***第十八話 三条邸にて<Part3>***

『なんて素敵にジャパネスク〜二次小説』




          注)このお話は連続ものです。
            カテゴリー「二次小説」よりお入りいただき
            第一話からお読みくださいませ。



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*** 第十八話 三条邸にて<Part3 ***




何なの、この人。本当に宮家の姫なのかしら・・・・。

「あのぉ・・・あなた、本当に煌姫・・・?」

つい聞いちゃった。

まぁ、自分で煌姫だって言ってんだから、そうなんだろうけどさ。

あたしもさんざん周りから姫らしくないと言われているけど、この姫も相当なもんだわよ。

「えぇ、あたくしはまぎれもなく水無瀬の煌姫ですわ」

ツンとすまして言う。

「父が亡くなってから見る見る財が尽き、あたくしの血筋と美貌にひかれて、言い寄ってくる受領もたくさんおりましたが、すべて断りました。そんな者の妻になるなど、考えるだにおぞましいことですものね。水無瀬の煌姫としてのプライドが許しませんわ。たとえどんなに生活が窮乏しようとも、あたくしは誇り高く生きてまいりましたのよ」

「はぁ・・・」

美貌にひかれて、だなんて、よく言えるもんだわよ。確かに美人ではあるけれどさぁ。

「ですけど・・・」

背筋を伸ばし、演説するかのごとくだった煌姫が、ふいに声を落とした。

「少し前からいよいよ明日のご飯にも事欠く有様になってきましたの。自分の顔が映るくらいの粥をすするようになってしまったのですわ」

「・・・・・」

顔が映るくらいの粥って、も、ものすごいリアルだわ・・・・。

「それでね、瑠璃姫。あたくし、このままではいけないと思いましたの。何か生活の再建を考えなければ・・・・と思っていた矢先に、少将さまの愛人になる話を女房から持ちかけられたのですわ」

あの若狭って女房ね。

「少将さまはとても責任感の強いお優しい方だから、一度、関係を持った女人を打ち捨てにするようなことはないだろう、と。あたくし、生活のため、そのお話をお受けしたのですわ」

「はぁ・・・」

「ところが、お歌の指導という名目で少将さまと何度もお会いして、若狭にわざと御簾を揺らさせて、あたくしの姿を垣間見ていただいているのに、少将さまはまったくあたくしに関心を持ってくださらないのですわ。これはどういうことでしょうかしら、瑠璃姫」

「どういうことでしょうかしら・・・って、あたしに聞かれても・・・」

「少将さまの美意識は少しばかりおかしいのではなくて?あたくしより、十人並みの容姿の瑠璃姫が良いなんて」

ちらりとあたしを見ながら、憎々しげに言う。

くっそー、言いたいこと言ってくれるじゃないの。

それまで、煌姫の勢いにすっかり押され気味だったけど、ここまで言われたからには、あたしも黙っちゃいられないわ。

「高彬はね、あなたを愛人になんかしないわよ。なぜなら、高彬は生涯、妻はあたし一人って誓ってくれているんですもん。高彬は本当に責任感が強くて優しい人ですからね。残念だったわね。高彬の美意識がおかしいかどうかは知らないけれど、少なくとも人を見る目だけはあるってことよね。だって、生活の安泰のために愛人の座を狙ってる人になびかなかったんですものね」

一気にまくしたててやると、煌姫は悔しそうに顔をゆがめた。

ふん、ざまぁみさらせ。この瑠璃をなめるなっていうのよ。

しょせん世間知らずの宮姫に、あたしが負けるわけないじゃない。

一人、密かに勝利の快感に浸っていると、煌姫がふと膝を進めてきた。

「ねぇ、瑠璃姫さま。ものは相談なのですけど・・・・」

少し恥ずかしそうに顔をうっすらと赤らめて、横目であたしをみる感じはなかなか艶な様子である。ほんと、かなりの美人よ、この人。

「なによ」

美人に近寄られて、なんとなくどぎまぎしながら返事をすると

「どなたか、あたくしを愛人にするような殿方をご存知なくて?あたくし、別に少将さまの愛人じゃなくてもよろしいのですわ。あたくしを愛人に斡旋していただけないかしら?」

「斡旋・・・」

あたしはポカンとした。何を言い出すんだ、この人。

「たとえば、瑠璃姫の弟君の融さまとか・・・」

「融?!」

「えぇ。融さまだって家柄もよく将来有望な殿方ですもの」

「融はだめよ」

あたしは即座に却下した。融のどこが将来有望なのかわからないけど、いくら愚弟だからって、こんな性悪女の餌食になっちゃ可哀相だもの。

「じゃあ、内大臣さまは・・・」

「父さま?!」

「えぇ。あたくし、年の差なんて気にしませんわ」

「い、いや、そういう問題じゃなくてさぁ・・・」

そりゃ、父さまには愛人が何人もいて、こんな美人で若い姫が愛人になりたがっているって聞いたら、諸手をあげて大喜びするかもしれないけど、父さまの愛人問題では母上は心を痛めているんだもの、さらにお悩みの種を増やすようなことはできないわよ。

