拍手お礼SS<8>

*** 拍手お礼SSの寄せ集めです。投稿順に載せています ***





***雪のいと高う降りたるを<おまけのおまけ> ***




翌日、ぼくたちは日もすっかり高くなった昼近くになってようやく目を覚ました。

昨夜は仔犬の相手をしたり、夜半に母犬が迎えに来たり、もちろんその後は瑠璃さんを抱い・・・あ、いや、色々あって、すっかり寝るのが遅くなってしまったのだ。

牛車の用意をすると言う瑠璃さんや小萩の申し出を断り、徒歩で自邸に戻ることにする。

昨日まで振り続いた雪が嘘のような晴天で、遮るもののない陽射しを受け、至る所にぽたぽたと雪解け水が落ちている。

三条邸の庭はどこもかしこも真っ白で目に眩しいくらいだった。

東門をくぐろうとしたところで、聞き覚えのある(くぅーん)と言う鳴き声が聞こえ足を止める。

きょろきょろと辺りを見渡していると、繁みの陰から昨夜の仔犬が現れた。

手招きすると、昨夜のことに恩義を感じているのか、仔犬はすぐに寄ってきて鼻先をぼくの足元になすりつけてくる。

「母犬が迎えに来てくれて良かったな」

しゃがんで抱き上げてやると、仔犬は盛大に尻尾を振っている。

至近距離で仔犬と目が合って───

「・・・・やっぱり瑠璃さんに似てるな」

昨夜も思ったのだけど、仔犬と瑠璃さんはどこか似ているのだ。

人懐っこそうなところとか、黒目がちな丸い目とか。

激怒されそうで、瑠璃さんには言わなかったけど。

「おまえ、ぼくがいない時には、たまには瑠璃さんの部屋に顔を出してあげておくれよ」

仔犬を目の前に掲げて言い聞かせる。

「ああ見えて、あの人は寂しがり屋なんだ」

仔犬をそっと下ろすと、じっと上を見上げぼくの言葉を聞いているようだった。

「頼んだよ」

そう言うと、仔犬は雪の中を戻って行き、すぐに雪の白さに紛れて見えなくなった。

門をくぐり大路を歩き出す。

そこかしこから雪が落ちるドサッと言う音が聞こえてくる。

寒さの中に、幾分、空気の緩みが感じられた。

春は近そうだ。









*** ホワイト・デー ***





混雑する売り場を目の当たりにして、さてどうしたものか・・・・、とぼくはしばし思案した。

今日は3月14日、ホワイト・デーである。

どうして「ホワイト」なんだろう、売り場の雰囲気を見た感じじゃ「ピンク」とかそういう感じなんだけどな・・・

そんなことを考えているのは、はっきり言って現実逃避をしているからに他ならない。

何しろ、この、男ばかりが殺到しているデパ地下の様子と言うのは、一種異様な雰囲気で、この中を掻き分けて行くのはかなりの勇気と体力と、そして時間的な根気も必要とされるだろう。

もっと早くに買っておけばと良かったと言われればそれまでだけど、こう言ういわゆる「スイーツ」売り場で買い物すると言うのが元々が不得手なことなので、ついつい先延ばしにしてしまったのである。

