社会人編<8>

空になる前にビールを注がれ、更にはカクテルも注文され、それらをニコニコと飲む瑠璃さんをぼくは横目で見た。

ほんのりと頬は上気し、気のせいかいつもよりも目がキラキラしているように見える。

「瑠璃さん、お酒強いの?」

あまりのハイペースに気になってそっと聞くと

「まぁ、そこそこ、ね」

瑠璃さんはふふんと笑い、片目を瞑ってみせた。

至近距離で形の良い目がパチンと閉じられて───ドキドキしてしまった。






─Up to you !─<第8話>






歓迎会は瑠璃さんを囲み大盛り上がりのうちにお開きとなり、店の外に出て来たぼくたち一行は、駅に向かい歩き始めた。

数歩行ったところで

「あの~、すみません。まだ仕事が残ってるんで、あたしたちちょっと社に戻ります」

隣を歩いていた瑠璃さんが、突然皆に向って言った。

「今から?」

驚いたように皆が瑠璃さんを見て立ち止まる。

残ってる仕事?いや、全部、片付けてきたじゃないか・・・

そう言おうと口を開きかけると

「ね、高彬」

瑠璃さんに同意を求められてしまった。

「あ・・う、うん」

わけが判らないながらも、取りあえず口裏を合わせると

「そっか、頑張ってね」

「また休み明けに」

「お疲れ!」

口々に皆が言い、そのままぞろぞろと歩き始めた。

「お疲れ様でした~」

瑠璃さんは皆の後姿に手を振り見送ると、くるりと背を向け歩き出し、角を曲がったところでふいにしゃがみ込んだ。

「ど、どうしたのさ、瑠璃さん」

「・・・・」

慌てて近寄りしゃがんで聞いてみたものの返事はなく、顔を覗き込もうにも両腕で覆っているのでそれも出来ない。

うー、だか、あー、だか聞こえた気がして耳を近づけると

「・・・気持ち・・・悪い・・。もうダメ・・・限界・・・」

瑠璃さんの呻き声が聞こえてきた。

「・・・お酒、強いなんてウソだろ」

もしや、と思い聞いてみると、数拍の間のあとに瑠璃さんはコクンと頷き、ぼくはため息をついた。

「どうしてそんなことで見栄張るんだよ」

「・・・見栄張ったわけじゃないわよ。あたしの歓迎会だから断っちゃ悪いと思って・・・」

「そういうのは断っていいんだよ。飲めないくせに無理に飲んだりしたら下手したら・・・」

「・・ごめん・・・そういう話、後に・・してくれ・・る・・・」

息も絶え絶えに言われ、確かに言われてみればその通りで、今は瑠璃さんの介抱が先なのだった。

道の真ん中でしゃがみこんでいる瑠璃さんを街路樹に寄りかからせ、その間にタクシーをつかまえる。

「瑠璃さん、タクシー来たよ。・・・住所、言えるかい?」

後部座席に収まった瑠璃さんはコクリと頷き、一瞬、迷ったけど、一緒に乗り込んだ。

タクシーはすぐに瑠璃さんが告げた住所に向い走り出す。

案外、ぼくの家と近いことに驚きつつ、ふとあることに気が付いた。

「瑠璃さん、やり残した仕事って・・・」

「・・ないわよ、そんなの」

目を瞑ったまま、苦しげに瑠璃さんが言い

「え。でもさっきあるって・・・」

「・・・」

それきり返事はなく、頭の中で思考が一巡したところで、ぼくは思わず口元を手で覆ってしまった。

これは・・・。

頼られた、と言うことなのだろうか。

いや、それはあまりに都合のいい考えのような気もするしなぁ・・・

あれこれ考えている間に瀟洒な造りのマンションの前でタクシーが停まり

「ここ?」

確認すると、瑠璃さんは薄目を開け外を見ると頷いた。

エントランスのちょっとしたスペースには応接セットが何組か置かれており、瑠璃さんはそのイスに倒れ込むようにして身を沈ませると、また目を閉じている。

「瑠璃さん。もうちょっと頑張って。ほら、鍵、出して」

オートロックを開けようと鍵を催促すると、瑠璃さんは黙ってカバンを指差した。

鍵を探して開けてくれ、と言うことだろうか。

「じゃあカバンの中、見るよ。いいね」

念のため聞き、瑠璃さんが頷くのを見てから、カバンの中を探ったのだけど───

これが、いくら探してもないのだ、鍵が。

「瑠璃さん、鍵、ないけど」

「・・・・」

「瑠璃さん?」

気付けば瑠璃さんはすっかり眠り込んでおり、スースーと寝息までたてているのだった。

「・・・・・」

ここで朝まで過ごしたら間違いなく風邪をひくだろうし、いや、そもそも、こんなところに瑠璃さんを残して立ち去ることなんて出来るわけがない。

となると、ぼくの部屋に連れて帰るしかないわけで・・・・





…To be continued…


(←お礼画像&SS付きです)

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Secre

非公開さま(Mさま)

Mさん!
最初の1行目を読んだ時、Mさんの身に何か危険なことでも起ったのかと思ってしまいましたよ(笑)
安心して下さい、私も同じ症状ですから~。

今晩、またアップしますので!
時間があったら読んでくださいね。
そして、もちろん行きつく先はハッピーエンドですよ~。

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非公開さま(Nさま)

Nさん、こんにちは。

はい、酔ったのは瑠璃の方でした。
高彬の部屋は片付いてそうですよね。物が少なさそうなイメージ。
すでにかなり瑠璃に惹かれている高彬。
一方、瑠璃はどうなんでしょう?
もうじきまた瑠璃目線の話を書きますね!

大掃除、私もがんばってますよ~。
セスキと重層とクエン酸を使い分けて、色んなところを毎日少しずつ進めています(*^_^*)
セスキ、かなりいいですよ!

非公開さま(Mさま)

Mさん、こんにちは。

高彬をお持ち帰り・・・したいですよね~(笑)
あ、でも欲を言ったらお持ち帰りされる方がいいかも!
高彬、脇が甘すぎですよね。
そこまでの自覚はないのでしょうけど、もうぞっこんなんでしょうね、瑠璃に。
そしてこれまた無自覚に高彬を振り回す瑠璃。恐るべし!

非公開さま(Rさま)

はい。お持ち帰りです。
果たして高彬はオオカミになっちゃうのか、それともヒツジでいられるのか・・・。
お楽しみに!
年内はなるべくたくさん更新を目指しますので、ぜひお立ち寄りくださいね~。

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