しっかし、この人には節操ってもんがないのかしら。

高彬がだめなら融、融がだめなら父さま、なんて発想、さすがのあたしだって付いていけないわ。

「あんた、水無瀬の煌姫としてのプライドはどうなったのよ」

ムスッとして言ってやると

「プライドはプライド、生活は生活ですわ。プライドは取っておいても腐りませんものね。おほほ」

その言い方には後ろめたさなんて微塵もなくて、あたしはなんだかおかしくなってきてしまった。

片や落ちぶれているとはいえ宮家の姫、片や内大臣家の姫、その二人が二人とも女房の格好をして、こんな局の片隅で、やれ愛人がどうの生活がどうの、なんて話してるんだもの。

とんでもないシチュエイションだわ。

「あんた、誰かの愛人の座なんか狙わずに、他の方法で生活の再建を考えたほうが良いんじゃない?後宮勤めに出るとか・・・」

「んまぁ!瑠璃姫。あたくしを高級女房として後宮にあげるような何かそういうツテでもございますの?そうすれば、あたくしのこの美貌ですのも、いずれは名のある貴族の目に留まって・・・・・」

そういう煌姫の目はランランと輝いている。

「そんなツテ、持ってやしないわよ。ちょっと思っただけ」

さらりと言うと、煌姫は明らかに落胆したようにため息をついた。

何はともあれ、正直な人であることは確かね。

「・・・お歌の指導がなくなった今となっては、そういつまでも右大臣邸に身を寄せているわけにはいきませんし・・・」

ぽつんとつぶやく姿は本当に儚げで、美人って得だよなぁ・・・なんてつくづく思っちゃった。

性格的にはかなり問題がある姫だけど、こうしてため息ついてると、文句のつけようのない薄幸の美女って感じだもの。

「高彬のとこに居ずらいのなら、少しの間ならうちにいても・・・いいわよ」

気が付いたら、そんなことを言っていた。

あたしも人が良いわよぉ。

でも、こういう直球で本音を言う人って嫌いじゃないの。

まぁ、似たもの同士って感じかしらね。

あたしが恵まれた環境にいるのはたまたまなんだしさ、大変な思いをしてる人にちょっと手を貸すことって、間違ったことじゃないと思うし。

「本当ですの?瑠璃姫」

「えぇ・・・あたしとしても、高彬の前をうろちょろされたら心配だしさ」

「んまぁ!瑠璃姫ったら正直な方!そうですわよね、いつ少将さまがあたくしの美貌にコロッと靡かないともわかりませんしね。そんなことになって、こんなにお可愛らしい瑠璃姫が泣くようなことになったら、あたくしも辛いですもの」

シャアシャアと言う。

よっく言うわよ。さっき、あたしのことを十人並みの容姿って言ったくせにさ。

「でも、父さまや融はだめよ。それだけは約束して」

「わかっておりますわ。瑠璃姫が当分はあたくしのパトロンですものね。あたくし、生活の保障さえあれば、何も好き好んで、好きでもない殿方の愛人になどなりませんわ。だって、あたくしは誇り高い水無瀬の煌姫ですもの。ね、瑠璃姫」

今にもウインクが飛んできそうなくらい上機嫌に言ったかと思うと、つと両手を付き

「お世話になりますわ、瑠璃姫」

と礼儀正しく頭を下げた。

「あつかましいことながら、あたくしの乳母や女房も一緒に面倒みていただけませんかしら?日に日に零落していった我が宮家に最後まで忠義を尽くした大切なものたちなのですわ」

「もちろんよ」

あたしは快く請合った。

自分の身だけじゃなく、使用人の生活まで考えてあげるのはよいことよ。

ふーん。煌姫も、情けを知る人ではないの。

煌姫の思いがけない一面を見た気がして、あたしは改めて煌姫をまじまじと見てしまったのだった・・・。




                 <第十九話に続く>

〜あとがき〜

最初の話(管弦の宴がなかったら・・・の話)を書いたときは、すっかり一話完結のつもりでいたのですが、気が付いたら第十八話までダラダラと続く話になってしまっていました。

途中から、このブログをご覧になった方、一応、連続ものではありますが、陰謀とかそういう中身のある話ではないですので、適当にはしょって読んでいただいても全然かまわないと思います。

瑠璃と高彬がめでたく初夜を迎えたら、そこで区切りをつけようかな・・・と考えています。

もうしばらくお付き合いくださいませ。

読んでいただきありがとうございました。



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コメントの投稿

Secre

こんばんは

いつも楽しく見ています。
毎日の更新が楽しみです。

瑠璃が記憶喪失ですか。
とってもとっても素敵ですね。
今後の展開が楽しみです。
吉野の君や鷹男は出てくるのでしょうか。
そして高彬は・・・?
でもやっぱり最後は高彬が頑張ってくれますよね。
期待しています。

さてさて、コメント欄の質問。
参加させて下さい!
瑠璃やっ・・・瑠璃パパ
瑠璃さま・・・瑠璃ママ
姉さんっ・・・融
瑠璃姫 ・・・煌姫
姫さまっ・・・小萩
ではないかと。浮かれてついつい出しゃばりました。
すみません。

>柚月さま

こんにちは!
>吉野の君や鷹男は出てくるのでしょうか

一応、「お楽しみに・・」ということにしておいてください(笑)

>最後は高彬が頑張ってくれますよね。

もちろんですとも!
最後じゃなくたって、頑張ってもらいますよ~(笑)

コメント欄の質問のお答え。
ドンピシャリです!

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瑞月

Author:瑞月
瑞月(みずき)です。

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