***第十四話 十月の逢瀬***

『なんて素敵にジャパネスク〜二次小説』




          注)このお話は連続ものです。
            カテゴリー「二次小説」よりお入りいただき
            第一話からお読みくださいませ。



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*** 第十四話 十月の逢瀬 ***



んふふ。

ふっふっふっふっふ・・・。

抑えよう抑えようと思っても笑いがこみあげてくる。

脇息に寄りかかりぼんやりと庭を眺めてる風を装ってるんだけど、正直、心ここにあらず、よ。

だってだって、今日は高彬との初夜、なんだもん。

「良いこと」の続きかぁ・・・。

べ、別にあたしは「良いこと」の続きを待ち望んでるってわけじゃないのよ。

そりゃ、高彬にイロイロされた時はぼぅとなっちゃったし、ガラにもなく涙なんか流しちゃったりしたけど、でもあたしは「良いこと」そのものを待ってるわけじゃない。

なんて言うか、高彬から感じた思いやりと言うか、愛情と言うか、あぁ、この人は本当にあたしを好いていてくれているんだな・・・って感じたられたことが嬉しかったってわけ。

世の中には愛情もなく、そういうことができる手合いもいるって聞くけど、でも、そこは十六歳の乙女だもの。

殿方からのたくさんの愛を感じながら、初めての時を迎えたいじゃない。

お祖母さまが亡くなって五ヶ月間の服喪に入っていた高彬が、つい先日、喪が明けたのだ。

喪が明けたら結婚しようと約束していたし、もちろん父さまに異存があるわけがなく、すぐに陰陽道で占って、あっという間に結婚の日取りが決まったのよ。

この日のために新しいお衣裳だってあつらえたし、髪だっておとといに洗っておいた。

屏風や髪箱、夜具だってすべて新調してもらったし。

明日の朝には人妻かぁ。

またもや緩みそうになる頬を押さえていると、小萩が夕の御前を運んできた。

いつもは飛びつくんだけど、さすがに今晩のことが気になって箸が進まない。

小萩は

「姫さま、少しでも食べておかなければ。今夜は体力勝負ですもの」

なんて言う。小萩もなー、ほんと、ロコツよ。体力勝負だなんて。

独り者のオボコのくせによく言うわよ。

まぁ、あたしだって似たようなもんだけださ。

そうこうするうちに日が暮れて、初冬のやわやわとした夕闇が部屋の中に入り込んできた。

そろそろお火入れの時刻ね。

小萩が慣れた手つきで灯台に火を入れると、ぽうっと明かりがともり、部屋の中が少しだけ明るくなった。

こうして暗くなってくると、いよいよって気がしてくるわ。

今頃、高彬は何を思っているのかしら。

高彬とはあの日以来、会っていないし、考えるとやっぱりドキドキしてしまう。

何だか今思うと、あの二日間は夢だったんじゃないか・・・なんて気がしてしまうのよ。

右大臣家に潜り込んだり、牛車でドライブしたり、それに、高彬とあんなことやこんなこと・・しちゃったりさ。

でも、でも、今夜は。

高彬は手加減しないなんて言ってたけど、あたしだって逃げも隠れもしないわよ。

と、ほとほとと格子を叩く音がした。

はっと顔を上げると、すばやく小萩が立ち上がって戸を開けに行った。

しばらくすると小萩に案内されて、高彬が入ってきた。

小萩が用意しておいた円座に腰を下ろすと、少し照れくさそうにあたしに合図をする。

何だかまともに高彬と目を合わせられなくて、扇をもてあそんだりしていると

「瑠璃さん」

高彬があたしの名を呼んだ。

顔を上げると、高彬と目が合い、と思ったら高彬は

「二ヶ月・・・たったね」

恥ずかしそうに言う。

「・・・うん」

頷くと、高彬も頷き、そうしてあたしに近づき手を取った。

高彬の直衣から、少し冷たい初冬の空気の匂いがする。

「外は寒いの?」

「うん、少しね。夜風が冷たかった」

「もう十月だもんね」

「瑠璃さん、覚えてる?童の頃、犬の仔が迷い込んだのも、十月だったね」

手を取ったまま言うんだけど、あたしはまったく覚えていない。

高彬ははっきりとは言わないけど、犬の仔が迷い込んだ時って言ったら、つまりは高彬が「瑠璃さんを一人にはしない。ずっとそばにいてあげるから」って求婚をしてくれた時ってことよね。

