社会人編<14>

あたしのことを「牛のように食べる」と言ったのは誰だったかしら?

弟の融だったか、友だちだったか、それとも夢の中での出来事だったか・・・。

そこらへんの記憶はすっかり忘れてしまっているのだけど、その言葉だけは妙に頭に残っている。

ふいにそんなことを思い出したのは、今まさに自分の大食いさ加減を思い知ったからなわけで・・・

振りかえったあたしの前には、高彬がぽかんと口を開けて立っている。

あたしはゴクンと唾を飲み込んだ。






─Up to you !─side R <第14話>






盛大に鳴ったお腹の音は、この静かな玄関でごまかしようがないくらいに響き渡った。

あぁ、もう!せめて玄関を出てから鳴ってくれれば!

「る、瑠璃さん・・、やっぱりお腹すいてるんじゃ・・・」

高彬が恐る恐ると言った感じの震える声で言い、でもそれは、笑いを堪えているからだと言うことが判るのに時間はかからなかった。

穴があったら入りたい、と言う言葉はこう言う時に使うんだとあたしはつくづく思ったわね。

時間がくるときっちりお腹がすく、この健康な胃袋が恨めしいわ・・・。

「・・・すいてる」

恥ずかしいやら気まずいやらでムッとして言うと、高彬は一拍ののち声を上げて笑った。

でも、それは馬鹿にしてるとかイヤな感じじゃ全然なくて

「だったらほら上がって。何か食べて行きなよ」

なんて嬉しそうに言い、身体をずらして招き入れてくれる。

今、羽織ったばかりのコートを脱ぎソファに掛けると、高彬は早やキッチンに立っており

「手伝うわ」

あたしは腕まくりをしながら隣に立った。

「瑠璃さん、料理出来るの?」

「出来るわよ。レタスちぎったり、卵茹でたり」

「そういうのは料理と言わないんじゃ・・・」

じろりと睨んでやると、高彬は首をすくめ

「じゃあ、これお願いします」

と冷蔵庫からレタスと卵を出しペコリと頭を下げて見せた。

お鍋で卵を茹でながら、2人でちぎったレタスをボウルに入れて洗っていく。

「そういう高彬は料理するの?」

「うーん、時間もないしね」

「時間あったら作るんだ」

「多分、瑠璃さんよりは上手」

「ひどい」

他愛ないおしゃべりをしてるうちに、だんだん楽しくなってくる。

さっき、あたし、何で急に帰りたくなったんだっけ・・・?

高彬が女の子の好みに詳しそうなのが判って、あたしはそれが何だか面白くなくて。

だけど、・・・・どうしてそれが面白くないのかしら?

別に高彬が女の子の好みに詳しかろうと、男の子の好みに詳しかろうと、あたしには関係ないはずなのに。

あれこれ考えてるうちにキッチンタイマーが鳴り、どうやら茹で玉子が出来たみたいだった。

パンも焼き上がり、レタスたっぷりのサラダと半分に切った茹で玉子をテーブルに並べる。

「いただきます!」

両手を合わせ、さっそくこんがりといい色に焼けたトーストに齧りつく。

あぁ、おいしい!

考えてみたら昨夜の歓迎会では喋るのに忙しくてロクに食べていなかったのよ。

そりゃあお腹だってすくはずだわ。

夢中になって食べていたら、ふと視線を感じて顔を上げると、高彬がじっとあたしの顔を見ていた。

その視線が何だか優しげで───

「ついてるよ。ここ」

ここ、と言いながら、高彬は自分の口の脇を指で突いて見せ、その場所を触ってみるとドレッシングが付いている。

慌てて指の先でぬぐうと、高彬はにっこりと笑いながら頷き、あたしはたまらずに俯いた。

どうしてそんな優しい目で見るのよ。

まるで恋人同士みたいじゃない・・・

───恋人同士?!

そう思ったらふいにドキドキして顔を上げられなくなってしまい、本当にあたしは困ってしまうのだった・・・・・。






…To be continued…



さしたる深い考えもなく瑠璃と高彬がキッチンに立つシーンを書いたのですが、読み直した時に

(おお!いずれ「ぶっ契りの仲」になる2人が、仲良くレタスを「ちぎって」いるではないか!)

