<原作オマージュ>1~原作一巻より

『なんて素敵にジャパネスク〜二次小説』




注)このお話は一話完結です。
原作のあるシーンを高彬目線で書いていますのでネタバレとなっています。
原作未読の方はご注意ください。
          
          




***<原作オマージュ>1~原作一巻より ***








冬だ。

人生の冬だよ、まったく。

女房を下がらせた部屋で、ぼくは行儀悪くごろんと横になった。

父上、母上から兵部卿宮の二の姫との縁談を勧められたのが二週間ほど前。

きっぱりと断ったのは良いけれど、それ以来、邸の中の雰囲気が重たくてかなわない。

母上はこれ見よがしに不機嫌を露わにして、ヒステリックに女房を叱りつける声が、母屋からぼくの部屋にまで届いてくる始末である。

更には今日、宮廷で───

ついさっきの出来事を思い出して、ぼくは深いため息をついた。

話は二刻前に遡る。




**********************




「衛門佐どの!」

靫負庁を出て歩き出したところで、後ろから声を掛けられ振り返ると、大納言さまが立っていた。

慌てて姿勢を正し、出来るだけ礼儀正しく聞こえるよう

「はい、大納言さま。何でございましょうか」

と返事をする。

大納言さまはぼくにとっては雲の上のような官位をお持ちだし、何より、ぼくの想い人である瑠璃さんのお父上なのだ。

なるべく印象を良くしたいと思うのはむべなるかな、だろう。

「いやいや、そう固くなられるな、高彬どの」

ぼくの緊張を感じ取ったのか、大納言さまはぐっと砕けたような口調で言い

「実はな、折り入って高彬どのにお願いがあるのじゃよ」

心持ち、ぼくの方に身体を近づけ、耳を寄せてきた。

───来た!

ドキっと鼓動が跳ね上がる。

大納言さまが躍起になって瑠璃さんの婿探しをしていることは、宮中でつとに有名な話である。

もしや、大納言さまがとうとうぼくに目を付けて下さって・・・・

逸る気持ちを押さえて、ぼくは更に礼儀正しく返事をした。

「はい。何なりとお申し付けください。大納言さまのお言い付けでしたらどんなことでも致します」

「そうか、そうか」

大納言さまは満足そうに頷かれ

「そう言ってもらえると頼みやすい」

「はい」

「実はな」

「はい」

実は瑠璃を───

「琵琶の演奏をお願いしたいのじゃよ」

「はい。ぜひ、・・・・え?」

予想とは違う大納言さまの言葉にぼくは目を剥いてしまった。

琵琶・・・?

「二十日後に管弦の宴を開くのだが、若い者たちの合奏を考えておるのだ。そこで、琵琶の名手である高彬どのにもぜひお願いしたいと思ってな。融も心強いだろうしのぅ」

「はぁ・・」

「何だ、都合が悪いのかね」

「あ、いえ。そんなことはありません。喜んで伺わせていただきます」

「うむ」

満足そうに頷かれる大納言さまを見送り、ぼくはがっくりと肩を落とした。

なんだ、琵琶の演奏か・・・

そうだよな、大納言さまクラスの姫の婿ともなれば、ぼくくらいの官位じゃお声が掛かるわけないよな。

肝心の瑠璃さんが、ぼくとの結婚の約束を忘れてるんだから尚更だ。

なまじ一瞬でも大納言さまの言葉を期待してしまっただけにその落胆は大きく、ちょうど仕事の切りも付いていたところだったので、こうして自邸に戻ってきたわけなのだけど・・・・

はぁ・・・

ぼくはため息をついた。

昔は楽しかったな。

瑠璃さんと毎日のように遊べて、当然のように、瑠璃さんはぼくと結婚するものだと思ってて。

怒りっぽい瑠璃さんに振り回されることも多かったけど、それでも手の届くところに確かに瑠璃さんがいた。

思えば、あれがぼくの人生のハイライト、ゴールデンアワーだったのだろうか。

瑠璃さんが誰かと結婚したら、もう二度と会えなくなってしまう・・・

そんなのは嫌だ。

ぼくは頭を振ってその考えを振り払った。

ぼくにだってまだチャンスはあるはずだ。

まずは大納言さま主催の管弦の宴のリサーチをして、誰が招待されているのかを知っておこう。

桜も散ったこの時期に管弦の宴を開催すると言うのだから、何か裏の意味がありそうな気がする。

若手を集めての演奏と言うのも気になるし・・・

本当にいざとなったら、その時は・・・・瑠璃さんに正面突破だ。

はっきり言おう。はっきり聞こう。

瑠璃さんが好きだ、ぼくとの約束、覚えてる?と。

・・・・心臓がドキドキしてきた。

気のせいか、顔も赤くなっているような気がする。

誰のいない部屋の中、ばくは急いで咳払いをして両手で頬をパンっと叩いたのだった。





<終>


「雪のいと高う~」を書いたら頭の中が急に平安に傾いて、ふと書いてみました。

これを書くことにハマったら「高彬版・なんて素敵にジャパネスク<全8巻>」を書いてしまいそうですので、とりあえず気になるシーンだけ抜き取ってこの先もいくつか書くかも知れません。

この場面での高彬目線気になる、などのリクエストがもしありましたらお知らせくださいませ。
(書けない場合もありますので、その時はごめんなさい)

次回の更新は社会人編の予定です。

いつもご訪問ありがとうございます。



瑞月

(←お礼画像&SS付きです)

コメントの投稿

Secre

非公開さま(Rさま)

Rさん、こんにちは。
いえいえ、こちらこそありがとうございました!
また何かありましたら言ってくださいね(*^_^*)

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

非公開さま(Rさま)

Rさん、こんにちは。

そうですよね、童の頃の高彬は一途に瑠璃との結婚を夢見ていたのだし、そのために仕事も出世も頑張ろうって思ってたのでしょうね。
結婚後ももちろんいいですけど、この頃の高彬の初々しい感じもすごくいいですよね。
オマージュカテゴリ、さっそく作りますね!
2つのシーンのリクエスト、ありがとうございます。
確かのあの密談は気になりますねぇ・・・(笑)

非公開さま(Mさま)

Mさん、こんばんは。

あ~、Mさんが挙げてくれたの、どれもこれも気になるシーンですねぇ。
色々、妄想が広がります!
ありがとうございます(*^_^*)

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます
プロフィール

瑞月

Author:瑞月
瑞月(みずき)です。

ランキングバナー

  ↑
ランキングに参加しています。
楽しんでいただけましたら
クリックで応援をお願い致します。
1日1クリック有効です。
初めにお読みください
**当ブログの簡単な説明です**
当ブログは「なんて素敵にジャパネスク」の二次小説を掲載しております。 二次小説と言う言葉を知らない方や苦手な方は閲覧ご注意ください。 また読後のクレームはお受けできません。 「ごあいさつ<最初にお読みください>」も合わせてご一読下さい。
カテゴリ
別館
乳姉妹ブログ
日記ブログ
掲示板
なんて素敵にサイト様 
最新記事
ご訪問ありがとう(H23.11.28-)
**オンラインカウンター**
現在の閲覧者数:
コメントありがとうございます
お礼SSや「他己紹介」があります。
web拍手 by FC2
** あれこれ投票所 **
お好きなジャンルをお選びください。 投票は何度でも可能です。
*** あれこれ投票所2 ***
メールフォーム(ご用の方はこちらから)

名前:
メール:
件名:
本文:

カレンダー
05 | 2017/06 | 07
- - - - 1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30 -
月別アーカイブ