***第十五話 十月の逢瀬<Part2>***

『なんて素敵にジャパネスク〜二次小説』




          注)このお話は連続ものです。
            カテゴリー「二次小説」よりお入りいただき
            第一話からお読みくださいませ。



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*** 第十五話 十月の逢瀬 <Part?>***




「だめだって言われても、今日は手加減はしないよ。そういう約束だろ」

高彬があたしの顔を覗き込む。

返事の変わりに微笑むと、高彬の手はさらに胸元を強く這い、指先が何かを探すように動き始めた。

うわっ・・・・。

思わず心の中で叫んじゃった。

冬物の単衣は寒さを通さないために厚く出来ている。

高彬はじれたように胸の合わせに指を入れてきた。

この前みたいに、恐る恐るではなくて、うむを言わせない力強さがある。

高彬、本気なんだ・・・。

これから始まることが、怖くないと言ったら嘘になるけど、でも、あたしだって女よ。

女は度胸って言うじゃない。

覚悟を決めたわ。

あたしは小さく吐息して、身体の力を抜いた。ほんと、どうしてだか力が入っちゃうのよ。

高彬の両手があたしの合わせにかかった。

・・・・・えっ。

そう思った時には、あたしは肌は薄暗がりの中にさらされていた。

薄暗いと言ったって、灯台の明かりがあるので、それなりには明るい。

あぁ、こんなことなら小萩に言って、灯台の芯をうんと短く切ってもらえばよかったわ。

でも、でも、掛け値なしの処女のあたしが、そんなことにまで気が回るわけないじゃないのー。

高彬にじっと見られているような気配を感じて、まともに目を開けていられない。

高彬が何かを言ったような気がしたんだけど、あたしは恥ずかしさが頂点に達して、思わず自分の胸元をかき集めてしまった。

高彬は黙ったまま、あたしの手をどけて、また合わせを開こうとする。

「待って・・・待って・・高彬・・・」

覚悟を決めたはずなのに、あたしはまたしても混乱した声をあげていた。

あたしと高彬は、少しの間、無言の攻防を繰り返したんだけど、高彬は男の力であたしの両手をからめとり、そのまま両手の自由を奪われてしまった。

高彬は片手でゆっくりと合わせを開いていく。一度、開かれた合わせはあっけないほど簡単にほどかれてしまう。

さっきよりも多く、肌が出てしまっている・・・ような気がするわ。

「・・・いやよ・・・待って・・」

それには答えずに高彬は手を肌に這わせると

「手加減しないって言っただろ、瑠璃さん」

落ち着いた声で言った。

あたしはこんなに混乱してるって言うのに、なんで高彬は余裕があるのよ!

高彬が接吻をしてきた。優しい接吻だった。

唇を離れ、そのまま首すじ、喉もとをたどり、そっと胸元に触れた。

初めての感覚に(当然よ!)あたしはカッと頭に血がのぼってしまった。

これから先、何が始まるのかと思うとクラクラしてくる。

でも、もう、ここまで来て後戻りはできないわ。

このままいっきに人妻よっ。

そう思った瞬間、ぱたぱたと簀子縁を歩く足音が聞こえて、それが格子の外で止まった。

何事かと思っていると

「・・・ご無礼致します。高彬さま、お聞きでいらっしゃいますか」

遠慮がちな小萩の声が聞こえた。

ぎょっとしたように高彬が顔を上げ、あたしもとっさに胸元をかき集めちゃった。

まさか、小萩が無遠慮に部屋に入ってくるとは思わないけど、こんな姿、いくら腹心の女房とは言え見せられないもの。

「聞いてるよ。なに?」

そこはさすがの宮廷人、平静な声で答えると、小萩が膝を進める気配がした。

「ただいま、宮中より至急の使いが参られました」

「宮中から?」

高彬の顔に緊張が走った。

「長く御患いであられた帝が、先ほど御譲位あそばされたとの由にございます。高彬さまに宮中より、急ぎ参内するようにとのご内意がございました」

「わかった。すぐに参る」

えっ?すぐ参るって・・・

「瑠璃さん、ごめんよ」

「行っちゃうの?」

「うん、帝が御譲位されたとなると、当然、今の東宮が新帝につかれることになる。国にとっての一大事だ。臣下として、行かないわけにはいかないんだ」

すっと立ち上がり、ふと思いついたようにもう一度しゃがみ、手を伸ばしてあたしの合わせを整えた。

そうして肩に手を置いて

「ほんとにごめんよ、瑠璃さん。ぼくも・・・辛いんだ。また連絡するから」

そう言うと、部屋を出て行ってしまった。

一人、残されたあたしは、ただただ呆然としていた。

・・・・一体、なんなのよーっ。


 