手ぶらで帰ったら、瑠璃さんがっかりするかな・・・・

かと言って、いかにも適当に選びましたって感じのものをあげるのも、それもどうかと思うしなぁ・・・

散々、思案し、結局、何も買わずに帰ることにした。


****


「ただいま」

玄関を開けると

「おかえりなさい」

リビングの扉が開き、瑠璃さんがひょっこりと顔を出した。

料理中だったと見え、エプロンをして手にはお玉を持っている。

結婚して5年、瑠璃さんはめきめきと料理の腕を上げてきているのだ。

「・・・ごめん、瑠璃さん」

「なあに?」

キッチンに立つ瑠璃さんに後ろから声を掛けると、瑠璃さんはゆっくりと振りむいた。

「バレンタインのお返し、用意してないんだ」

何となく気まずくてネクタイを緩めながら言うと、瑠璃さんは小さく吹き出した。

「なによ、そんな神妙な顔してるから何事かと思っちゃったじゃない。いいわよ、そんなの」

「売り場が、ものすごい人出でさ」

「判ってるわよ、高彬がそういうの苦手なの」

「うん・・・」

売り場がいかに混んでごった返していたか、その中で商品を選んで買うことがいかに大変そうで体力を使いそうだったか───

そう説明しかけて、ぼくは言葉を飲み込んだ。

「・・・・」

ふいに、何も買わずに帰ってきたことがこの上ない賢明な判断に思えてきた。

そうだ、あんなところで体力と根気を使うくらいだったら───

また料理を始めた瑠璃さんを、後ろからそっと抱きしめる。

髪をかきあげ、うなじにキスをすると

「もう、火を使ってるんだから危ないったら」

瑠璃さんは身をよじりぼくから逃げようとした。

構わず首筋にキスを続け、顎に手をかけこちらを向かせると唇に濃い目のキスをする。

唇を離すと、なじるような目をした瑠璃さんの顔があった。

「ベッド行こ」

「料理中よ」

手を伸ばしカチっと火を消してやると、瑠璃さんは唇を尖らせ、それでも観念したのか、エプロンを外すべく手を掛けた。

「それもぼくが外すから」

瑠璃さんをベッドに連れ込み、いかんなく体力と根気を発揮したぼくは、結局、その日は瑠璃さんはそのまま眠ってしまい、夕飯にありつけることなく朝を迎えることになってしまったのだった。

