*** 筒井筒のお約束をもう一度 ~秋の宵夢~最終話<高彬・初夜編> ***

『なんて素敵にジャパネスク〜二次小説』

 

           ※このお話は初夜編(完結済み)の高彬サイドの話です。
                        







***  筒井筒のお約束をもう一度~秋の宵夢~最終話 <高彬・初夜編> ***  









「何する気って・・・」

かき寄せた単で身体を隠し目を見開いている瑠璃さんに向かい、ぼくは呆然と呟いた。

何する気って・・・つまり、その・・・何と言うか、それこそが最終目的と言うか、目指す着地点と言うか・・・

結婚すると言うことは、ありていに言ってしまえば、ここが<未>か<既>かが大きな分かれ目なわけで、今まで瑠璃さんとは何度も「結婚したいね」「もうじき結婚だね」と話していたけれど、そいえば瑠璃さんは何をもってして<結婚>と考えていたのだろうか。

今の反応からして、まさかとは思うけど・・・。

「瑠璃さん」

さっき脱ぎ捨てた単を掴むと肩に掛け、瑠璃さんに近づく。

「まさかと思うけどさ・・・・瑠璃さんは、結婚するってどういうことだと思っていたの」

「え、どういうって・・・」

瑠璃さんの目が自信なさそうに瞬かれた。

「面と向かって聞かれると・・・困っちゃうんだけど・・な。・・・はは・・」

「・・・・・」

この様子からして・・・

「まさか・・・瑠璃さん、知らないの?」

顔を覗きこむと

「く、詳しくは・・・・知ら・・・ない・・・かも・・・」

「・・・・」

やはり、か・・・。

単を握り締めながら瑠璃さんが言い、ぼくは心の中でがっくりと肩を落としてしまった。

ここは四の五の言わせずに強行するか、きちんと手順を説明してからコトに及ぶか、ぼくの選ぶ道は二つに一つなわけで、そうしてぼくの事情を鑑みれば、強行したい気持ちは山々だけれど・・・。

