拍手お礼SS<9>

*** 拍手お礼SSの寄せ集めです。投稿順に載せています ***


こちらのお話「春の朝に」は『らぶらぶ万歳サークル』さまの「春の競作大会」に投稿した「彩~aya~」のプロローグ的なお話です。

近々、「彩~aya~」を再アップしますので、その前にと思い載せておきます。

<瑠璃Ver.><高彬Ver.>と続き、三つ目の<小萩Ver.>は書き下ろしです。





***春の朝に<瑠璃Ver.> ***





「・・・さん。・・璃さん、瑠璃さん」

耳元で繰り返し名前を呼ばれ、薄っすらと目を開ける。

「もう行くから。これ、外すよ」

寝ぼけ眼で至近距離の高彬を見返すと、高彬は小さく頷きあたしの頭の下に敷いていた腕をそっと引き抜いた。

「・・・うん」

返事をし再びまどろみかけながら、心の中で小さく笑う。

───高彬ったら、言いつけを守っているのね・・・

いつだったかの朝方、ぼんやりと目を覚ました時に高彬の腕だと思ってさすったら、やけにゴツゴツとした手触りにギョッとしたことがあった。

それで慌てて飛び起きたら、あたしの頭の下にあったのは枕で、ほんの一瞬だけど、妖術か何かで高彬が枕になったのかと思っちゃったのよ。

でも、よくよく考えたらそんなことあるわけないし、要は朝早くに出仕した高彬があたしを起こさずに黙って出掛け、その時に自分の腕を抜いた代わりに枕を置いてくれたってことだったんだけど。

だけどねぇ、びっくりするわよ。

寝る時は高彬の腕だったのに、目が覚めたらそれがただの枕になっていたんだもの。

それで、びっくりした勢いもあって、その日の夜、帰ってきた高彬に「出掛ける時はあたしに一声かけること」「腕枕を抜くときはあたしの許可を取ること」を約束させたら、こうして高彬は律義に守ってくれていると言うわけなのよ。

ふふふ、心が和むなぁ・・・

几帳の向こうで支度を整える高彬の気配を感じながら、あたしはにんまりと衾にもぐりこんだ。

高彬はあたしの機嫌を損ねたくないから、こうして要望に応えてくれているわけで。

ワガママ聞いてもらえるのって、女冥利、妻冥利に尽きるって感じよねぇ・・・

これぞ、愛されている妻って感じかしら?

「じゃあ、瑠璃さん。行ってくるよ。今日は少し遅くなるから」

やがて準備を整えた高彬は、そう言い置いて出仕していった。

もう一眠りし、次に目が覚めたら、もうすっかり朝の光が部屋中に溢れていた。

「姫さま、いい加減にお起きになりませんと。まったく、少将さまは少し姫さまをお甘やかし過ぎますわ」

小萩に追い立てられるように起き出し、小袿を羽織るとそのまま陽光溢れる簀子縁に立つ。

一気に春めいてきたようで庭の花々はそこかしこで咲いており、知らずにウキウキしてくる。

「姫さま!そんな端近に・・・!」

驚く小萩を尻目に、あたしは今日の予定をすばやく立てていた。

今日の予定───

それは、ズバリ、庭のお散歩よ!

用意をするべく、あたしはいそいそと室内に戻ったのだった。








*** 春の朝に<高彬Ver.> ***





何かの物音が聞こえた気がして、ふと目を覚ます。

室内はまだ薄暗く、朝にはまだ時間があるようで再び目を閉じると、遠く鶏の鳴き声が聞こえてきた。

どうやらぼくが目を覚ましたのは、この一番鶏の鳴く声のせいだったらしい。

今朝は早くに参内しなくてはならないけれど、でも、さすがにこの時刻に起きるのは早すぎるだろう。

そっと身じろぎをして隣の瑠璃さんの顔を覗き込むと、規則正しい寝息が聞こえ、眠りはまだまだまだ深いようだった。

瑠璃さんはぼくの腕に頭を乗せており、いつの頃からか2人で眠るときの習慣になっている。

当たり前のようにぼくは腕を差しだすし、瑠璃さんもまた当然のように頭を乗せてくる。

最初の頃、瑠璃さんは「重いでしょ」とか「腕が痛くなるわよ」などと言い辞退していたが、ぼくが強引に続けていたらそのうち何も言わなくなった。

それどころか、ある時、黙って腕を外して参内した時には

「勝手に腕枕を外さないで。外す時は言って」

と怒られてしまった。

謝りつつも、内心では

(瑠璃さんを起こしちゃ悪いと思ったんだけどなぁ)

