社会人編<21>

例えば、同じ会社に勤める人間同士が、遠く離れた京都の地でばったりと会うと言うのは、果たしてどれくらいの確立で発生する事象なのだろうか?

案外よくあることなのか、それとも運命を感じていいレベルのことなのか?

ぼくはそんなことを考えながら、そっと瑠璃さんの横顔を窺い───






─Up to you !─<第21話>






「若君、またお出かけですか?」

玄関で靴を履いていると後ろから守弥が声を掛けてきた。

「ご昼食の準備がもうじき整えられますが・・・」

「外で食べてくる」

「お帰りのご予定は?」

「判らない」

それだけ言って後ろ手に扉を閉め、飛び石を伝って門扉まで歩くと、奥に戻ったとばかり思っていた守弥が後ろに立っていたのでびっくりしてしまった。

「な、なんだよ・・守弥。驚かせるなよ」

「少々、若君のご様子が常とは違うようでしたので、気になって付いてきてしまいました」

「・・・・・」

「何かございましたか?」

「いや、別に」

「・・・そうですか。では、行ってらっしゃいませ。どうか御身、お大切に。何かございましたら、この守弥めにご連絡ください、すぐに駆けつけますので」

「・・・・・」

返事する気も失せて、ぼくは黙って門扉を開けると歩き出した。

御身、大切に、だなんて、24歳の男の身に、一体どんな危険がせまるって言うんだよ。

瑠璃さんとランチしに行くだけじゃないか。

しかも「若君」とか、いい加減、止めて欲しいんだよなぁ・・・

それで子どもの頃、どれだけ回りにからかわれたことか。

授業参観の日、母親の代わりに守弥が来たことがあり、その時にあいつが───

まぁ、いいか。

過去の苦々しい思い出より、今日これからの楽しいことを考えよう。

約束の時間の5分前に付くと、もうすでに瑠璃さんは来ており、ぼくを見ると大きく手を振った。

「ごめん、遅くなって」

「ううん。お腹すいてるから急いで来ちゃった」

えへへ、と恥ずかしそうに肩をすくめるので

「じゃあ急いで店を決めて入ろう」

ぼくたちは並んで歩き出した。

そういえば、こんな風に2人きりで外で食事をするのなんて初めてのことだ。

仕事の日のランチは別々に食べることも多いし、例え食べたとしても誰かが同席している。

待ち合わせをして食事をするなんて、もしかしたらこういうのは「デート」と呼んでいいのではないだろうか・・・

何が食べたいかを話しながら歩いていると、少し先に花屋が見えてきた。

店先にたくさんの花が並べられており、その中に真っ赤な薔薇の花もある。

店の前を通り過ぎる時、瑠璃さんの視線がちらりと薔薇に向いた気がして、ぼくは密かに息を吸い込んだ。

──聞いてみようか?月曜の薔薇のこと。

この間の月曜日、出社してみたら隣の瑠璃さんのデスクの上に大きな薔薇の花束があったのだ。

差出人は鷹男チーフで──

「お近づきのしるしに」とか何とかカードに書いてあったように思う。

遅れて出社してきた瑠璃さんは、薔薇を見るなり見る見る顔を赤くして、そのまま花瓶ごとどこかに持ち去り、戻って来た時には手ぶらだった。

あの花をどうしたのか、そもそも鷹男チーフとの間にあの後、何か薔薇の花束をもらうようなことでもあったのか・・・

あの日、鍵を取りに会社に戻った日、鷹男チーフと会った後、瑠璃さんの様子が少し変だったのも気になるし・・・

今なら聞けるかも知れない───

「瑠璃さん」

そう声を掛け瑠璃さんが振り向いた瞬間、ぼくの声をかき消すほどの派手なクラクションが響いた。

「瑠璃ちゃん!」

声の方を向くと、あろうことか、目も覚めるほどの真っ赤なスポーツカー、──ランボルギーニ・ディアブロに乗った鷹男チーフが手を振っている。

左右を確認してすばやく路肩にクルマを止めると、瑠璃さんの前に颯爽と現れた。

そのあまりに派手な登場の仕方に、道行く人もわざわざ振り返って見ている。

「偶然だな、こんなところで瑠璃ちゃんに会うなんて。・・・なんだ藤原、おまえもいたのか」

嫌そうにぼくの方を見ていい、でもすぐに視線を瑠璃さんに戻すと

「京都で瑠璃ちゃんに会うなんて何だか運命を感じるな。良かったらランチでもどう?この辺りにおいしいイタリアンの店があるんだ」

にこやかに話しかけている。

例えば───

同じ会社に勤める人間同士が、遠く離れた京都の地でばったりと会うと言うのは、果たしてどれくらいの確立で発生する事象なのだろうか?

案外よくあることなのか、それとも運命を感じていいレベルのことなのか?

そんなことを考えながら、そっと瑠璃さんの横顔を窺い見ると、瑠璃さんはむぅとした顔で黙り込んでいる。

「今上先輩。ぼくたち・・・・・これからランチに行くつもりだったんです」

言外に「2人で」と言うニュアンスを込めたのに

「そうか、ちょうど良かった。おまえも来ていいぞ」

軽くあしらわれてしまった。

───くそっ。

「何か言ったか?」

「別に・・」

鷹男チーフに押し切られる形で瑠璃さんは店に連れて行かれ、もちろんぼくも後を追い、窓際に瑠璃さん、向かいには鷹男チーフが座り、ぼくは小さく手招きをされて瑠璃さんの隣に座った。

こうして、まるで三者面談のようなランチが始まったのだった。






…To be continued…


(←お礼画像&SS付きです)

コメントの投稿

Secre

非公開さま(Yさま)

Yさん、おはようございます。

更新、楽しみにして下さってありがとうございます(*^_^*)
常識人の高彬はしばらくの間、ラテン男・鷹男やおてんばな瑠璃に圧倒されてしまうかも知れません。
でも、安心して下さい(笑)高彬がヒーローですよ!

非公開さま(Rさま)

Rさん、おはようございます。


「ラテン男」!(笑)
他の方からいただいたコメントと合わせて、社会人編での鷹男の役どころは「残念なラテン男」で決定です。
私の中で方向性が決まり、鷹男のキャラがたってきました。
瑠璃がおとなしい?
Rさん、嵐の前の静けさですよ(笑)

非公開さま(Mさま)

Mさん、おはようございます。

「残念な男」(笑)
確かにその匂いはプンプンしていますね。(匂わせているのは私ですが)
考えてみたら現代編ではあまり田代くんを活躍(?)させてなかったので、今回は少し出演を多くしてもらおうかと思っています。
リクエスト、しかとお受けいたしました。と言いますか、そんな感じのシーンを考えていました。
ただし、ちょっとばかし方向性が違うかもしれません(笑)

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