社会人編<26>

「どなたって・・・」

一瞬、質問の意味が判らずぼんやりと聞き返し、だけど、すぐに思考が繋がる。

「おまえ、まさか・・・!」

「はい。若君のご様子がおかしいので後を付けました。若君の身に何かあったらと思いまして」

悪びれもせず、それどころか口元にそこはかとない微笑を浮かべながら守弥はしれっと言った。







─Up to you !─<第26話>






「店にもいたのか」

言ってる内容からして、それは明白だったけれども、だけど聞かずにはいられない。

「はい。若君の後ろのテーブルに座っておりました。若君からは死角となり見えなかったようですが」

「・・・・・・」

「パスタの味もなかなかで」

───食ったのかよ!

ぼくは味わうどころか、途中で出てきてしまったから食べきってさえいないと言うのに。

人の後付け回しながらランチまで済ませるなんて、どこまでふてぶてしい奴なんだ。

「出来れば私も若君に支払っていただきたかったものですが」

「誰が払うか」

ぼくはそっぽを向いた。

「まぁ、必要経費として落としますが。・・・ところで若君、あの女性とはどういうご関係なのですか?若君と一夜を共にしたというのは真実なのですか?」

ぼくの退路を断つかのように一歩近づいてくる守弥を、負けじとじろりと睨み返す。

「ノーコメントだ。おまえには関係ないだろ」

「いえ、ありますね」

「なんでだよ」

「若君は、この藤原家を継ぐお方、次期当主です。そのようなお方に、街中で抱きつくような破廉恥な女性は相応しくありません」

「・・・・・・」

「あの後、ホテルにでも行くのかと思い警戒しておりました」

「・・・そんなとこ行かなかったさ」

ぼくは鼻を鳴らした。

「はい、そのようでしたね。書店にお寄りになり2冊の本を購入しただけでした」

そんなところまで見られていたのか。まったく、こいつは・・・。

「家は兄貴たちが継ぐさ。ぼくは家を出る」

「お父上もお母上も、若君が継ぐことをお望みです」

「それは親父やお袋の望みなだけだろ」

ぼくの言葉に守弥は露骨に嫌そうな顔をした。

ぼくが、両親のことを「親父」「お袋」と呼ぶのを快く思っていないのだ。

子どもの頃は、当たり前のように「父上」「母上」と呼んでいたのだけど、物心が付いた頃から呼び方を変えた。

回りでそんな風に言ってる友だちはいなかったし、思えば、自分の生まれ育った家がちょっと普通とは違うと言うことに気付きだしたのもその頃だった。

それ以来、この時代錯誤の実家は、言わばぼくのコンプレックスにもなっているわけで・・・

「ところで、若君」

ふと思い出したように守弥が口調を変えた。

「お父上の名代として、明日、会っていただきたい方がおります。2~3時間、よろしいですか?」

「誰だよ」

「仕事上で我が藤原家と重要な取引のある大切な方です。わざわざ京都まで出向いて下さったのですが、生憎、お父上は明後日まで不在でいらっしゃる。相手方からも、それならばぜひ若君に、とのことでございます」

よろしいですね?と重ねて言われ、その有無を言わせぬ口調にぼくはしぶしぶ頷いた。

瑠璃さんとの約束の時間は5時なので、それまでには済むだろう。

寝る前、『明日、5時に京都駅で。おやすみ』と、瑠璃さんにメールを打ちかけ、だけど、さっき約束したばかりなのにくどいかな、と思い直し止めた。

翌日、指定されたホテルのフロントで名前を告げると、バックヤードから支配人が出てきて

「高彬さま、お久しぶりでございます。ご案内致します。すでに先方さまはお待ちでございます」

深々と頭を下げると先を歩き出し、ラウンジへと連れて行かれた。

案内されたテーブルには、和服姿の年配の女性と、若い女性がいる。

この2人が、仕事上取引のある大切な人・・・?

いや、別に女性蔑視をしているわけではないのだけど、どうにもビジネスからは遠い雰囲気を纏っているのだ。

とりあえずイスに座ると、年配の女性が満面の笑みを浮かべぼくに会釈をすると

「こちらは兵部仁菜子さんです。ようやく席を設けられて嬉しゅうございますわ。・・・仁菜子さん、こちらは藤原高彬さんです。堅苦しい場所よりも、こういう場所の方が良いかと思いましたの。・・・・私はこれで失礼いたしますので、後はお2人で・・・」

そう言い置いて、あっと言う間に退席してしまった。

「・・・・・」

こ、これは・・・!

前から散々、断り続けてきた兵部家の「お嬢様」との見合いの席なのではないだろうか・・・

目の前に座る女性───仁菜子さんは、ぼくと目が合うと、恥ずかしそうに控えめに微笑んでいる。

曖昧に笑い返しながら、ぼくは気付かれないように奥歯をぎりぎりと噛みしめた。

くそっ、守弥に嵌められたか───!






…To be continued…

(←お礼画像&SS付きです)

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Secre

非公開さま(Nさま)

Nさん。
いえいえ、大丈夫ですよ~、守弥の名前くらい(笑)
お気になさらずに。
守弥を悪く言っていた呪いというのは・・・・ありえますねぇ。
Nさん、守弥の仕返しには十分、気をつけてください!
後を付けられたりしちゃうかも・・・(笑)

非公開さま(Yさま)

Yさん、こんにちは。

そうですよね。「障害があるほど燃える」と言う考えは高彬にはそぐわない感じがしますよね。
障害があったら燃えるって、どこか「恋してる自分」を楽しんでいるイメージですものね。
高彬は純粋に「恋に落ちる」タイプですよね。
鷹男のイメージ社会人編の中では、確かに「赤」ですね。それも「真っ赤」!(笑)

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非公開さま(Rさま)

Rさん、こんにちは。

はい、お見合い相手は二の姫です!
守弥の黒服グラサン姿・・・(笑)
かなりかっこよさそうですよね。
守弥はジャパネスクの男性陣の中で一番かっこいいと思っています。
あ、ルックスは、ですよ、ルックスは。
性格は・・・難あり、ですので~(笑)

非公開さま(Nさま)

Nさん、こんにちは。

原作でも守弥は、あっさり高彬を嵌める計画をたてていましたものね。
あそこまで高彬が好きなくせに裏切れるって、どういう神経してるんでしょうね(笑)

はい、お見合い相手は二の姫です。
名前として「にのこ」より「になこ」の方が可愛いかなぁと思いまして(*^_^*)

非公開さま(Mさま)

Mさん、こんにちは。

そうなんですよ~、高彬はどこか詰めが甘いと言うかドンくさいんですよね。
まぁ、それ以上に守弥があざといとも言えますが(笑)
高彬の振りかかる(であろう)様々な苦難・・・
私にSっ気があることは周知の(?)事実でありますが、Mさんだってきっとそれをお望みのはず(笑)(←と、無理やりMさんも引きづり込んだりして)

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