とぼやく気持ちもあったのだけど、だけど、よくよく考えて後からじわじわと嬉しくなったりもした。

夜明け前の薄暗い室内に、瑠璃さんの顔の白さが際立って見える。

無防備に薄く開けた唇はぼくには何とも官能的に見えて、指先でそっとなぞってみる。

柔らかく吸いつくような質感だった。

───唇ってこんなに柔らかいものだったろうか?

気になって自分の唇を指先で触れてみたものの、やはり瑠璃さんの唇のような柔らかさはなく、ぼくはふと、何だか瑠璃さんに申し訳ないような気もちになってしまった。

そうか、ぼくはいつもこの唇で瑠璃さんに接吻をしたり、色んなことをしているのか・・・

そうでなくても、時々、夢中になって手加減を忘れる時があるからなぁ。

昨夜だって、つい・・・

・・・と、そこまで考えて、慌てて気持ちを切り替えた。

あまりアレコレと具体的に思い出すのはマズい。

それに幾分、外が明るくなってきたようで、そろそろ参内の準備も始めた方が良さそうだ。

もう一度、瑠璃さんの顔を覗き込むと、やはり眠りは深そうで起こすのは忍びなかったけど仕方ないだろう。

「瑠璃さん。瑠璃さん」

何度も耳元で繰り返し名前を呼ぶと、瑠璃さんは薄っすらと目を開けた。

「もう行くから。これ、外すよ。いい?」

瑠璃さんが小さく頷くのを確認し、そっと腕を引き抜く。

「じゃあ、瑠璃さん。行ってくるよ。今日は少し遅くなるから」

寝ぼけ眼の瑠璃さんの額に小さく接吻をしてから起き上り、几帳を回り込んで支度を整える。

車寄せに向うと小萩が見送りのために立っており、ぼくの顔を見ると丁寧に頭を下げた。

「おはよう、小萩。早くに済まないね」

顔を上げた小萩は眩しそうに目を細め、確かに辺りは春の朝日に溢れていた。

空は今日の好天を約束するかのように澄み渡っているし、三条邸の庭も花が賑やかに咲いている。

気が付けば、そこかしこに春の気配が満ちているのだった。

ふと、ある考えが浮かぶ。

こんな日に、瑠璃さんを外に連れ出してあげられたら───

「小萩」

車に乗り込みながら、小萩に声を掛ける。

「もしかしたら、かなり早い時刻に戻ってくるかも知れない。先触れもなしにね」

「はぁ、先触れもなしに、ですか・・・」

「どうなるかまだ判らないから、瑠璃さんには言わないでおいてくれ」

「はぁ・・・」

首を捻る小萩に片手を上げ、そのまま簾を下ろさせる。

───楽しい一日になりそうだ。

喜ぶ瑠璃さんの顔が浮かんできて、ぼくは幸せな気持ちで牛車に揺られていたのだった。









***春の朝に<小萩Ver.>***





早くに出仕なさると言う少将さまをお見送りするため、今朝はいつもより早くに床をあげました。

身支度を整え、引き戸を開ければ、そこにはまるで絵に描いたような春の朝の風景が広がっております。

「絵に描いたような」などと言う陳腐な言葉しか出てこないのは何とも嘆かわしいばかりではありますが、こればかりはわたくしの教養のなさ故、嘆いたところで詮無いことでございましょう。

