から聞こうかしら?

婚約者のこと?合コンのこと?それとも・・・・

あれこれ考えているうちに、ふいにあの男の顔が浮かんできた。

そうよ。

あの男がヌッと現れてから、何だかおかしなことになっちゃったのよ。

一体、あの男は何者なのか───

手始めにそここから聞くのがいいかも知れない。

「ねぇ高彬」

「うん」

「守・・弥・・・・、家司・・・守弥って男、何者なの?」

あの時、男が名乗った名前を思い出しながらつかえつかえ言うと、高彬はハッと息を飲み、見る見る驚愕の色を浮かべた。

そうして瞬きもしないであたしの顔を凝視している。

すぐには物も言えない有様で、その驚きぶりにあたしの方が驚いてしまった。

「る、瑠璃さん・・。どうして瑠璃さんが・・・あいつ・・・守弥を知ってる・・・の?」

絞り出すような声で聞いてくる。

「知ってるって程じゃないんだけど・・・」

むしろ、知らないから聞いてるんだけど。

高彬の異様な反応は気になったけど、あたしはあの男──守弥のことを話した。

ランチをしにホテルに行ったこと、そこに高彬がいたこと、そうしたら見知らぬ男が現れて、高彬と一緒にいる女性を『将来の伴侶』と言ったこと。

私情を挟まないように順序立てて話して行くと、高彬は青くなったり赤くなったりしながら目を剥き

「あいつ・・・。勝手にまた・・」

とうわ言のようにぶつぶつと呟いては舌打ちなんかして<混乱の極み>と言う風情だった。

だけど、だんだんと落ち着いて来て、最後には

「そうか・・・そう言うことだったのか・・・・」

とあたしの顔を見ながら納得したように言い、ため息を付いた。

「あのぅ・・そう言うことって、どういうこと?」

わけが判らなくて高彬の顔を覗き込むと、高彬はハンドルに腕を乗せてほんの少し考え込む顔付きになった。

ぼんやりと思案するような横顔から───目が離せなくなってしまう。

仕事中に見せる真面目な横顔とは違う、困ったような呆けたような、無防備な横顔だった。

やがて振り向いた高彬は苦笑を浮かべると

「何から話していいかわからないけど・・・、ともかく、あの女性がぼくの将来の伴侶だとか、そういうことはないんだ」

きっぱりと言った。






…To be continued…


(←お礼画像&SS付きです)

コメントの投稿

Secre

非公開さま(Rさま)

Rさん、おはようございます。

グリルのお魚ですか~(笑)
確かにあのお魚が焼ける匂いも「誘惑」ではありますよね。
『脱ぎ捨て、引き抜く』高彬、かっこいい!

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

非公開さま(Aさま)

Aさん、こんばんは。

誤解は早めに解いてあげることにしました。
誤解ですれ違いが続くってせつないですもんね。
今後の仁菜子さんの出方も気になるところではあります。(原作での二の姫のその後も気になりますが)

非公開さま(Rさま)

Rさん、こんばんは。

「スーツの上着を脱ぎ捨てネクタイを引き抜く高彬」!
これ、絶対に使わせていただきます。かっこよすぎです。
私の脳内でも再生しています。
しかも、これは普通に脱ぐんではなく「脱ぎ捨てる」ってとこがポイントですよね。ネクタイも外すのではなく「引き抜く」!(笑)
多分、Rさんと私の考えてる場面って同じだと思います・・・(笑)

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

非公開さま(Mさま)

Mさん、こんばんは。

はい、誤解の糸は解き始めていますよね。
(誤解されっぱなしは可哀想・・・)
そして安定の守弥!
だけど、理解力のある守弥なんて守弥じゃない!(笑)

『ハンドルに腕を乗せた』高彬。
かっこいいですよね~。
平安ではありえないポーズを書けたから(現代編書いてて良かった~)と思ってしまいました(笑)

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます
プロフィール

瑞月

Author:瑞月
瑞月(みずき)です。

ランキングバナー

にほんブログ村

ランキングに参加しています。
楽しんでいただけましたら
クリックで応援をお願い致します。
1日1クリック有効です。
初めにお読みください
**当ブログの簡単な説明です**
当ブログは「なんて素敵にジャパネスク」の二次小説を掲載しております。 二次小説と言う言葉を知らない方や苦手な方は閲覧ご注意ください。 また読後のクレームはお受けできません。 「ごあいさつ<最初にお読みください>」も合わせてご一読下さい。
カテゴリ
別館
乳姉妹ブログ
日記ブログ
掲示板
なんて素敵にサイト様 
最新記事
ご訪問ありがとう(H23.11.28-)
**オンラインカウンター**
現在の閲覧者数:
コメントありがとうございます
お礼SSや「他己紹介」があります。
web拍手 by FC2
** あれこれ投票所 **
お好きなジャンルをお選びください。 投票は何度でも可能です。
*** あれこれ投票所2 ***
メールフォーム(ご用の方はこちらから)

名前:
メール:
件名:
本文:

カレンダー
10 | 2017/11 | 12
- - - 1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 - -
月別アーカイブ