「そうだったっけ?」

そういうと、高彬はやれやれと肩をすくめて

「ほんと、瑠璃さんは・・・」

「忘れっぽいって言いたいんでしょ。だから、あたしが忘れっぽいんじゃなくて、あんたが・・・」

「何でも覚えすぎてるって言いたいんだろ」

すまして言うもんだから、二人して顔を見合わせて笑ってしまった。

「だから言っただろ。ぼくは瑠璃さんのことは、何でも覚えてるって」

「何でも、なんてうそよ」

「何でも、だよ」

「じゃあ、あたしが裳着を迎えたのはいつ?」

「瑠璃さんが十二歳の時の十一月だ。違う?」

「・・・当たりよ」

「それで、その日、瑠璃さんは、裳着を嫌がって庭に隠れたろ。女房たちに見つかって部屋に連れ戻されたんだ」

「当たってるわ・・・変なことまで知ってんのね」

呆れて言うと

「いや、今のは当てずっぽう」

「ひどい!」

ぶつ真似をすると、高彬は上手によけて、そのままあたしを引き寄せた。

あ、と思ったら、すっぽりと高彬の腕の中で、高彬はあたしの髪に顔をうずめるように身をかがめたようだった。

「ずるいわ、高彬。当てずっぽう言うなんて」

ふいに抱きすくめられた恥ずかしさをごまかすために、大げさに言うと

「でも、当たってたじゃないか」

顔をあげずに、くぐもった声で言い、何でだか深く息を吸い込んだ。

そうして顔をあげ

「瑠璃さんだ」

にっこり笑う。

そのまま、今度は唇を合わせてくる。

長い接吻のあと、ゆっくりと唇を離した時にはもう笑っておらず、その目はどこまでも真剣で、高彬から殿方の匂いが立ち上ってきていた。

い、いよいよ・・・なのかしら。

小萩はとうに下がっている。

高彬があたしを抱き上げて立ち上がった。

几帳を回り込み、寝所へ来るとそっとあたしを下ろし、覆いかぶさるように抱きしめてきた。

「瑠璃さん」

言いながら、髪をなぜる。

「高彬・・・」

「二ヶ月は・・・長かったよ・・・」

「・・・うん」

あたしもそうよ。高彬と会えない二ヶ月は長かったわ。

高彬の頬に触れると、高彬は少し驚いたかのように目を開いて、でも、にっこりと笑った。

あぁ、童の頃と変わらない笑顔だわ。

その笑顔が近づいてきたかと思ったら、あれよあれよという間に接吻されてしまった。

長く深い接吻。

高彬の唇が離れ、覆いかぶさったそのままの姿勢で強く抱きしめてくる。

「瑠璃さん・・・」

耳元で囁いて、あたしの耳に接吻をする。

逃げ出したいような、くすぐったいような感覚に、あたしは小さな声をあげてしまった。

慌てたように高彬が顔をあげる。

この間みたいに、あたしがいやがってるんじゃないかと心配しているみたい。

ううん・・・と、あたしは頭を振り、少し笑ってみせた。大丈夫よ、高彬。

高彬は安心したように頷いて、あたしの首すじに接吻をしてきた。

首すじから喉もとへ・・・

高彬の手が肩からすべり落ち、そのままそっとあたしの胸元を触れていく。

最初、優しかった動きが、だんだん確かなものになってくる。

「・・・大丈夫・・?瑠璃さん」

高彬に言われて気が付いた。知らず知らずに身体に力が入っていたみたい。

だってだって、こんな・・・!

高彬は少し笑って

「だめだって言われても、今日は手加減はしないよ。そういう約束だろ」

あたしの顔を覗き込む。

わ、わかってるわよ。

あたしだって今日は逃げも隠れもしないって決めてるもの。

返事の変わりに微笑むと、高彬が今度はもっと大胆な行動に出てきたので、あたしは固く固く目を閉じたのだった・・・。


               
                   <第十五話に続く>

〜あとがき〜

皆さま、とうに予想なさっていると思いますが、今回も未遂で終わります。←次回予告

何回くらい流れたら、成就させましょうか?(笑)

でも、このままだと、高彬が日本一「お預け」が似合う男になってしまいそうですよね。

もういっそ、次回で成就させちゃおう・・・かな・・・?

いやいや、もうちょっと高彬には耐えてもらわないと・・・(笑)


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