強行か、説明か。うーむ。

かなりぼくも切迫した状況だしなぁ・・・。

だけど、瑠璃さんが驚きすぎてヘソ曲げて、次回からお預けなんてことになったら、目も当てられないし。

それにこういうのは最初が肝心だと聞くしな。

ちらりと瑠璃さんを見ると、緊張した面持ちで微動だにせずぼくを見ている。

「・・・・・・」

仕方ない。ここは納得しておいてもらった方がいいだろう。急がば回れ、だ。

「惚れ抜いた人と結婚すると後々苦労するぞ」と重行に言われたけれど、まさかこういう形で<苦労>するとは思ってもいなかった。

瑠璃さんの隣に座り、しばし考えをまとめる。

どうしたらロコツな表現を避け、かつ的確に伝えられるだろう・・・。

「あのさ、瑠璃さん」

隣でかすかに身じろぎする気配があった。

「瑠璃さんはさ、御ややってどうして出来るかを知ってるかい」

「はぁ・・御やや・・」

思わぬ言葉だったのか、気の抜けた声で瑠璃さんが言い

「そう、御ややだ」

ぼくは大きく頷いた。

「もしかして、出雲の神さまが授けて下さる・・・と思ってる?」

「そんなことは思ってないわ。馬鹿にしないでよ」

瞬時に瑠璃さんが答え、間髪入れずにぼくは畳み掛けた。

「じゃあ、どう思ってるの」

ここが肝心なところだ。

「だから・・・女の人の身体には御ややの卵があって、男の人の身体にも御ややの卵があるのよ」

「うん、そうだね。それで?」

「それで・・・だから、その卵が合わさって、御ややに・・・なるのよ」

「うん、そうだ。じゃあ、その卵はどうやって合わさるの?」

「だから、何かの方法で女の人の身体に入るの・・・よ・・・」

だんだんと口調があやふやなものになり、一拍おいて、瑠璃さんが悲鳴に近い声を上げた。

「い、入れるのー?!」

驚愕の表情を浮かべている。

「そう、挿れるんだよ」

結局、ロコツな表現になってしまったけれど、話してる内容が内容だけに仕方ないだろう。

「入れるって、入れるって・・・そんなの無理よ・・・だって、だって・・・」

「それが大丈夫なんだよ」

いや、ぼくも経験がないけれど、大丈夫なはずだし、百聞は一見にしかずと言うし、大丈夫かどうかは実践して二人で証明するしかないのだった。

「とにかく瑠璃さん、ぼくにまかせて」

瑠璃さんの手を取り言うと、瑠璃さんはごくりと唾を飲み込むとこくりと頷いた。

焦る気持ちを抑えて、もう一度、瑠璃さんの身体を横たえる。

瑠璃さんの反応は気に掛かるけど、正直、ぼくも限界が近づいていて、だけどなるべくゆっくりと驚かせないように身体を進めて行く。

ぼくが身体を進めれば、その分、瑠璃さんの身体が逃げて行き、なかなか思うように行かない。

「瑠璃さん、動かないで・・・」

「う、動いてるつもりはないんだけど・・・身体が勝手に・・・」

ぼくの下で言い訳するように言い、泣きべそでもかきそうな顔だった。

「・・・・・」

こうなったら、ある程度、強引に進めるしかないだろう。

ぼくも、もう・・・ダメだ。

瑠璃さんが動けないように押さえ込み、脚を開かせて身体を進める。

押し開くような感覚があり、瑠璃さんが息を飲む気配が伝わってきた。

「・・・いや・・・高彬・・・痛い・・・」

イヤイヤするように瑠璃さんが頭を振り、逃げようともがいている。

「ごめん、瑠璃さん・・・。少しだけ、我慢して」

「いや・・お願い、やめて・・」

泣きそうな声が聞こえ、だけど、可哀相だけど瑠璃さんのお願いを聞いてあげるわけには行かないのだった。

一気に身体を進めると、瑠璃さんは眉根に皺を寄せ、何かの衝撃に耐えるかのように目を閉じている。

瑠璃さんの中は信じられないくらいに気持ち良かった。

