社会人編<36>

助手席に乗り込み、シートに身体をうずめる。

カチリとシートベルトを締めるとすぐに車は走り出し、夕闇がせまる窓の外の景色も一緒に流れ出す───






─Up to you !─side R <第36話>






「・・・瑠璃ちゃん、どうする?俺の車に乗るか、こいつと行くか」

男2人に両側から見詰められ、あたしは心の中で(うーむ)と唸った。

ちらりと2人の顔を見ると、鷹男は薄っすらと挑発的な笑みを浮かべ高彬を見てるし、対して高彬と言えば、それに対抗するかのような怖い顔をして睨み返している。

この険悪な雰囲気、どっちを選んでもマズい気がするのよねぇ・・

あたしって案外、平和主義なのよ。

「えーとね・・・」

コホンと咳払いをしてあたしは口を開いた。

「この際だから・・・3人で帰るって言うのはどうかしら?」

「それはだめだ!」

2人揃って声を上げ、そうしてお互いに確認するように頷きあったりしていて、あたしは気取られないように小さくため息を漏らした。

何なのよ、この見事なまでのシンクロ。

先輩、後輩の垣根なんか越えて、本当は気の合う友人になれるんじゃないのかしら、この2人。

それはさておき、ともかくどっちかを選ばなければいけないとなると───

どっちとも話したいことはあるのよ、正直言って。

でも、優先順位からすると・・・・

目を瞑り心を落ち着けようと深呼吸を数回繰り返し、あたしはゆっくりと目を開けた。

鷹男に向き直り、ぺこんと頭を下げる。

「今上先輩、すみません。やっぱり送ってもらうのは結構です」

「それは、こいつと帰るということかな?」

親指で高彬を指しながら言うので頷くと、鷹男は一瞬、高彬を睨み、そうして何事かを考えるように腕組みをした。

「まぁ、瑠璃ちゃんがそう言うのなら仕方ない。今回は譲ってやろう」

穏便に話が進みそうでホッとしていると

「ただし、条件がある」

と人差し指を立てた。

「条件・・・」

「先約は俺だったのに、それを反故されたんだから、まぁ当然だろう」

「えぇ、まぁ・・」

曖昧に頷くと

「今度からは俺のことを『鷹男』と呼ぶこと。今上先輩はナシ、だ。当然、敬語もナシ。よそよそしいじゃないか」

「・・・・」

「それともうひとつ」

鷹男は横目で高彬に向ってニヤリと笑って見せてから、あたしに向き直ると

「この埋め合わせとして、一回は俺とデートすること」

高彬が何か言いたげに身じろぎするのを片手で制すると

「どう?」

とあたしの顔を覗き込んでくる。

鷹男と話たいこともあるわけだし、確かに一度は鷹男に送ってもらおうとしていたわけだから、申し出としてはそう無茶なことを言ってるわけでもない───

そう判断して頷くと、鷹男は満足そうな笑みを浮かべ、最後に高彬を一瞥すると、颯爽と車に乗り込んだ。

ブォォン・・・とエンジンの音を響かせながら車はあっと言う間に見えなくなる。

2人きりになったところで、あたしはクルリと身体の向きを変え、高彬に向き直った。

ひとつ深呼吸をする。

あれこれ考えて、勝手に腹を立てているのはあたしらしくないわ。

婚約者のこと、本人に聞くのが一番なのよ。

あたしの勘違いならそれで良し、もし本当に婚約者がいるのならその時は───

───その時は?

