社会人編<17>

改札を抜け、混雑するコンコースを歩く。

人がいなけりゃ走ってるところなんだけどねぇ・・

ようやく外に出たところでタクシーに乗り込み、行き先を告げたあたしはシートに身体をうずめ目を瞑った。

ここ一週間の喧騒を思い出すと、疲れがドッと出てくるようだわ。

それもこれも・・・!

───絶対、父さまに文句言ってやるんだから!

窓から見える鴨川を見ながら、あたしはぐっと拳を握り締め、奥歯を噛みしめた。

そう。

あたしは父さまに文句を言うために、2年ぶりに実家のある京都に帰ってきたのである。






─Up to you !─side R <第17話>






「・・・まぁ!瑠璃お嬢さま・・・!」

盛大に鳴らしたインターホンに慌てて駆け付けた女中は、エントランスに立つあたしを見ると、あんぐりと口を開けた。

「・・・何?瑠璃だと?!」

「瑠璃さまが?」

「姉さんだって?」

口々に言いながら、父さまや母さま、融が玄関に集まって来た。

「瑠璃や、来るなら来るで連絡をくれていれば、駅まで長行に迎えに行かせたものを・・」

「まぁ、何をおっしゃいますの。駅までなどと言わず、東京までリムジンでお迎えに上がらせましたのに・・」

「結構よっ」

父さまと母さまが口々に言うのを、あたしはぴしゃりと遮った。

長行と言うのは、我が家の古くからのお抱え運転手である。

「で、どうしたんだよ、姉さん、急に。この間、会った時は帰ってくるなんて言ってなかったじゃないか。・・・まずは上がったら?今、小萩がロールケーキ切ってるよ」

融がのんびりと言い、その言葉が終わらない内にパタパタと言う足音が聞こえ、奥から小萩が現れた。

「瑠璃さま・・・!」

そう言うなりあたしに抱きつくと、おいおいと泣いている。

「お元気そうで、小萩は嬉しゅうございますわ・・!」

「小萩」

あたしに会えてそこまで感激してくれるのは嬉しいんだけど・・・

手にケーキナイフを持ったままなの、気付いているのかしら?

前から小萩はそそっかしいところがあったからねぇ。

人間、2年やそこいらじゃ変わらないのね。ま、それはあたしもそうだけどさ。

まずはリビングに、と家に上がったあたしは、父さまがあれこれと近況を聞きたがるのを全て無視して、ドスンと父さまの前のソファに座った。

リビングには小萩が入れてくれた紅茶の良い匂いが漂っている。

「父さま。『今上鷹男』って人のことなんだけど」

単刀直入に切り出す。

「・・・・」

目が泳ぎ掛けた父さまの視線を捉え

「『今上鷹男』がいるから、あたしが今の会社に入ることを勧めたんでしょ?」

凄みを利かせて声で畳み掛けて言うと、父さまの身体がぶるっと震え

「い、いや・・・そういうわけでは・・・」

ぼそぼそと言うので、じろりと睨んでやると、観念したのか父さまはがっくりと肩を落とした。

「・・・・」

通りでね、おかしいと思ったのよ。

あれほどあたしが就職することに難色を示していた父さまが、ある日、今の会社を勧めてきたこと。

そしてあろうことか、NY支店での配属まで許したこと。

ううん、「許した」どころか、きっと父さまが裏で手を引いていたのに違いないのだわ。

「・・・就職してすぐに、この会社に『今上鷹男』がいることにあたしが気付いたら、すぐに会社を辞めるかもしれないと思って、わざわざNY支店に配属させた。そしてある程度のキャリアが出来て、仕事が面白くなって、そう簡単に辞めないと言う時期に東京支店に戻した。『今上鷹男』に出会わせるために。・・・・そういうことね?」

一語一語、確認するようにゆっくりと言ってやると、父さまはごくりと唾を飲み込み

「・・・うーむ・・・すべてその通りだ」

絞り出すような声で呻いたかと思ったら、一転、陽気な声で

「さすがは瑠璃だ。相変わらず勘がいいなぁ。皆もそう思うだろう。はは、は・・・」

と言ったものの、誰一人、一緒に笑った人はいなかった。

母さまは目を見開き、融は目をぱちくりとさせ、部屋の隅に控えていた小萩は息を飲み込み───

あたしはと言うと、ソファにふんぞり返るとふんっと鼻を鳴らしたのだった。






…To be continued…


(←お礼画像&SS付きです)

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Secre

非公開さま(Sさま)

Sさん、こんにちは。
ご連絡ありがとうございます。
のちほどメールをお送りいたしますね。

非公開さま(Rさま)

Rさん、こんにちは。

はい、瑠璃はお嬢様設定です!
瑠璃は鷹男に見惚れていたわけではないのですよ。名前に聞き覚えがあっただけで。
はてさて、高彬のスペックはいかに?!

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非公開さま(Mさま)

Mさん、こんばんは。

鷹男チーフ、どんな風に引っ掻き回してくれるのか、乞うご期待!
・・と行きたいところですが、基本的にノープランですので行き当たりばったりになりそうです(笑)
真のヒーローは、もっちろん高彬ですよね~!

非公開さま(Kさま)

Kさん、こんばんは。

なるほど~、そういう理由で「黙り込んだ」って言うのも良かったかも!ですね。
何通りにでも話が作れそうなのが楽しいです^^
父上のお茶目さは社会人編でも健在です!

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