と1人で笑ってしまいました。

あのシーン読んでそんな風に思った方・・・・なんていませんよね。

もうじき鷹男が出てきます。

「畏れ多くも畏くも」の今上帝の鷹男ではなく、「平成のプレイボーイ」鷹男チーフとしての登場です。


(←お礼画像&SS付きです)

コメントの投稿

Secre

非公開さま(Rさま)

Rさん、こんばんは!
いえいえ、Rさんがニブいだなんて、そんなことはありませんよ。
チームF会員としていつも素晴らしい読みを見せていただいておりますし~^^

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

> 社会人編楽しく読ませてもらっています。

ありがとうございます。
そして「レタスをちぎる」にご賛同いただきありがとうございました(笑)

>アメリカだとレンジでチンしただけでも、立派な料理ですよ。

そうなんですか!
じゃあ、茹で卵を作ったた瑠璃は、立派に料理したって感じなんですね。
私はそこまで知らずに、瑠璃は料理が苦手そうだなって感じで書いたのですが、そういう意味があったのかと思って読んでみると面白いですね^^
コメントありがとうございました。

社会人編楽しく読ませてもらっています。レタスを千切る→契る→ぶっちぎりと深読みした者の一人です(笑)。アメリカだとレンジでチンしただけでも、立派な料理ですよ。要するにちょっとでも自分がキッチンで労力を使って食物を用意すれば、料理なんです。海外で仕事していた瑠璃さんが、レタスを契ったり、卵をゆでたりしただけで料理だと主張するのも当然なのです。そんなことも考えながら、楽しく読ませてもらっています。

非公開さま(Yさま)

Yさん、こんばんは。

「ジャパネスク」も「ざ・ちぇんじ」も本当に読み始めたら一気読みしちゃいますよね!
あれは危険です(笑)家事なんてそっちのけになってしまう・・。
「ざ・ちぇんじ」って同じ平安を舞台にしていても、三人称だったりでかなり印象が違いますよね。
「ざ・ちぇんじ」も本当に好きでした(^^)
こちらこそ今年もよろしくお願いいたします。

非公開さま(Rさま)

Rさん、こんばんは。

原作の鷹男に対しての感想、私もRさんと一緒でした。
私は鷹男に対してキュン♪としたこと、ないんですよ。
馬に乗って駆け付けた時でさえ、ふ~ん。って感じでした。
なぜ駆け付けたのが高彬じゃないんだ!と、そっちの方が関心事項でした(笑)

非公開さま(Kさま)

Kさん、こんばんは。

はい、恋が始まりそうな予感・・・の一番いい時期ですよね。
しかし!
本格的な恋が始まるのはもう少し先となりそうです。
まだまだ2人には試練(?)があるのです。
鷹男への瑠璃の対応、靡くのか、それともばっさり切るのか・・・・
お楽しみに~!(*^_^*)

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます
プロフィール

瑞月

Author:瑞月
瑞月(みずき)です。

ランキングバナー

にほんブログ村

ランキングに参加しています。
楽しんでいただけましたら
クリックで応援をお願い致します。
1日1クリック有効です。
初めにお読みください
**当ブログの簡単な説明です**
当ブログは「なんて素敵にジャパネスク」の二次小説を掲載しております。 二次小説と言う言葉を知らない方や苦手な方は閲覧ご注意ください。 また読後のクレームはお受けできません。 「ごあいさつ<最初にお読みください>」も合わせてご一読下さい。
カテゴリ
別館
乳姉妹ブログ
日記ブログ
掲示板
なんて素敵にサイト様 
最新記事
ご訪問ありがとう(H23.11.28-)
**オンラインカウンター**
現在の閲覧者数:
コメントありがとうございます
お礼SSや「他己紹介」があります。
web拍手 by FC2
** あれこれ投票所 **
お好きなジャンルをお選びください。 投票は何度でも可能です。
*** あれこれ投票所2 ***
メールフォーム(ご用の方はこちらから)

名前:
メール:
件名:
本文:

カレンダー
06 | 2017/07 | 08
- - - - - - 1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30 31 - - - - -
月別アーカイブ