社会人編<7>

憮然と立ち尽くすぼくの隣でさんざん笑った瑠璃さんは

「あー、おっかしい」

と最後に目尻を指で拭いながら言ったところで、ようやく笑いが収まったようだった。

「何がそんなにおかしいんだよ」

わけも判らずに笑われていると言う不快感でムッとして言うと

「だって、ふしだらなんて言うだもの。そんな言葉真顔で使う人、初めて見たわよ」

収まった笑いの波がやってきたのか、瑠璃さんは言いながらまたしても吹きだした。






─Up to you !─<第7話>






「それにねぇ、ふしだら、なんて心外だわ。だってあれはあたしのおと・・・・・きゃっ!」

言いかけた言葉は短い叫び声で突然途切れてしまい、何事かと思ったら、瑠璃さんの脇をかなりのスピードで自転車が通ったのだった。

「こらー!危ないじゃな-い!」

走り去る自転車に向い瑠璃さんは声を張り上げ、だからと言って自転車が引き返して謝るなんてことは当然なくてそのまま遠ざかって行く。

「まったく、もうっ」

しばらくは自転車の消えた方を睨んでいた瑠璃さんは、ふと我に返ったように「いけない、急がなきゃ」と呟くと、今度は走り出した。

後を追うように慌てて走りながら、ぼくは嘆息する。

慌ただしいと言うのか、マイペースと言うのか。

・・・さっきから振り回されっぱなしじゃないか。

駅にほど近いビルに着いた時には、さすがに2人とも息が上がっていた。

息を整えながら螺旋階段で地下一階に下りる瑠璃さんは、よろけないためなのか手すりをつかんでいて、一瞬

(ぼくの腕につかまってくれたらいいのに)

などと思ってしまい、自分のその考えにギョッとしてしまった。

さっき瑠璃さんが言いかけた言葉。

───あたしのおと・・

あれはやっぱり「あたしの男」なんだろうな。

恋人を部屋に泊めるのだからふしだらなんて心外だ、と言いたかったに違いないのだ。

「・・・・・」

瑠璃さんの後姿を見ながら、ぼくは自分に言い聞かせる。

すでに決まった男がいる人を好きになるのはしんどいぞ。

引き返すなら今のうちで───

「・・・あ、来た来た。藤原さん、こっちよ~」

ガラス扉を開けた途端、店内の喧騒と席から手招きをする同僚の声が飛び込んできた。

テーブル中央あたりに席が2つ空けられていて、ぼくたちはそこに並んで座ることになった。

「お疲れ様」

「遅れちゃってすみません」

「しょうがないわよ、急の仕事が入ったんだから」

「そういうこと。急の仕事を頼む方が悪い。藤原さんのせいじゃないさ。さ、乾杯と行こう」

皆が瑠璃さんを囲むように話し、瑠璃さんは一気に座の主役と言う感じで、その雰囲気にぼくは心中舌を巻いた。

瑠璃さんが異動してきてまだ2週間だけれど、部署内で、と言うよりも東京支店内で、瑠璃さんはすっかり人気者なのだ。

瑠璃さんには人の心を掴む何かがあるのかも知れない。

「藤原さん」

「はい」

さっき廊下で話しかけてきた先輩がぼくたちの正面に座っており、名前を呼ばれて2人同時に返事をすると

「あ、ごめんなさい。あなたの方よ」

瑠璃さんのことを手で指し示した。

「紛らわしいから、瑠璃ちゃんって呼んでもいいかしら?」

「はい、構いませんよ」

瑠璃さんはにっこりと頷き、ぼくは(ちゃん付けも、女からならいいんだ)なんて思っていた。

「さっそくだけどね、瑠璃ちゃん。秘書課のチーフが目を付けていたわよ、瑠璃ちゃんのこと。ぜひ秘書課に欲しい人材だって」

「秘書課・・・」

瑠璃さんは呟き、ちらりとぼくの方を見たけど、ぼくは素知らぬ風を装った。

秘書課のチーフと聞き、正直、心穏やかではなかったけれど。

「秘書課のチーフのこと、瑠璃ちゃんは知ってる?」

「いえ、まだ」

「鷹男チーフって言うのだけれど、実は私の遠縁なのよ」

「遠縁?藤宮先輩の?」

瑠璃さんが聞き返し、ぼくも初耳のことだったので、前の席でおっとりと微笑む先輩を見た。





…To be continued…


(←お礼画像&SS付きです)

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Secre

非公開さま(Mさま)

Mさん、こんばんは。

はい、「あたしの男」なんて普通は言いませんよね(笑)
どこの非行少女だよ!って感じです。
可哀そうに、きっと高彬の言語感覚は少しずれているのでしょう・・(笑)
テンポよく進めていきたいと思っていますので、お付き合いくださ~い。

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ありちゃんさま

ありちゃんさん、こんばんは!

>鷹男に藤宮様まで!

はい。せっかくなのでこの先、守弥や小萩にも出てもらおうと思ってます(^_-)-☆
守弥の役どころ、考え中です~。

「おとこ」と勝手に勘違いした高彬。
楽しいですよね(笑)

非公開さま(Kさま)

Kさん、こんばんは。

>鷹男チーフ!?そこまでいじめる準備万端ですか!?

はい、用意周到です(笑)
でもですね、鷹男になんか瑠璃は靡きませんから!
勝手に高彬がアワアワするだけなんです。
そういう高彬を見て楽しむと言うのがこの作品の趣旨(?)なんです。

酔っぱらうのは瑠璃か?高彬か・・?
私の脳内ではもう決まっております!ふふふ・・。

>そして、忙しい年末に新作は届くのでしょうか!?

はい、可能な限りお届けいたしますのでお付き合いいただければと思います。

非公開さま(Rさま)

Rさん、こんばんは。

はい、Rさんのご助言通り(笑)高彬いたぶり計画続行中です。
でも考えてみたら原作でだって耐えて耐えた耐え抜いた高彬のことなので、きっと「お預け」への耐性ができていると思われます。
これくらいへっちゃらですよ!(←ひどい)

おお!

鷹男に藤宮様まで!

瑞月さん、こんにちは。
鷹男、秘書課のチーフでしたか。ww
やり手のイケメンチーフ、良いですねぇ。
そして、美人の先輩。
ワクワクします、楽しいですね。

にしても、高彬。「おとこ」と勘違いしちゃいましたか。
希望的観測で「おとうと」と思えばいいのに・・・そうは思わなかったかぁ、そうかぁ。
・・・ああ、楽しい。(←意地悪 ww)

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