***第十七話 三条邸にて<Part2>***

『なんて素敵にジャパネスク〜二次小説』




          注)このお話は連続ものです。
            カテゴリー「二次小説」よりお入りいただき
            第一話からお読みくださいませ。



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*** 第十七話 三条邸にて<Part2> ***




高彬は、半刻(一時間)ほどして帰っていった。

宮中行事での出来事や、同僚が最近、結婚したことなどの話しをしてくれたんだけど、高彬は話術がたくみなタイプではないから、おもしろおかしく話すって感じではないんだけど、でも、そんな高彬があたしのために色々話してくれるのが嬉しくて、そんな風に思っちゃうのも惚れた弱みってやつなのかしら・・・。

おやつを持ってこさせるために、小萩を呼ぼうかと思っていると、高彬はやんわりと手をあげて

「これからまた参内しないといけないんだ。悪いけど、今日はこれで失礼するよ、瑠璃さん」

ゆったりと立ち上がった。

「また仕事なの」

「うん。ぼくは近衛の少将になって間がない若輩者だし、覚えなきゃいけないことがたくさんあるんだ。皆さんに迷惑をかけるわけにはいかないからね」

そういって歩き出したかと思ったら、ふと振り返り、はらりと扇を開くと

「それにしても、今日は誰も来なかったね。こんなことなら瑠璃さんに嫌がられても押し倒しておけばよかったかな」

おどけたように片目をつむって見せたので、あたしは笑わずにはいられなかった。

高彬の姿が見えなくなるまで見送り、楽しい時間の余韻にひたっていると、少しして小萩が現れたので、おやつをお願いした。

泣いたり笑ったりどきどきしたら、お腹がすいちゃったみたい。

「はいはい。今、お持ちしますわ。高彬さまがいらっしゃったら、すっかりお元気になられて。姫さまったら」

小萩は袖で口元を押さえて笑いながら部屋を出て行った。

や、やぁねぇ。そんなんじゃないわよ。

と言いつつ、確かにさっきと今では気分が全然違う。

さっきまで見ていた二月の庭は、花も何もなく寂しげに見えていたのに、今では輝いて見えるんだもの。

なんか、あたしもゲンキンだよなー。

でも、これが恋ってものなのよ、きっと。

おやつが来るのを機嫌よく待っていたんだけど、それにしても小萩が来るのが遅い。

おかしいな。おやつ持ってくるくらいなら、そうたいして時間がかかるはずないんだけどな。

自分で取りに行こうかと腰を浮かしかけると、衣擦れの音がして女房が現れた。

手にはおやつをのせた高坏をかかげている。

最近、新しく入った子で、確か早苗と言ったっけ。

一、二度顔を見た覚えがある。

「小萩はどしたの?」

「はぁ・・局にいますけど」

それだけ言って黙ってしまう。

あたしの前におずおずと高坏をおくと、そのまま一礼をして下がってしまった。

あたしも人のこととやかく言えないけど、最近の子って気働きがないと言うか、風情がないと言うか、ほんと呆れてしまう。

局にいますけど、だけじゃ何もわからないじゃない。

おやつを食べ終えたところで、ふと思い立って局に行ってみることにした。

最近、局に遊びに行ってないし、たまにはいいんじゃないかしら。

小萩がどうしたのかも気になるし、他の女房から面白い話でも聞けるかも知れないし。

普通の姫はそんなことはしない。自分の部屋を出るなんて事、滅多にはない。

けど、あたしは自慢じゃないけど普通じゃないからね。

前に高彬に当てずっぽうを言われたけど、庭だって平気で下りちゃうんだから。

それどころか父さまの目をかすめて何度もお忍びだってしている。

そんなあたしだもの、邸の中を歩き回るくらいお茶の子なのだ。

いくつもの渡殿を抜け、北面にある女房たちの局に近づくと、ちょうど向こうから小萩がやってくるところだった。

「まぁ、姫さま!」

さすがにびっくりしたようだったけど、小萩も長くあたし付きの女房やってるから、肝が据わっているっていうのかしら。

「何かご用でしたか?」

なんて普通に聞いてきた。

「ううん、別に。ちょっとね。おまえがなかなか帰ってこないから、どうしたのかと思ったのよ」

「そうでしたか。それは申し訳ないことをしましたわ」

「何かあったの?」

「いえいえ。何もありませんのよ。ただ、新しい女房がおとといから入ったので、その者にいろいろと教えていたのですわ」

「ふうん」

小萩も女童の頃からこの三条邸に仕えてるし、古株といえば古株なんだよね。

先輩として新参者の女房の面倒もみてやってるっていうのも頷けるわ。

早苗のことも何かと目にかけてやってるみたいだし、小萩も面倒見がいい、良い先輩だわよ。

「小萩もよくやってくれているわね・・・」

労えるときには労いたいから、小萩に言葉を掛けかけたとき、遠くの方を女房が一人通った。

その横顔に見覚えがある気がして考えていると

「どうかされまして?姫さま」

小萩が不思議そうに言ってきた。

「今、そこを通った者、どこかで見た気がするんだけど・・・」

「あの者でしたら、おとといから入った女房ですわ。たいそうお綺麗な方ですけど、女房仕えをするような身分の者に、姫さまの知っている方がいるとは思えませんわ。姫さまの思い違いではございませんこと?」

