社会人編<30>

瑠璃さんからはまだぼくの姿が見えていないようで、待ち合わせ場所を探すかのように、歩きながら辺りを見回しているようだった。

隣の男に何事かを話しかけられたのか頷いているのが見える。

やがてぼくに気が付いた瑠璃さんは、(あっ)と言う感じで目を開き、そのままずんずんと近づいてきた。

「お待たせ」

「いや、ぼくも今来たところだから」

「そう、良かった。・・・荷物、ありがと。さ、行きましょ」

当然のように男から荷物を受け取り、素っ気なくそのまま歩き出そうとする瑠璃さんの様子に、思わず男と目が合って───






─Up to you !─<第30話>






テレパシーと言うのか以心伝心と言うのか、男と目が合った瞬間、ぼくは男の考えてることが手に取るように判った気がした。

それは男も同じだったようで、ぼくと目が合うとおどけたように目を開いて見せ、その目元がどことはなしに瑠璃さんに似ている。

「姉さん」

歩き出した瑠璃さんにそう呼びかけたところを見ると、やっぱり瑠璃さんの弟で間違いないようだった。

「なに?」

「あのさ。こう、もう少し別れを惜しむって言うか、その・・・・生まれ故郷を後にする感傷とか・・・そういうのって姉さんにはないの?」

「感傷?」

そう言うと瑠璃さんは吹き出し

「ないわよ、そんなの。姉さんはね、おまえと違って忙しいの」

「いや、忙しいとかそういう問題じゃなくてさ。あ、それよりも・・・・」

瑠璃さんの弟は、ぼくのことをちらちらと窺い、その様子に、瑠璃さんは今初めて気が付いたとでも言うように

「そういや、2人は初対面だったわね。こっちが同じ会社の高彬、こっちは弟の融。名字は一緒で藤原。以上、紹介終わり」

「それだけ?!」

奇しくも声が重なり、またしても瑠璃さんの弟───融と目が合ってしまう。

いや、簡潔と言えば簡潔だけど、もう少し言い様が・・・・

果たしてぼくの心の声が聞こえたのか

「そういえば二人とも同い年よ」

と付け加えた。

「さ、行きましょ」

もう用は済んだとばかりに瑠璃さんは歩き出し、ぼくはと言えば、このまま立ち去っていいのか迷ってしまった。

せっかく瑠璃さんの弟と対面できたのだから、もう少し親交を深めたいし、何となく気の合う友だちになれそうな予感がある。

どうしたものか・・・と思っていたら

「これ・・・ぼくの連絡先なんだ。・・・・姉さんのことで何かあったら」

ポケットから名刺を出し、その場でサラサラと携帯アドレスを書いて渡してくれた。

走り書きだったことを差し引いてもお世辞にも上手いとは言えない字だったけど、ぼくは何だか嬉しくなってしまった。

「ありがとう、融くん。東京着いたら一度、メールするよ」

「融でいいよ」

「・・うん。じゃあ、ぼくのことも高彬で」

「うん」

にっこりと笑い合い、どちらからともなく握手を交わす。

「・・・早くー!新幹線出ちゃうわよー!」

数メートル先から振りかえった瑠璃さんに言われ、2人同時に顔を上げた。

「遅れて来た方が言うセリフじゃないよね」

「うん。・・・じゃあ」

ぼくは笑って歩きだし

「姉さんをよろしく!」

片手を上げて融に応えると、急いで瑠璃さんに並ぶと改札を目指す。

荷物を持ってあげるタイミングが掴めなくて、結局そのまま新幹線に乗ってしまった。

動き出した新幹線の中でぼんやりと窓からの景色を見ていた瑠璃さんがふいに大きなため息をつき、やっぱり少しは感傷的になっているのかな、と思っていたら

「・・・駅でお弁当買ってくるの忘れちゃった」

と呟いたので、思わず吹き出してしまう。

「ワゴンサービスが来るからそれで買えばいいよ」

「そうね」

外を見たまま瑠璃さんが言い、そういえば、今日は瑠璃さんときちんと目が合っていないことに今更ながら気が付いた。

待ち合わせ場所で合った時から、今まで目が合っていないような・・・、いや、気のせいだろうか。

結局、それは気のせいではなかったのだけど、その時のぼくはこれから告白しようと言う気負いのため気持ちが上ずってしまい、瑠璃さんの微妙な変化に気が付かなかったのだった。

新幹線「のぞみ」は一路、東京を目指し、約2時間で着いてしまうことを思えば、あまりのんびりとしているわけには行かず、ぼくは息を整えると

「あのさ、瑠璃さん」

窓枠に肘を付き、ぼんやりと外を眺める瑠璃さんに声を掛けた。






…To be continued…


(←お礼画像&SS付きです)

コメントの投稿

Secre

非公開さま(Sさま)

Sさん、こんにちは。

現代編や社会人編もお楽しみいただけているようで私も嬉しいです。
更新も楽しみにしていただきありがとうございます。
守弥に融に小萩、現代編では出てこなかった彼らにも登場してもらい、にぎやかになりそうな社会人編です。
またぜひお立ち寄りくださいね(*^_^*)

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非公開さま(Rさま)

Rさん、こんにちは。

はい、荷物持つためだけに駅まで付き合わされた融です。
寝てたところを叩き起こされたのかも知れません(笑)
融のメアドのサラサラ~は、きっとものすごく簡単なメアドだったんですよ。
toru@...だけとか。だから賢いわけじゃないと思います。
実は、私のメアドもこんな感じなんですけどね(笑)

非公開さま(Mさま)

Mさん、こんにちは。

高彬、瑠璃と上手く行く前に、融と上手く行きそうですよね(笑)
初対面のお互いの印象もいいみたいですし。
はてさて、高彬はこのまま告白してしまうのでしょうかーーー?!

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