***第十一話 あけぼのの白梅院***

『なんて素敵にジャパネスク〜二次小説』




          注)このお話は連続ものです。
            カテゴリー「二次小説」よりお入りいただき
            第一話からお読みくださいませ。



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*** 第十一話 あけぼのの白梅院 ***




高彬の動作はますます熱を帯びてきて、高彬の吐く息の熱さを真近に感じて、あたしは逃れようと動くのをやめた。

高彬・・・。

高彬がふと顔を上げたので、あたしたちは目が合い、しばらくの間、見つめあった。

あたしの髪を何度もなぜながら、そうして時折、額や頬に接吻をし、にこっと笑う。

腕を伸ばして首に抱きつくと、高彬の腕にますます力が入った。

「・・・いいの?」

優しく小さな声で問う高彬に、あたしはコクンと頷いた。

思いがけない展開だけど、こんな風に突然っていうのも、あたしたちらしいかもしれない。

さっきの按察使の言葉が甦る。

『結婚は好きな方となさるのが一番ですもの』

そうよ。お歌がなくたって、お衣裳がなくたって、あたしは高彬が好きなんだもん。

接吻をすると、こんなに幸せなんだもん。

高彬だって・・・そうよね。

高彬の手が袿にかかり、するりと脱がされてしまった。

高彬の指が、唇が、優しくあたしの身体をつたっていく。

あぁ、いよいよだわ。

あたしは目を閉じて、すべてを高彬にゆだね・・・・

と、その時、妻戸を叩く音がした。

一瞬、高彬の動きが止まったんだけど、その後、何の音もしないのでまた動き出した。

すると、また妻戸を叩く音がする。

「何」

あからさまに不機嫌そうな声で高彬が返事をすると

「若君。北の方さまがお話があると言うことなのですが・・・」

「守弥か。疲れてるんだ。今日はもう休む。母上には明日、お伺いすると伝えてくれ」

「ですが若君。若君は本日、昼間にも一度、北の方さまをお待たせしております。北の方さまは大層、お怒りのようでございます」

そういえば、そうね。昼間、高彬は母君のとこに行く途中で、あたしとばったり会っちゃったんだもん。

「・・・わかった」

高彬は諦めたようにむっくりと起き上がり

「すぐに戻るから・・・」

あたしの耳元でささやくと、部屋を出て行った。



            ************************************************




目が覚めると見慣れない天井があった。

(ここはどこ?あたしは瑠璃だけど)と思ったのは一瞬で、そういえば、ここは右大臣邸の高彬の部屋なのよね。

隣には高彬がまだ寝ている。

ふと気が付いたら、あたしと高彬はしっかりと手をつないでいるではないの。

やだ、高彬ったら・・・。

昨夜は高彬とすっかりいい雰囲気で盛り上がっちゃって、それが途中で守弥が高彬を呼びにきて・・・・

あたしは高彬が戻るのを待ってたんだけど、ものすごい睡魔がやってきて、それでそのまま寝ちゃったんだわ。

女房のふりして一日過ごしたし、いろんなことがあってさすがに疲れていたみたい。

その後のことはまるで記憶にないんだけど、まさか、高彬、寝ているあたしを・・・なんて期待、じゃなくって心配になったんだけど、良かった、単袴姿のままだわ。

あたしがもぞもぞと上体を起こしていると、気配で高彬が目を覚ましたみたいだった。

「おはよう」

照れくさくてそっぽを向いて言うと、高彬はクスっと笑って

「おはよう、瑠璃さん」

と言い、軽く額に接吻をした。

「昨夜は瑠璃さん、よく眠ってたね」

からかうようでもあり、恨むようでもある口ぶりである。

「お、起こしてくれれば良かったのに」

「起こしたよ。でも、起きなかった」

「起こし方が悪いのよ。ちゃんと起こしてくれたら、起きたわよ」

「よく言うよ。鼻つまんでも起きなかったくせに」

「うそ」

「ほんと」

そう言って、あたしの鼻をつまんだので、二人して笑ってしまった。