お綺麗な方・・・。

その瞬間、思い出した。

今の人、煌姫とかいう人よ。例の高彬にお歌を教えていたっていう。

でも、その実、本当の目的は高彬の愛人の座を狙ってたっていう要注意人物じゃない。

なんで、そんな人がうちに女房勤めなんかしてんのよ。

高彬の恋人であるあたしの身辺調査でもするために三条邸に乗り込んできたのかしら?

まさかと思うけど、それくらいしか思いつかない。

でも、普通の姫はそんなことしないわよね。

まして、零落しているとはいえ、一応、宮家なんだしさぁ。

でも、煌姫が御簾越しに高彬と対面していたときの、獲物を狙うハンターみたいな目を思い出すと、あの姫ならこれくらいのことしそうな気もする。

あたしって勘は良いほうなのよ。

「小萩、ちょっと袿貸して」

驚く小萩からを袿を奪い、すばやく羽織った。

とにかくまずは煌姫の目的を知らなきゃ。

あたしも女房の振りをして煌姫と話してみよう。

もしも、あたしを探りに来たって言うんなら、こっちからお教えするのが親切ってもんよね。

「姫さまぁ・・また女房の振りですか・・・」

ずんずん歩きだすと、後ろからため息まじりの小萩の声が聞こえた。



             ***********************************************



さっき煌姫が消えていったほうに向かうと、そこは局の一番はじっこの部屋だった。

そっと中の様子を窺うと、人の気配がする。

どうやら煌姫一人みたい。良かった。さすがに他の女房は、あたしの顔を知ってるものも多いからね。

あたしは裾さばきも鮮やかに、すまして部屋に入っていった。

人の気配を感じで振り返ったその顔は、まぎれもなく煌姫だった。

あら、という感じで眉をあげ、値踏みするようにじっとあたしを見た。

あたしはにっこりと笑って

「新しい方なんですってね。あたしは九条よ。瑠璃姫さま付きなの」

煌姫の隣に座った。

しばらく返事がないので、どうしたのだろうと思っていると、ふいに煌姫が笑い出した。

「・・・・お芝居はよろしくってよ。瑠璃姫さま」

ぎょっとして煌姫を見ると、煌姫はにっこりと笑った。

もともとが美人なんだけど、笑うと妙にひとなつっこい感じがでてきて、それがなんともあでやかで、いやもう、ほんとうに高彬が煌姫に靡かなかったのが不思議なくらいよ。

でも、どうして、あたしが瑠璃だって知ってるわけ?

あたしがびっくりしているのも楽しむかのように煌姫は

「瑠璃姫さまも、あたくしを煌姫と知っていらっしゃるのでしょう?右大臣邸に女房として潜り込んでらしたんですってね。守弥から聞き及んでおりますわ。さすが物の怪憑きと評判の姫さまは違いますわ。あたくしね、ピンときましたの。おそらくあたくしと少将さまのお仲を疑って探りにきたのだろうって。だから、今度はあたくしが瑠璃姫を探りにきたのですわ」」

まるで歌を詠ずるように軽やかなよく通る声で話した。

「あたしを探りに・・・。でも、どうしてあたしを瑠璃だと知っているのよ・・・」

なんとか声を絞り出すと

「おほほ。瑠璃姫さまは普通の姫君と違ってお庭に下りられたり、端近に立たれたりしますでしょ。あたくし、おとといから時間がありましたら、盗み見しておりましたの」

「盗み見・・・・」

「えぇ。あたくしはね、目的達成のためなら、手段を選ばない方なのですわ。果報は寝て待て、なんて言葉、大っ嫌いですの。果報は自分の手で掴み取るものですもの」

「掴み取る・・・」

盗み見だの掴み取るだの、およそ宮家の姫とは思えない言葉が威勢よくポンポン口から飛び出すので、さすがのあたしも思考が停止してしまった。

何なの、この人。本当に宮家の姫なのかしら・・・・・・。




                   <第十八話へ続く>




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