社会人編<31>

「あのさ、瑠璃さん」

ぼくの言葉に、窓の外を見ていた瑠璃さんがゆっくりと振り返り

「あの・・・」

口を開いた瞬間、瑠璃さんの表情がパッと変わり、同時に視線がぼくの後方に向う。

なんだろう、と思う間もなく

「・・・すみません!お弁当下さい!」

回って来たワゴンサービスのパーサーに向い、片手を上げて瑠璃さんは言った。






─Up to you !─<第31話>






「高彬は?お弁当いる?」

「あ、う・・・うん」

勢いに押されて頷き、慌てて弁当を受け取る。

瑠璃さんはと言うと、出したテーブルの上で早や弁当を広げており「いただきます」と両手を合わせている。

パチンと割り箸を割る音がして

「食べないの?」

ぼんやりと見ているぼくの視線に気付いたのか、怪訝そうに聞いてきた。

「い、いや。食べるよ・・・」

瑠璃さんに倣って弁当を広げたぼくは、気付かれないように小さく息を整えた。

完全に出鼻を挫かれた感は拭えないけど、考えようによっては食事をしながらと言うのはいい状況かもしれない。

言う方のぼくも、聞く方の瑠璃さんもリラックス出来るような気がする。

突然のワゴンサービスの登場に戸惑ったけれど、案外、ぼくにとっては追い風だったのかも知れないよな・・・

まぁ、とにかく、マイナス思考よりポジティブシンキングだ。

ぼくは再度、息を整え箸を置くと

「瑠璃さん。ちょっと聞いてほしいことがあるんだ」

「なに?」

「あのさ、実は・・・、瑠璃さんのこと・・」

「あ、ごめん、話しの腰折って。ねぇ、唐揚げと玉子焼き、取り替えてもらってもいい?」

「・・・・・」

「だめ?」

「いいけど。・・・いや、その前に、ぼくの話、聞いてもらってもいいかな?」

東京に着くまでと言う有限の時間、このままじゃいつまでたっても話が進まないと思い、少々強引に話を戻すと、瑠璃さんは伸ばしかけていた箸を引っ込め

「・・・いいわよ」

まだ唐揚げに未練のありそうな素振りだったけれども、それでも聞く体勢を整えてくれた。

「あのさ」

「うん」

「まだ知りあって短いけど・・・、瑠璃さんのこと、好き・・・なんだと思う」

「・・・・・」

「一緒にいて楽しいし、出来ればもっと一緒に過ごしたいって言うか」

「・・・・・」

「恋人の振りしてくれって頼まれたけど、その・・・振り、なんかじゃなくて、本当に付き合ってもらえないかな・・」

一息に言い、息を吐くと、隣で息を飲む気配があった。

顔を向け目が合うと、瑠璃さんは目を見開いており、そうしてその顔が見る見る赤くなっていった。

「・・・信じられない!」

そう言うと、もっと何かを言いたいのだけど、言葉が出てこないと言った感じで、口をパクパクとさせている。

そんな瑠璃さんの様子を見ながら、ぼくは密かに首をひねった。

<信じられない>と言う言葉だけ聞くと、こういう場面で聞いてもおかしくない言葉かな、と思えるけれど、だけど、例えば

『信じられない!そんなこと言ってもらえるなんて夢のようだわ』

と言うようなニュアンスは、瑠璃さんからはまるで感じられないのだ。

むしろどちらかと言うと、唖然と言うのか、嫌悪と言うのか・・・・

それが証拠に瑠璃さんは眉間に皺を寄せると

「それ、本気で言ってるの?」

と凄んだ声で聞いてきた。

「ほ、本気だけど・・・」

「本当に?」

「ほ、本当だよ・・・」

ぼくはこくりと頷いた。

この<本当に?>も、もちろん

『本当に?その言葉、信じていいのね?』

なんて可愛い言い方ではなくて、例えて言うなら、強面の刑事がシラを切る強盗犯に向い「本当なのか?」と詰問する口調と言うか、はたまた女教師が素行不良の男子学生を相手に、嵐の前の静けさ一歩手前で問いかける口調と言うのか、そんな感じなのである。

それきり瑠璃さんは黙り込み、長い沈黙のあと大きくため息をついたかと思うと

「ねぇ、高彬・・」

低い声で、切り出したのだった。






…To be continued…


瑞月です。

いつもご訪問ありがとうございます。

2011年3月11日から5年がたちました。

あの日の出来事はずっと忘れていません。

ここ数日、テレビではどこの番組でも震災のことを取り上げていますが、テレビ報道がない日だって、この5年間、被災地では色々なご苦労や心労があり続けているのだと思います。

突然に奪われたたくさんの命には、ただただ手を合わせることしか出来ませんが、被災地が少しでも復興することを心から応援しています。


(←お礼画像&SS付きです)

コメントの投稿

Secre

非公開さま(Sさま)

Sさん、こんにちは。

瑠璃の気持ちにしてみたら、そんな感じですよね。
婚約者いるのに何よーって。
あそこで守弥さえいなければ、このまま一気に<***fin***>だったのに(笑)
社会人編、楽しみにいただいているというお言葉、すごく嬉しいです!励みになります。

阪神大震災も大きな震災でした。
あの震災で随分と震災への意識が変わりました。
Sさんのおっしゃる通り、復興は物理的なことだけではないんですよね。
「心のケア」なんて簡単な言葉では済まないくらいに、震災にあわれた方の悲しみは深いのだと思います。

非公開さま(Mさま)

Mさん、こんにちは。

Mさんのイヤな予感は多分あたっていると思います
このままハッピーエンンドでいくほど、現代も平安も、世の中そう甘くはないのです(笑)
そうして、そういう展開をきっとMさんもお望みであろうと言う私の推測は、大きく外れてはいないのではないでしょうか?(*^。^*)
チームFの応援を受けて高彬はきっと頑張ってくれるはずです。

震災の時、私はたまたま保護者会で学校にいたのですが、その場では大きな地震だったな、としか思っておらず、家に帰ってニュースを見て本当に驚きました。
今でも、あの映像が見ると苦しい気持ちになります。
忘れてはいけないのは(被災地以外に住む)私たちで、被災された方は少しでも記憶が薄らいで行けたらいいのかも知れないな、と思いました。
Mさんがご無事で何よりでした。

非公開さま(Rさま)

Rさん、こんにちは。

高彬の告白、どうなることやら・・・です。
高彬も瑠璃の醸し出す不穏な空気にもう少し敏感だったら良かったのに。
こういうところが堅物と言うのか、女心に疎いと言うのか。

ライオンか猿!(笑)
大笑いしました。
孔雀とか、錦鯉とかはどうですかね?(笑)派手そうなイメージで。

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