社会人編<35>

終業のチャイムと共にあたしは勢いよく立ちあがった。

「お先に」

誰にともなくそう言うと、回りから「お疲れ様~」「お疲れ、瑠璃ちゃん」「また明日」と言う声が上がり、適当に言葉を返す。

何かを言いたげな高彬の視線を横目に感じたけれど、あたしはそのまま席を後にした。






─Up to you !─side R <第35話>






───まったく!

下りのエレベーターの中で、誰も乗っていないことをいいことに舌打ちをする。

本当にサイテーな奴だわ。

フィアンセがいながら、あたしに「付き合おう」だなんて言っちゃってさ。

しかも美人と合コンって何?!

あの見た目に騙されて、高彬を爽やかで誠実そうな人だと思ったあたしが馬鹿だった。

やっぱりNY支店で感じた通り、ただのチャラい男だったんだ。

ったく、紛らわしい見た目なんかするんじゃないって言うのよ。

チャラいならチャラいで、いっそ今上鷹男みたいに判りやすいチャラさの人の方がまだマシかも知れない。

飲み過ぎて気持ち悪くなった時に頼ったり、京都でバッタリ会った時にランチを誘ったり、恋人の振りを頼んだりしたことが今となっては悔やまれるわ。

やっぱり男なんて、みーんなあんなものなのよ。

オフィスビルを出て角を曲がると、最近オープンしたばかりのドーナツ屋があり、あたしは迷うことなく飛び込んだ。

この怒りを収めるには、ヤケ食いしかないわ。食べて食べて食べまくってやる。

あれこれ迷いながら計20個のドーナツを買って店を出る頃には少しだけ気が晴れてきていた。

甘い匂いって人を幸せにするものなのね。

帰ったら紅茶でも入れて1人ドーナツパーティーよ。

駅までの道を急ぎ足で歩いていると、クラクションと共に

「瑠璃ちゃん!」

と言う声が聞こえてきた。

もしや、と思い振り返ると、案の定、チャラ男、もとい今上鷹男だった。

この間、京都で見た赤い車ではなかったけれど、それでも目立つ感じのスポーツカーで、運転席の窓に肘を乗せあたしを見ている。

「このまま帰るのか?」

あまりにも自然に聞いてくるので、思わず頷いてしまった。

「家まで送っていくよ。乗って」

突っ立っているあたしに手招きをしながら言い、あたしが動かないでいると

「別に取って食べたりしないから」

と笑い、それがドーナツの事を言っているのだと気が付いてあたしは少し赤くなってしまった。

「一度、瑠璃ちゃんとゆっくり話したいと思っていたんだ。ほら、俺たち、なかなかに因縁のある関係だろう?」

意味ありげに言われ、あたしは(うーむ)と考え込んだ。

今上鷹男と結婚する気なんかさらさらないけど、だけど、一度、本人ときっちりと話を付けておくのも悪くないかも知れない。

そうすれば、高彬に恋人の振りをしてもらう必要もなくなるんだし。

どうせ家に帰ってもドーナツ食べるだけで予定もないんだし・・・

「さぁ乗って。瑠璃ちゃん」

運転席を下りた鷹男は助手席のドアを開けながらにっこりと言い、あたしは意を決して車に近づいた。

今まさに助手席に乗り込もうと身を屈めたその時

「瑠璃さん!」

と言う声が聞こえ、ものすごい速さで高彬が走ってきた。

「何してるんだよ、瑠璃さん」

呆気に取られているあたしに向い高彬はムッとしたように言い、その言い方にさっき収まったはずの怒りがまたしてもこみあげてきてしまう。

何してるって、何よ。それはこっちのセリフだわよ。

「何って、瑠璃ちゃんを送って行くことで話が付いたんだが」

あたしの代わりに鷹男が高彬に向って言い、そうして

「さ、瑠璃ちゃん、乗って」

とあたしを促した。

「ちょっと待てよ」

高彬はあたしの腕を掴むと、強引に車から遠ざけた。

「おいおい、無粋なことしてくれるなよ、高彬」

「今上先輩に瑠璃さんを託すことは出来ません」

「他ならぬ瑠璃ちゃん自身が、そうしたいと言ってるんだ。おまえは引っ込んでろ」

「引っ込みません」

「さっそく彼氏面か。束縛するやつは嫌われるぞ」

「今上先輩に言われる筋合いはないですよ。瑠璃さん、さぁ、行こう」

「・・・瑠璃ちゃん、どうする?俺の車に乗るか、こいつと行くか」

あたしはまったく蚊帳の外と言う感じの会話が続いた後、ようやくと言う感じであたしに話が振られてきた。

鷹男と2人で話して、あの話にケリを付けたいと言う気もするしなぁ。

だけど───

こうして改めて高彬を見ると、婚約者がいながらにして女遊びを繰り返すような人にはどうしても見えないのよ。

そっちを先に確かめたいと言う気もするし・・・

鷹男の車に乗るか、高彬と行くか・・・・。

男2人に見詰められ、あたしは心の中で再度(うーむ)と唸った。






…To be continued…


(←お礼画像&SS付きです)

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Secre

非公開さま(Sさま)

Sさん、初めまして。

瑠璃ははたしてどっちを取るのでしょうか?!
次回で明らかになります(*^_^*)
コメントありがとうございます。

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非公開さま(Kさま)

Kさん、おはようございます。

瑠璃、自分の怒りの大元が高彬への恋心だと気付いていないんですよね。
ドーナツ20個食べたって解消されるとは思えません(笑)

鷹男の「取って食べたり・・」はもちろん、ドーナツのことじゃないはず。
でも、それに気付かない瑠璃。
危ないですよねぇ・・。
高彬じゃなくても「ちょっと待て」と言いたくなります。

非公開さま(Mさま)

Mさん、おはようございます。

懐かしの河合奈保子ですね!(笑)
今回の高彬、強引でかっこよいでしょう??
このまま一気に瑠璃を押し倒しますよ。(嘘です)
「取って食いやしない」
平成のチャラ男が、ドーナツのことを言う訳ないですよねぇ(笑)


非公開さま(Nさま)

Nさん、おはようございます。

今回の高彬は強気です。
だって瑠璃への恋心を自覚してるんですものね!
鷹男と2人きりにさせるなんて、お腹のすいたライオンにウサギを差し出すようなもの・・・
と、高彬は思ってるんだと思います(^_-)-☆
ドーナツ20個!(笑)

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