世の中にこれほどの強い感覚があるかと思うほどの気持ち良さで、身体中の神経が一点に集中しているようだった。

身震いと同時に抑えがたい衝動が湧き上がってくる。

「瑠璃さん・・」

なけなしの理性をかき集め、瑠璃さんに接吻をする。

繋がったまま接吻するたび、背中をぞくりと震え、本当にもう限界だった。

「瑠璃さん、動くよ・・・」

そう言ったか言わないか、定かではないけれど、ぼくは身体を動かし始めた。

「・・・・・い・・や・・!」

動きだした途端に瑠璃さんが顔をゆがめ、その顔があまりに辛そうで

「・・・痛い?」

ぼくは尋ねた。

「・・・ううん・・・・平気よ・・・」

「・・・・・」

とてものこと平気そうには見えず、強がりを言ってくれてることはすぐに判ったけれど、瑠璃さんの身体を慮る余裕はこれっぽちもなかった。

ごめん、瑠璃さん、我慢してもうらうしかないんだ・・・。

心の中で身勝手な謝りの言葉を口にして、欲望の赴くままに動いた。

「瑠璃さんっ・・」

その瞬間、強烈な快感が身体を貫いていき、ぼくはそのまま瑠璃さんの身体に倒れこんでいた。

完全に息が上がっている。

オトコとして馴染みのある快感だけれど、でも、比べ物にならないほどのもので、ぼくはしばし言葉を失ってしまった。

「瑠璃さん・・・」

ようやく息が整ったところで、顔を上げて瑠璃さんの顔を見ると、気のせいか瑠璃さんの目が潤んでいるように見える。

「高彬・・・」

瑠璃さんがそっと腕を回してくれて、その力は弱々しかったけれど、充分に幸せな気持ちだった。

「瑠璃さん」

目があって接吻をする。

何度かの接吻の後、そっと身体を離すと、瑠璃さんが全身で息を付いた。

瑠璃さんの肩を抱きしばらくは天井を眺めながら、瑠璃さんを自分のものに出来たという実感がじわじわと沸いてきてぼくは感無量だった。

「瑠璃さん」

顔を覗き込むと、目をそらされてしまい

「どうしたのさ、瑠璃さん」

頬をつつくと

「結婚するって・・・・大変なのね」

しみじみと瑠璃さんが言い、ぼくは思わず吹き出してしまった。

「そうかな」

「そうよ。あんなこと・・・するなんて」

うーん、瑠璃さんにして見たら確かにそうかもな。

「とりあえず、少し休むといいよ」

「・・・うん」

いつになく素直に瑠璃さんが頷き、次の瞬間、ぎょっとしたように身体を固まらせた。

「やだっ、怪我・・・?」

瑠璃さんが見ていたものは単に付いた赤いシミで、ぼくはすぐにそれが何かが判ったのだけれど、すっかり動転したように瑠璃さんは「血が・・血が・・」と顔を引きつらせている。

「瑠璃さん、怪我じゃないよ。その・・・初めての時、女の人は・・・そうなる・・・らしいからさ・・・」

痛い思いをさせた張本人としては何ともバツの悪い気がされるけれど、はっきり教えておいた方が良いと思い伝えると、放心したような顔をしていた瑠璃さんはやがてポロポロと泣きだし、ぼくはびっくりしてしまった。

「どうしたの、瑠璃さん」

「・・・・すごく痛かったんだから」

「瑠璃さん・・・・」

「高彬のせいなんだからね。高彬が、いけないんだからね・・。びっくりして、痛くて・・」

「ごめん、ごめんよ、瑠璃さん」

抱き寄せ謝りながら、安堵感が広がっていく。

───瑠璃さんの相手がぼくで本当に良かった。痛い思いをさせたのがぼくで良かった・・・。

瑠璃さんは怒るだろうけど、まごうことなき本心だった。

「痛い思いをさせてしまったね。ごめんよ」

なぐさめてもなだめてもベソベソと泣き続ける瑠璃さんの背をさすりながら、そういえば、ずっと遠い昔、転んで泣きべそをかくぼくを、瑠璃さんもこんな風になぐさめてくれたことを思い出す。