まぁ、こんなホワイトデーもあると言う、そういう話だ。










***春の夜***





「・・・高彬!ちょ、ちょっと・・・ねぇ、・・・大丈夫なの?」

「・・あぁ・・瑠璃さん・・大丈夫だよ。小萩、下がっていいよ。すまなかったね」

「顔色・・悪いわよ。ほら、つかまって。もう、こんなになるまで飲まなきゃいいのに。お酒、強くないんだから」

「うん・・、花待ちの宴の席で中将どのに盃を勧められてね。妻が酔っ払いを嫌うものですから、ってやんわりとお断りしたんだけど・・・・なかなか解放してもらえなくてさ」

「水、持ってこさせる?」

「いや、大丈夫だよ。これ以上、何か飲んだらもっと気持ち悪くなりそうだ」

「足元、良く見て。大丈夫?・・・ほら、横になって」

「その前にこれ、脱がないと」

「いいわよ、あたしが脱がしてあげるから。早く横になって」

「・・優しいね、瑠璃さん」

「普段、あたしが優しくないみたいなこと言わないで。・・・さ、腕上げて」

「うん」

「今度はこっちの腕」

「うん」

「首、少し上げられる?」

「うん」

「今度は背中」

「うん。・・・くすぐったいよ、瑠璃さん」

「少し我慢してて。腰紐が上手く解けないの」

「瑠璃さんは不器用だからなぁ・・・」

「ひどいこと言って。・・・あ、解けたわ」

「瑠璃さんに脱がしてもらうって言うのも悪くないね。今度からはこうしていつも瑠璃さんに脱がしてもらおうかな」

「何、馬鹿なこと言ってるの」

「・・・早く、瑠璃さんと一緒に住みたいな。そうしたら瑠璃さんとずっと一緒にいられる」

「・・・・・」

「瑠璃さん、ぼくのこと、嫌いになったりしないでね」

「え、何よ急に」

「瑠璃さん、酔っ払い嫌いだろう。なのにこんな醜態さらしちゃって・・・」

「馬鹿ね、こんなことで嫌いになったりしないわよ。無理して飲んで身体に悪いんじゃないかって心配なだけよ」

「・・・・・」

「嫌いになってたら・・・・こんな風に面倒見ないわよ」

「うん・・」

「少し寝たらいいわ」

「うん。瑠璃さんももう寝る?一緒に寝ようよ」

「少ししたらあたしも寝るから」

「少ししたら?」

「あんたが寝入ったのを見届けてからね。気持ち悪くなったりしたら困るでしょう。だから安心して眠ったら・・・・って、ちょ、ちょっと!た、高彬・・」

「脱がしてもらったお礼に、今度はぼくが瑠璃さんのを・・・」

「い、いいから、自分で脱げるから!」

「腕上げて」

「だ、大丈夫、ほんと、大丈夫だから。気持ち悪いんじゃないの?!」

「瑠璃さんのおかげで少し治まってきた」

「じゃ、じゃあ尚のこと、今のうちに少し眠って・・・、ねぇってば、高彬・・・!」

「少し動かないで。腰紐解いてるんだから」

「もうっ。心配して損したわ」

「ぼくは心配してもらえて嬉しかった」

「・・・・」

「で、どうかな?腰紐、もう解けたんだけど。・・・・駄目?」

「・・・・・」

「瑠璃さん」

「・・・・・・。高彬の唇、お酒の味がするわ」

「うん」

「高彬・・・」

「今度は瑠璃さんに酔いそうだ」

「・・・馬鹿ね」







***春の夜、明けて***





「おはよう」

「・・・・・」

「ねぇ、高彬ったら。お・は・よ・う」

「・・・・・」

「・・え?何か言った?」

「・・・た、い・・・」

「え?」

「頭が・・・痛・・い」

「やだ、風邪?・・熱でもあるんじゃないの?・・・うーん、おでこは熱くないみたいね」

「・・・うぅっ」

「何よ、うぅって」

「・・・頼む、瑠璃さん、触らないでくれ。風邪じゃな・・い。昨日の酒のせい・・・だ・・・」

「・・・二日酔い?しょうがないわねぇ」

「瑠璃さん、もう少し小さい声で話してくれないか。頭が痛くて・・・死にそうだ」

「もうっ、大げさなんだから」

「だから頼むって。ぼくに触らないでくれ。触るならそっと」

「・・・・まったく・・・。だから昨日、あのまま寝てれば良かったのよ。あんなことするから酔いが廻ったのよ。自業自得だわ」

「だって・・・瑠璃さんが・・・誘惑するから」

「誘惑?!冗談でしょう?いつあたしが・・」

「あんなに優しくしてくれるから、つい」

「ついって」

「・・公休だから良かったものの、こんな二日酔いだなんてことが三条邸の方々にばれたら・・・」

「別に誰も何とも思わないわよ。父さまだってよくなってるし」

「いや、内大臣さまとぼくとじゃ格が違うしさ。婿としてこんな醜態をさらすのは・・・何とも面目ないと言うか・・・」

「・・・あんたってつくづく変わってるわねぇ。二日酔いの時くらい、大きな顔して気持ち悪がってりゃいいじゃないの。それを格だの面目だのと」

「・・・失礼いたしますわ、姫さま。朝餉のご準備が整いましたが・・・」

「・・あぁ、小萩。今朝はねぇ・・・何だかまだお腹がすかないのよ。高彬も休みだし、もう少し寝てるわ。お腹すいたわ声掛けるから」

「かしこまりましたわ、姫さま」

「・・・・・・」

「・・・ありがとう、瑠璃さん。うくごまかしてくれて。瑠璃さんって案外、優しいよね」

「やぁねぇ、まるで普段のあたしが鬼みたいに聞こえるじゃない。・・・ま、これで当分、誰も来ないからゆっくり休んだらいいわ。少し寝たら?」

「うん。・・・・ねぇ瑠璃さん、隣にいてくれる?」

「何よ、甘えた声出して。有能公達が形なしよ」

「瑠璃さんの前だけだよ」

「ふふふ」

「明日になったら、また有能公達に戻るからさ。だから、今日だけは隣にいて」

「・・ふふ・・・しょうがないわねぇ。いいわよ、ずっと隣にいてあげる」

「うん」

「さ、寝なさい」

「もっとこっちに来てよ」

「来てるわよ」

「もっと」

「これ以上は無理よ」

「もっとだよ、隙間がないくらいに」

「もう・・・甘え過ぎ!」

「いてっ」





<終>

(←お礼画像&SS付きです)

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