高彬に婚約者がいたら、あたしはどうしようと言うのかしら・・・

思考がもやもやと迷宮に迷い込みそうになりそうで、あたしは慌てて頭を振った。

まずは話よ、話をしなきゃ。

「高彬。いくつか聞きたいことがあるのよ。ちょっと話せる?」

高彬に聞いてみると

「ぼくも話したいことがあるんだ、瑠璃さんに」

思いがけずに力強い言葉が返って来た。

「じゃあ、駅前のカフェに行きましょうか。・・・って高彬、カバン持ってないじゃない。ひょっとしてまだ仕事中なの?」

「瑠璃さんを追って慌てて飛び出してきたから・・」

気まり悪そうにもごもごと言い

「瑠璃さん、カフェで待ってて。すぐに行くから」

数歩行ったところで振り返ると

「瑠璃さん、カフェで少し待てる?そうだな・・・40分くらい」

「いいけど。でも、仕事忙しいなら今日じゃなくてもいいわよ」

「いや、仕事じゃないんだ。いったん家に帰って車、回すよ。少しドライブしながら話そう。家まで送り届けるからさ」

「え、いいわよ、わざわざ。そこのカフェで話せれば」

「その方が都合がいいんだ。いい?」

「・・・・」

何とも謎めいた言葉を残し、高彬は踵を返しオフィスへと戻って行った。

いつものカフェのいつもの席に座りながら、あたしはぼんやりと通りを行き交う人を眺めた。

高彬に婚約者がいるとしたら、あたしは・・・。

そもそも、どうしてあたしはこんなにも腹が立ったのかしら。

これじゃあ、まるであたしが高彬を好きみたいじゃないの。

───高彬を好き?!

ドキリとしたところで、窓の向こうから軽くクラクションを鳴らす音が聞こえ、見ると車の中から高彬が片手を上げて合図をしている。

動揺を抑えるため、ぬるくなったカフェオレを飲み干してから席をたった。

内側から高彬がドアを開けてくれたので、そのまま助手席に乗り込むと、シートに身体をうずめる。

カチリとシートベルトを締めるとすぐに車は走り出し、夕闇がせまる窓の外の景色も一緒に流れ出す。

「どこか行きたいとこある?」

「特には」

「じゃあ、おまかせと言うことで」

高彬がアクセルを踏み込み、車はグンと加速した。






…To be continued…


(←お礼画像&SS付きです)

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Secre

非公開さま(Kさま)

Kさん、こんばんは。

高彬への誤解、早めに解いてあげたいものです。
鷹男とのデートは心配ですよねぇ。
これ以上、高彬の心労が増えないことを祈りつつ・・・(笑)
更新、楽しみにして下さってありがとうございます<m(__)m>

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ありちゃんさま

ありちゃんさん、おはようございます。

瑠璃がここで高彬を選んだのは、無意識にでも高彬の方を気にしているということですよね。
鷹男のことは後回し。

> 瑠璃のことだから、その辺は大丈夫かな。(^.^)

瑠璃のガードは堅くても、鷹男の手の早さが心配です。
いかにも早そうじゃないですか(笑)

> 高彬はどこに連れて行く気でしょうねぇ。乗馬と同じく、運転もうまいのかな。

もちろん運転もうまいはずです(^_-)-☆
でも、高彬のことだから車内はシンプルなんでしょうね。
芳香剤とかお守りとか、もちろんヌイグルミとかなさそう(笑)


非公開さま(Rさま)

Rさん、おはようござます。

ラテン男、転んでもただでは起きませんよねぇ。
そこら辺が高彬とは違うところ。
でも絶対、高彬に勝利の女神はほほ笑むのです!
Rさんも高彬を目一杯、応援してくださいね(^_-)-☆

非公開さま(Mさま)

Mさん、おはようございます。

そうですよ、狭い車内に2人きりです!
何か起こってほしいですよね~(笑)
「ケンカ別れ」は寂しいですね。ポイントは瑠璃でしょうかね、瑠璃の態度。
あまりに瑠璃がツンツンしてたら、高彬だってキレそうですからね。(案外、短気なとこあるし)
高彬に告白されたこと、瑠璃のことだから忘れてるって可能性もありそうですよね。
昨日の今日で、忘れ過ぎって気もしますが(笑)

↑この内容でバレてると思いますが、次回どんな風になるのか未定なんです。
書き始めてみて、あとは瑠璃と高彬にお任せです。
カッコいい高彬が書けますように!

とりあえす、良かったぁ。

瑞月さん こんばんは。
瑠璃が高彬を選んでくれて良かったです。(この段階で「選んだ」は語弊があるかしら。(・・;))
お話の冒頭の文に、鷹男の車に乗っちゃったかと焦りました。
鷹男にデートの約束を取り付けられちゃったのは気になりますが…
瑠璃のことだから、その辺は大丈夫かな。(^.^)
高彬はどこに連れて行く気でしょうねぇ。乗馬と同じく、運転もうまいのかな。
なんか、色々妄想できて楽しいです。(^.^)

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