そうして、どちらからともなく身体を寄せ合い接吻をする。

うぅん、昨夜の続きが始まっちゃうのかな。

耳を澄ませても、早朝の白梅院は邸中が寝静まっているように静かで、遠く鳥のさえずりが聞こえてくるだけである。

高彬はあたしを抱きかかえたまま身体を横たえたので、あたしも一緒に倒れこんだ。

「瑠璃さん」

「高彬」

高彬は、くるりと身体の向きを変えた。

小袖姿のはだけた胸元から、立ち上るような殿方の匂いを感じて、あたしは固く目を閉じてしまった。

一つ年下のガキだ、ガキだと馬鹿にしていたのに、いつのまにか、すっかり立派な殿方になってしまっていたのね。

長い接吻のあと、目を開けると、熱っぽい潤んだような目をした高彬の顔があった。

童の頃から見慣れた顔のはずなのに、なんだか違う。

高彬ってこんなに男っぽい顔だったっけ。こんなに骨ばった身体をしていたかしら・・・。

知らず知らずに高彬の首もとのあたりをなぞっていたあたしの手を、高彬は強くつかむと、覆いかぶさるようにして深い接吻をしてきた。

深い深い、それはかみつくような接吻だった。

やがて高彬の唇は、あたしの唇を離れ、首筋を喉元を、優しくなぞっていく。

高彬の指があたしの胸の合わせにかかり、開こうとする。

少しだけ乱暴なそのしぐさに、あたしはふいに恥ずかしくなり両手で顔を覆ってしまった。

「瑠璃さん・・・・」

何かを言いかけた高彬の声にかぶさるようにして

「高彬さま、お目覚めでいらっしゃいますか」

外で女房の声がした。たぶん、大江だわ。

高彬はムッとしたような顔をして

「何だよ。まだ寝てるよ」

とぶっきらぼうに返事をした。

「お車の用意ができましたわ」

「車?」

「はい、昨晩、高彬さまは、朝一番で出かけるから車の用意をするようにと、お申しつけでしたわ」

「・・・ああ、そうだっけ。そういやそんなこと、言ったよね」

気の抜けた声で言うと、身体を起こし、ブツブツと

「なんでこのタイミングなんだ・・・。ちくしょう。兄妹そろって邪魔しやがって・・・」

悔しそうに呟いた。



           *****************************************




高彬は一刻も早くあたしを三条邸に戻そうと考えたらしく、融の迎えを待たずに、自分で送ろうと思ったみたいだった。

人目につかないよう、東の対屋の庭先まで車が寄せてある。

身支度を整えていると、按察使がやってきて部屋の隅で手をついた。

びっくりして

「起きて大丈夫なの。まだ横になっていたほうが良いわ」

近づくと、按察使はしっかりとした口調で

「もうだいぶ楽になりましたわ。瑠璃姫さま、昨夜は本当にありがとうございました。瑠璃姫さまのおかげで命拾いをしましたわ」

そういって深々と頭を下げる。そうして高彬の方を向き直り

「高彬さま。高彬さまのご結婚のお相手の姫さまは、按察使が思っていた通りのお方でしたわ。お可愛いくてお優しくて。ほんにようございましたわね」

やはりそこは育ての親、声音にも言い方にも我が子に話すような響きがある。

高彬は正面切ってあたしを褒められたのが恥ずかしいのか、うっすらと顔を赤らめている。

大江と按察使の見送りを受けて、あたしと高彬は車に乗り込み、やがて車はゆっくりと動き出し、白梅院を出発した。


                 
                  <第十二話に続く>


〜あとがき〜

『ここはどこ。あたしは瑠璃。死んでたまるか』

帥の宮に川に落とされた瑠璃が思う言葉です。

小説版ではおなじみの言葉ですが、漫画ではここのあたりがざっくりカットされているんですよね。

なんだか瑠璃のど根性が現れていて、印象に残る言葉です。

高彬、やっぱり「お預け」になっちゃいましたね。

あのタイミングでのお預けはキツそうだ(笑)

読んでいただきありがとうございました。


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