社会人編<28>

「なにぶん高彬さまは、将来のご伴侶となられる方とご歓談中でございますので」

男はこの上なく丁寧に、だけどどこか挑発的とも取れるような声音で、あたしの目をはったと見据えながら言った。

そうして身体をずらし、まるで(さぁ、見てくれ)とでも言うようにあたしの視線を高彬のいるテーブルへと誘う。

何なんだこの男、と言う気持ちよりも、高彬の話してる相手を見たいと言う好奇心の方が上回り、あたしはそっと身体を伸ばした。

今まで死角となり見えなかった向い側が見え、そこには紺色のワンピースに身を包んだ、これぞお嬢様の決定版と言う感じの女性が微笑んでいた。






─Up to you !─side R <第28話>






「非の打ちどころのないお方でございます。あの方こそ高彬さまのご伴侶にお相応しい」

同じように視線を高彬たちのテーブルに向けていた男は満足気に呟くと、身体の向きを変えあたしに正面から向かい合った。

「失礼ですが、どちら様でございますか。高彬さまとはどのようなご関係なのでございましょう」

その、この上なく慇懃無礼な言い方にムッとくる。

何なのよ、この男。

高彬の関係者であることは明白だけれども、それにしたってさっきから失礼じゃないのさ。

あたしは背筋を伸ばした。

「人に名前を聞くときは、まず自分の名を名乗るものではないかしら?」

高彬よりも上背のあるその男を下から睨みつけながらぴしゃりと言ってやると、男の表情が一瞬、動いた。

ふんっ、女だと思ってなめるんじゃないわよ。

「これは失礼いたしました」

男は深々と頭を下げると

「わたしは家司守弥と申します。藤原家の執事、兼、高彬さまの秘書、兼、ボディガード、兼、ご幼少のみぎりからの教育係りでございます」

ケンケンケンケンうるさいなと思いつつ、あたしは何となく思い出して納得していた。

そういや高彬が昨日、言っていたっけ。うちは何でも大げさで時代錯誤だとか何とか。

確かに、この男の言葉遣いからして時代錯誤で大げさな感じが伝わってくる。

電報打ったのも、案外、この男なんじゃないかしら・・・

男を一瞥し、くるりと踵を返し歩き出すと、後ろで息を飲む気配がして、あたしは心の中で(べぇ)と舌を出してやった。

だーれが、あんな感じ悪い奴に名前なんか教えてやるもんか。

名乗られたからって、名乗り返さなきゃいけないなんて法律ないもんね。

カッカしながら小萩のところに戻ると、興味津々と言う感じで身を乗り出してきた。

どう言うわけだか目がらんらんと輝いている。

「瑠璃さま、もしかしてナンパされてましたの?」

「・・・はぁ?」

「ま、おとぼけになって、ふふふ。いいですわよ、わたくしはあの方と同席でランチしても」

「・・・・・」

あたしは今の状況も忘れ、呆れかえってまじまじと小萩を見てしまった。

一体全体、どこをどうやったら、あの様子をナンパと思えるのかしら。

いくら遠目からだったと言っても、おおよその雰囲気くらいは判りそうなものなのに。

「なかなかに素敵な方ですしねぇ」

小萩は家司守弥と名乗った男の方に目をやり、つられて見ると、男──守弥はもうすでに今のやりとりを忘れたように澄まして立っており、その立ち姿は確かに小萩が素敵と言うのも判るような男ぶりなのではあった。

それにしても───

高彬の「将来のご伴侶」かぁ。

そりゃあね、そういう人がいたってちっともおかしくはないんだろうけど、だけど・・・・

「・・・・・」

「瑠璃さま?」

黙って立ちつくすあたしを不審に思ったのか、小萩に顔を覗きこまれ

「小萩、ランチは他のとこに行きましょ」

ともすれば座り込みたく気持ちを奮い立たせると、あたしはさっさとホテルを後にしたのだった。






…To be continued…



突然ですが、守弥のフルネーム「「家司(けいし)守弥」としました。

名字がなくても物語の進行上さして問題はないのですが、瑠璃に名を名乗る時「守弥です」だけじゃおかしいかな、と思い急遽付けました。

小萩は万里小路から「万里小萩」なんてどうかな、と思っています。


(←お礼画像&SS付きです)

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Secre

非公開さま(Kさま)

Kさん、こんばんは。


更新を楽しみにして下さってありがとうございます<m(__)m>
しかも「りぼん」の新刊を待つ小学生のような気持ちだなんて、何だかその気持ちを思い出して私もキュンとしてしまいました(*^_^*)
瑠璃の鼻っ柱の強さ、健在です!
高彬の告白はどうなるのでしょう??
頭の中ではその辺りまでは出来ているので、どうぞお楽しみになさってください。

ありちゃんさま

ありちゃんさん、こんばんは!

> 「けいし」でしたか。「いえつかさ」と読んでしまいました。

お好きな読み方で問題ないです!守弥の名字だし(←ひどい)

>日本語も難しい。(笑)

ですね~(笑)奥が深い。

この先どうなって行くのか、私にとっても未知数ですが、またお付き合いくださいね!

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瑞月さん こんにちは。

守弥とご対面しましたねぇ。
「けいし」でしたか。「いえつかさ」と読んでしまいました。日本語も難しい。(笑)
頭脳労働専門でありながらどっか抜けてる守弥と、彼に振りまわされてるようで収まるところに収めちゃう高彬を、楽しみにしています。
♪( ´▽`)
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