           *********************************************




二週間たっても、高彬からは何の連絡もなかった。

それも無理のない話しで、御世が代わったことで宮中行事や祝い事が続き、貴族たちは多忙を極めているのだ。

貴族の人事異動も行われ、父さまは大納言から内大臣に昇進し、高彬も衛門佐から近衛の少将に出世した。

高彬は右近少将と呼ばれる身になった。

京もいっきに華やぎ、今、都は毎日がお祭り騒ぎのような賑やかさなのだ。

でも、あたしはちっとも楽しくなく、それどころか日がたつにつれてむしょうに腹がたってきていた。

いくら宮中からのお使者がきたからって、あんなにさっさと帰ることないじゃない。

帝が代わったことがなんだって言うのよ。

あたしとの初夜より仕事を取るなんて。高彬のばか。

でも、そう言うと父さまは

「そういうことを言うものではないですぞ、瑠璃。高彬どのは新帝の覚えもめでたい、若手の中でも出世頭と言われている方じゃ。それが証拠に融のところには、お使者は来なかったではないか。いかに新帝が高彬どのを信頼されているかがわかろうと言うもの。おまえももっとありがたく思いなさい」

将来の婿と思い定めている高彬が、帝に信頼されていると知り、満足そうに頷いて、あたしに説教する。

そうなのだ。

あの日、お使者は貴族全員に行ったわけではなく、父さまみたいに三位以上の公卿と呼ばれる人たちと、後は特別に選ばれた者のところに行ったのだ。

そのなかに従五位上の高彬が入っていたんだから、確かに喜ぶべきことなのかも知れないけど・・・。

でも、今まさに結婚しようとしていたのを邪魔されて、それをどうやって喜べって言うのよ。

あたしは、あ、あ、あんなことまでされていたのよ。

思い出しただけでも、顔が赤らんでしまう。

高彬も高彬よ。

なーにが「ぼくも辛いんだ」よ。

辛けりゃ行かなきゃいいじゃない。

そうこうするうちにあっという間に日がたって、年が明けてしまった。

高彬からは一、二度、ご機嫌伺いの文が来て、忙しくて行けなくてごめんなさいと、しきりに謝ってきたんだけど、あたしは怒りにまかせて、返事もせずにほっぽっておいた。

ある日の昼下がり、これと言ってすることもなく、ぼんやりと庭を眺めていたら、ふいに寝殿のあたりが騒がしくなった。

なんだろう・・・と思っていると、小萩が飛び込んできた。

「姫さま、高彬さまがいらっしゃいましたわ」

「高彬が!?」

「えぇ、今、車宿を出られて、こちらに向かわれていますわ。しばらくお会いしないうちにたいそうご立派になられておりましたわ」

嬉しそうに言う。

ふんっ。何よ、今頃になって。

「・・・・会いたくないわ。持病の瘧(おこり)に苦しんでるからとでも言って、断ってよ」

ぶすっと言うと

「まぁ、何をおっしゃりますか、姫さま。少将さまはお忙しい中を、こうして姫さまに会うために足をお運びくださったのですのよ。さ、すぐにお部屋を整えますので」

いそいそと立ち上がり、他の女房に指図しながらてきぱきと部屋を整えていく。

しばらくすると、何人かの女房に先導されて、高彬がやってきた・・・。



                   <第十六話へ続く>

〜あとがき〜

氷室先生は「仲良しになった」と品良くさらりと書かれていたところを、こんな風に妄想炸裂してアレコレ書いてる自分が、ふと我に返ると恥ずかしい今日この頃です・・・

でも、たくさんの方が訪問して下さっているので、楽しんでいただいていると勝手に解釈して、励みにしてがんばっています。

大好きな氷室先生のジャパネスクのイメージをなるべく崩さないように、かつ高彬にも積極的に(笑)がんばってもらうようなお話を書いていきたいと思います。

読んでいただいてありがとうございました。


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Secre

Unknown

こんばんは
毎日楽しく拝見しています。
どんどん更新されていくお話が待ち遠しいです。
高彬や瑠璃の様子がとっても原作に近くて、なのに原作よりラブラブだし、高彬はいい感じだしで続きが楽しみです。


>柚月さま

コメントありがとうございます。
なるべく原作の雰囲気をこわさないようにしているので、「原作に近くて」と言っていただけると、とても嬉しいです。
これからもいろいろ更新していきますので、よろしくお願いします。
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