あの時、瑠璃さんはいつまでも泣きやまないぼくに業を煮やし、最後は背中をどやしつけてきたんだっけ・・・。

ま、ぼくはどやしつけたりしないけどな。

気付いたら静かになり、そっと覗きこむと、瑠璃さんは眠ったようだった。

ぼくも目を閉じて───

だけど眠れるわけなどないのだった。

腕の中に瑠璃さんがいる。

頬に残る涙をそっとぬぐってやり、額に接吻をする。

瑠璃さんの規則正しい呼吸に自分の呼吸を合わせ、もう一度、目を瞑り、少し考えてそっと腕を抜くと小袖を羽織って外に出た。

風に当たって、興奮しすぎた身体と頭を冷やしたかった。

勾欄に手を付き見上げた夜空には、あの日───瑠璃さんに初めて思いを伝えた日と同じ、上弦の月がぽっかりと浮かんでいる。

あの日から色んなことがあったけど、こうしてぼくは瑠璃さんを妻にすることが出来たわけで・・・

物音が聞こえた気がして室内に戻ると、いつのまに目を覚ましたのか、単姿の瑠璃さんが夜具の上にぺたんと座っており

「高彬・・」

寝ぼけているのか、ぼくの顔を見るとぼんやりと呟いた。

「どうしたのさ、瑠璃さん」

隣に座りながら聞くと、瑠璃さんは力なく頭を振り

「いなくなったのかと思っちゃった・・・」

聞き取れないほどの小さな声だった。

ぼくは瑠璃さんを抱きしめた。

「いなくなるわけないじゃないか。少し風に当たってただけだよ」

「うん・・」

一緒に横になり、ひとつの衾にくるまる。

虫の音だけが聞こえる静かな秋の宵、ぼくたちは今この都にたった二人しかいないかのように、ぴったりと身を寄せ合って眠った。 




***************************************




翌朝、まだ夜も明けきらぬうちに白梅院の自室に戻ると、見計らったかのようにすぐに大江がやってきた。

「高彬さま、どうでしたの?無事、結婚できましたの?私、帝が譲位などされないように祈っておりましたの!」

異様に興奮し矢継ぎ早に質問してくる。

「さ、何はともあれ、御文ですわ。後朝の文は早さが大事ですのよ」

部屋の隅には文机が置かれ、料紙と硯まで揃っている。

用意周到とはこのことで、大江が走って直々に三条邸に文を届けそうな勢いだった。

文机の前に腰を下ろす。

後朝の歌───

一夜を共にしたあとに贈る歌のことで・・・

───瑠璃さんは今頃、どうしているだろうか。

思いはすぐに瑠璃さんに飛んで行く。

さっき別れたばかりだと言うのに、もう瑠璃さんに会いたい。

会って好きだと言い、接吻をしたい。抱きしめたい。

そうだ、この気持ちが伝わるような、一世一代の歌を贈ろう。

願わくば瑠璃さんが、ぼくの歌で心を蕩かせてくれたらいいのだけれど。

格子の向こうが白み始め、遠く鳥のさえずりが聞こえている。

もうじき朝がくるのだろう。

瑠璃さん───

ぼくは勇んで筆を取ったのだった。






<終>


これにて完結です。

第1話をアップしたのが昨年の1月で、連載開始から実に一年半以上もかかっての完結でした。

たくさんの拍手や応援コメントをありがとうございました。

皆さんのお陰でゴールまで辿り着くことができました。感想などありましたらコメント欄よりお待ちしています。

長らくのお付き合い、本当にありがとうございました。

高彬初夜編、楽しんでいただけましたらクリックをお願いいたします。


(←お礼画像&SS付きです)

コメントの投稿

Secre

非公開さま(Mさま)

Mさん、おはようございます。

完結いたしました~、ありがとうございます。
そうなんです、お預けはかなり男として辛い・・・辛すぎる状況。
原作は男の人が読んだら、涙ナシには読めない話のはずです(笑)
女の人からみたら、お預けって笑っちゃいますけどね。

そういえば原典の「落窪物語」に出てくる少将って、高彬のモデルだって氷室先生が何かで書いてましたね!
コメディタッチ、安心して読めそうですね。(悲恋とかはせつなすぎて・・)

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非公開さま(Dさま)

Dさん、おはようございます。

えぇ、感無量でございます(笑)
涙ナシには語れない、何度も流れた初夜・・・(笑)
長い紆余曲折を経ての結婚、高彬もさぞ嬉しかったと思います。
応援ありがとうございました。
またよろしくお願いします^^

非公開さま(Rさま)

Rさん、おはようございます。

お陰さまで無事、ゴールすることが出来ました!
コメントや拍手をいただけたので、集中力をとぎらせずに書くことができたのだと思います。
いつも応援をありがとうございます。
そういえば、あの後、黒酢、買いました~。
お風呂上りに少し薄めて飲んでます。
昨夜はカニ玉あんかけご飯を作ったのですが、あんかけに黒酢を使いました!
ゴール出来たのは、黒酢パワーかも?!
楽しんでいただけたようで私も嬉しいです。
こちらこそありがとうございました。

非公開さま(Mさま)

Mさん、おはようございます。

たくさんの顔を持つ高彬を楽しんでいただけたようで何よりです!
ほんと真面目な人って傍から見てると面白いですよね。
何だかんだ言って守弥に似ている高彬。
そういえば結婚当日、守弥は何をしてたんでしょうね。
ふて寝?高彬母とまた陰謀でも企ててる?ヤケ酒?それとも枕を涙で濡らしてる・・?(笑)
どれもありそうで笑えます。
あー、妄想が広がります・・。

子どもの頃の記憶、回りから見たらろくなものじゃなくても、きっと高彬にはキラキラと輝く思い出なんだと思われます。
なんてポジティブシンキングな高彬なんでしょう!
Mさん、いつも応援ありがとうございます。励みになりました。

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