冬よりも格段に青さを増した空にはところどころに千切れたような雲が流れており、却って空の青さ具合を強調しているようでございます。

車寄せにはすでに右大臣家の従者がおり、牛飼童とともに牛車の用意をしております。

声を掛け、二言三言話しているうちに、渡殿の向こうから少将さまが現れました。

「おはよう、小萩。早くに済まないね」

小さく笑まれながらおっしゃり、わたくしは伏し目がちに頭を振りながらも、少将さまをチラチラと拝見してしまいました。

まったく、何と言う見事な貴公子ぶりなのでございましょう。

萌黄色の直衣に二藍の紫浮織りの指貫をすっきりとお召しになっており、おりからの朝日を受け、まさしく光り輝いていらっしゃるのです。

このようなお方が姫さまの婿さまだと思いますと、やはり晴れがましい心地が致すのでございます。

しばらくお庭の花に目を留めていらした少将さまはやがてお車に乗り込まれ、そうして、ふと思い出したようにわたくしを呼び寄せました。

「何でございましょう、少将さま」

「もしかしたら・・・、今日はかなり早い時刻に戻ってくるかも知れない」

「はぁ」

「どうなるかまだ判らないから、瑠璃さんには言わないでおいてくれ」

「はぁ。姫さまには内緒、でございますか・・・」

朝早くの出仕は多忙のためと伺っていたので、早くお帰りになられるかもとおっしゃる理由がわからず、何とも間の抜けた受け答えになってしまいました。

簾が下がる前に少将さまはもう一度、お顔をお上げになられると

「瑠璃さんはまだ眠りが足りないようだったから、もう少し寝かしてやっておくれよ」

と、わたくしに言い付けられるのでした。

少将さまが出発されてもうじき二刻にもなろうかという頃、ようやく姫さまにお目覚めの気配があり

「姫さま、いい加減にお起きになりませんと。まったく、少将さまは少し姫さまをお甘やかし過ぎますわ」

これ以上、寝ていたら昼になってしまうとばかりに、わたくしは几帳を回り込み姫さまにお声をお掛けしました。

姫さまの長い御髪はきちんと髪箱に収まっており、それは出掛けに少将さまがお直しして下さったのだと判りました。

普段の姫さまでしたら、朝には御髪が髪箱から出ておりますので・・・

ほんにまぁ、これほどまでにお優しい殿方が少将さまをおいて他にいらっしゃるでしょうか。

ひとつ大きく伸びをし起き出された姫さまは、そのまま几帳を回ったかと思うとスタスタと部屋を横切り、簀子縁にお立ちになっております。

「姫さま!そんな端近に・・・!」

思わずお声をお掛けしたものの、姫さまはわたくしの言葉など耳に入っていないのか、それどころか勾欄に身を乗り出し辺りを見回しています。

「姫さま!」

こうなっったら力づくでも・・・と一歩を踏みだしますと、くるりと姫さまが室内に戻ってらっしゃいました。

童女のようにキラキラと目を輝かせ、口元には笑みを湛え───

「・・・・・」

嫌な予感がふと胸をかすめます。

このようなお顔をなさる時、姫さまは大抵ろくでもないことを言いだされるのです。

「小萩、庭を散歩するわよ」

案の定、姫さまは恐ろしいことをさらりと言ってのけ、早や身支度を整えようとしております。

「そんなことをなさったら少将さまが何とおっしゃりますか・・・!」

「大丈夫よ。高彬、今日は遅くなるって言ってたから。小萩が言わなきゃばれないわよ」

姫さまはにんまりとおっしゃり、わたくしは

(もしかしたら少将さまは早くのご帰宅になるかも知れませんのに・・・)

と言う言葉をすんでのところで飲み込みました。

少将さまにばれて、少しは姫さまも痛い目に合われたらよろしいのですわ。

それに何よりも少将さまに口止めされておりますしね。

───小萩は何も聞いておりません。

わたくしの小さな悪だくみなど露知らず、上機嫌で身支度を整える姫さまなのでございました。




<終>



(←お礼画像&SS付きです)

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