社会人編<10>

翌朝、カーテンから漏れる明るさで目を覚ました。

いつもと違う天井に、一瞬、事態が把握出来ず、でもすぐにリビングのソファで寝ていたことを思い出す。

壁に掛かった時計の針は8時半を指していた。

シャワーを浴びて横になり、最後に時計を見たのが1時半。

7時間も寝ていたのか。今日が土曜日で良かった・・・

ぼくは物音を立てないように慎重に身体を起こした。

何しろ隣の寝室では瑠璃さんが寝ているのだ。

目を覚ました瑠璃さんが一体どんな反応を見せるのか、どうにも落ち着かない。

いや、恐れることは何もないのだ。ぼくは何一つ悪いことをしていないのだから。

きちんと順を追って説明すれば・・・・

自分を奮い立たせるように言い聞かせ立ち上がったところで、寝室で何かが倒れるような大きな物音がした。






─Up to you !─<第10話>







慌ててドアを開けると、ベッドの下、うずくまる瑠璃さんの姿があった。

どうやらベッドから降りるときに、たまたま置いてあった自分のカバンを踏んでしまい、バランスを崩して転んでしまったらしい。

「・・大丈夫?」

部屋に入っていくと

「なんで・・・あんたがいるのよ!」

ぼくを見て驚愕の色を浮かべた瑠璃さんが叫んだ。

「なんでって・・。ここ、ぼくの・・部屋・・なんだけど・・」

先ほどの決意もどこへやら、あまりの瑠璃さんの剣幕にしどろもどろになってしまう。

こう言う状況の時、男は不利だ。

瑠璃さんは部屋を一瞥し、散乱した服に気が付くとカッと目を見開いた。

「あんた、まさか・・・!」

「ち、違うよ。誤解しないでくれ。何もしていない。無実だ」

反射的に両手を上に上げ、ホールドアップの姿勢を取ってしまったところが我ながら情けない。

「だって、この服!」

「る、瑠璃さんが自分で脱いだんだよ」

瑠璃さんは何かを確かめるように自分の身体のあちこちを触り、首元に手が行ったところで、またしても目を見開いた。

「ブラウスのボタンが外されてるじゃない!・・・このスケベ!」

叫ぶなり枕元にあった目覚まし時計をむんずと掴むとぼくめがけて投げつけてきた。

ぎりぎりかわすと、目覚まし時計は壁にぶつかり大きな音をたてて床に転がった。

「な、何するんだよ、瑠璃さん。危ないじゃないか」

「あんたが悪いのよ!あたしが寝てるのをいいことに・・」

「誤解だ。ボタンも自分で外したんだ。・・・って瑠璃さん、・・・本当に何も覚えてないの?」

恐る恐る聞いてみると、ややしばらくムッとした顔で黙り込んでいた瑠璃さんはやがてコクリと頷いた。

「・・・・」

ぼくは大きく息をついた。

一体、どこからの記憶がないものなのか・・

いつまでも寝室にいるのもどうかと思い、とりあえずは瑠璃さんをリビングへと連れ出しイスに座らせる。

今のこのとんでもない状況とは裏腹に、朝日に溢れたリビングは信じられないくらいに清々しかった。

カーテンから入り込む冬の朝の陽ざし、窓越しの澄んだ青空。

テーブルで向き合う男と女・・・。

新婚生活の朝のヒトコマと言っても通るくらいだろう。

だけど現実はそうではなくて、ぼくはこれから無実の罪を着せられた被疑者よろしく身の潔白を証明しなければならないのだった。

向いに座りながら、さてどこから話そうかと思案していると

「ねぇ高彬。シャワー借りてもいい?」

こともなげに瑠璃さんが言い放った。

「シャワー・・・」

2人きりのこの密室空間で、シャワー・・・・

一難去ってまた一難。

シャワー室に消えて行く後姿を見送りながら、瑠璃さんの無防備さに眩暈を感じ、ぼくは思わず眉間を押さえたのだった。





…To be continued…


(←お礼画像&SS付きです)

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Secre

非公開さま(Rさま)

Rさん、こんばんは。

既成事実の有無!
うーん、確かに女性側の方が自覚しやすそうではありますよねぇ。
なかなか奥深いテーマではありますね(笑)

非公開さま(Mさま)

高彬、振り回されてますよね~。2人の力関係は、時代も出会い方も関係ないのでしょうね。
はてさて、瑠璃の真意はいかに───?!

非公開さま(Kさま)

Kさん、こんばんは。

風邪をひかれていたとのこと、お加減はいかがですか?
年末って疲れが出ますよね・・・(><)
お正月までにはしっかり治ってると良いですね!

シャワーの後はもちろん「髪濡れ」ですよねぇ。ふふふ。これは鉄板!

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