社会人編<27>

「ねぇ、小萩。ちょっと出掛けるけど、おまえも一緒に来ない?」

二階の自室の出窓から庭にいる小萩の姿を見かけたあたしは、窓を開けると大声で小萩に言った。

家庭菜園ならぬ家庭ハーブ園に熱心に水やりをしていた小萩は、手を止め上を向くと、一瞬、午前中の冬の太陽の陽ざしに眩しそうに目を細め、それでも

「えぇ、お供いたしますわ。瑠璃さま。すぐに終わらせますので少しお待ちくださいませ」

弾んだ声を返してきた。

待ち合わせの5時までには、まだたっぷり時間がある。

久しぶりに小萩と2人でランチするのも悪くないわ。

買いたいものもあるし・・・・






─Up to you !─side R <第27話>






「瑠璃さま。何か良いことでもございましたの?」

「なんでよ」

「昨夜からずっとご機嫌が良いようにお見受け致しますけど」

連れだって歩きながら小萩に言われ

「そう?別にそういうわけではないんだけど」

何でもないことのように答えながら、あたしは内心(うーむ)と唸った。

さすが幼い頃からあたしを間近で見ていただけあって、あたしのちょっとした変化と言うか心の機微に、小萩は目敏いみたいだった。

実際、あたしは昨夜から気分がいいのだ。

ううん、昨夜じゃないわね、・・・・・遡れば鴨川沿いで高彬とバッタリ会った時から、かも知れない。

高彬の実家が京都だったと言うのも嬉しい驚きだったし、その後にごく自然にランチの約束をして、そうして今上鷹男にバッタリ会うと言う思わぬハプニングがあったとはいえ・・・

ううん。

再度、あたしは心の中で頭を振った。

思わぬハプニングこそ、もしかしたらあたしの上機嫌の理由かも知れないわ。

あの時の高彬ったら!

隣で見てても、青くなったり焦ったり、かと思うと、突然、真面目な顔であんなことを言うんだもの。

そりゃあ、あたしの嘘八百に合わせてくれた演技だとは判っているけど、だけど、何て言うか───

『瑠璃さんを誰にも譲る気はありません』の言葉には、ドキっとしてしまった。

その後の今上鷹男とのやり取りも、男らしさを感じたって言うかさ。

高彬って人当たりも柔らかいし、弟と同い年だって思ってるせいかついつい気安く接してしまうけど、だけど、昨日はしみじみと

(高彬も男の人なんだ)

なんて当たり前のことを改めて思ってしまったりもした。

高彬には、新幹線の中で事情を話して当面はあたしの恋人の振りをして欲しいと頼むつもりだし、そうすれば、あのキザったらしい今上鷹男の妙なアプローチを断る口実も出来るしね。

高彬と恋人の振り、なんて考えると、何でだか楽しくなってきて、それがあたしの上機嫌の一番の理由なのかも知れない。

高彬ってからかいやすいし、今上鷹男への抑えは抑えとして、色々と楽しくなりそう・・・

「そういえば瑠璃さま。その、今上とか言う方からいただいた薔薇はどうされましたの?」

昨日、高彬と一緒に前を通った同じ花屋さんの前を通り過ぎると、店先の薔薇を見て思い出したのか、小萩が尋ねてきた。

「あぁ、あの薔薇・・・。デスクの半分以上を占めてるから邪魔で邪魔で、よっぽどね、へし折ってやろうかと思ったんだけど、薔薇に罪はないじゃない?」

「えぇ」

「だから、花瓶ごと守衛室に持ってったのよ。いつもご苦労さまですってね。60過ぎのおじさんだったけど喜んでくれたわよ。部屋が一気に明るくなったって。薔薇も本望でしょ」

そう言うと小萩はぷっと吹き出し

「瑠璃さまったら相変わらずですのねぇ・・」

などと小声で呟いている。

お目当ての店に着き、あたしはボールペンを買った。

ここの店はイニシャルを刻印してくれるので、高彬のお礼にどうかな、と昨夜閃いたのだった。

値段も手頃だし、仕事で毎日使うものだしさ。

誰のイニシャルかを聞きたがる小萩をはぐらかし

「そういや、おまえ、東京に来ない?前に来たがってたでしょ。何ならあたしから父さまに言ってあげるわよ」

「まぁ、本当ですの?!瑠璃さま。それはもうぜひぜひ」

「あたしも小萩が家のことやってくれたら助かるし、それに少し、料理も覚えようかなぁ、なんて・・・・最近思うしさ」

なんてことないように言ったつもりだったのに、やっぱり小萩の目はごまかせなかった。

横目で意味ありげな目で見られ、ついつい赤面してしまう・・・

いえ、別にね。深い意味はないのよ。

ただ・・・、何かの時にパパっとそれなりの料理が作れたら便利だし、それにちょっとそういうのって女性としてポイント高いって言うかさ。

ほら、毎回、レタス千切るだけっていうのはあんまりだし・・・

べ、別に高彬限定ってわけじゃなくて、よ。

って、誰に言い訳してるのかしら?あたし。

ひとりぶつぶつ言うあたしを不思議そうに見ていた小萩は、そろそろお腹がすいてきたと見えランチを提案してきた。

何でもホテルのラウンジで出してくれるオープンサンドが美味しいと巷で評判になっているらしくて、そこで食べることにして2人で向う。

日曜と言うこともあってかホテルのロビーはそれなりの人出があり、どうやらラウンジもいっぱいのようだった。

おしゃべりしながら待つ気でソファに腰掛けようとした瞬間、見覚えのある後姿が目に入った気がしてあたしは背伸びをした。

あの後姿・・・

高彬じゃないかしら。

向いの人と話しているようだけど、ここからじゃ鏡と観葉植物が邪魔で相手の姿が見えない。

確認して、大丈夫なようだったら高彬に声を掛けてみようか・・・と一歩足を進めたところで

「失礼」

男が脇からぬっと現れた。

「高彬さまに何か御用でしたらわたくしがお聞きいたしますが」

「・・・・・」

誰よ、この人。

「なにぶん高彬さまは・・・・将来のご伴侶となられる方とご歓談中でございますので」

男はこの上なく丁寧に、だけどどこか挑発的とも取れるような声音で、あたしの目をはったと見据えながら言った。






…To be continued…



(←お礼画像&SS付きです)

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Secre

非公開さま(Nさま)

Nさん、こんにちは。

私も瑠璃と小萩の組み合わせって好きなので、小萩には東京に来てもらおうかなぁ・・と思ってます(*^_^*)
守弥はどうしようかなぁ(笑)
京都にいてもらって構わないんですけど、勝手に東京に来てそうで怖いです(笑)

非公開さま(Rさま)

Rさん。

「チームF」→T・F→Takaakira.Fujiwara・・・!
なるほど~!素晴らしいです!

守弥、どこまで邪魔する気なんだか・・(;一_一)


非公開さま(Mさま)

Mさん、こんにちは!

Mさんのパターン、どれも楽しそうですね(^_-)-☆
ほんと、前にMさんがおっしゃったようにシュミレーションゲームみたいに色々選べたらいいのに。
守弥は間違いなく正当化してるでしょうね(笑)
瑠璃と守弥の関係性、どう進めて行こうか考え中です。
ずっと火花バチバチもいいし、どこかで瑠璃が守弥の弱みを握るのも楽しそうだと思いません?(笑)

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