*** 筒井筒のお約束をもう一度・・56 <高彬・初夜編> ***

『なんて素敵にジャパネスク〜二次小説』

 

           ※このお話は初夜編(完結済み)の高彬サイドの話です。
                        







***  筒井筒のお約束をもう一度・・56 <高彬・初夜編> ***  









ど、どうしてここに瑠璃さんがいるんだ・・・!

生霊と言うセンが一瞬浮かんだけれど、だけど古今東西、こんなに生気みなぎる生霊なんて聞いたことがないし、何よりもひょっこりと白梅院に瑠璃さんが現われた「白梅院の変」とぼくが密かに呼んでいる前科を思い出せば、やはりこれは瑠璃さん本人なのだ・・・ろう・・・。

いや、しかし・・・後宮で、しかも畏れ多くも帝の御前に転がり出るなど・・・・前代未聞、ありうべからざることで・・・

呆然としていると

「おたあさま!」

と可愛らしいお声が聞こえ、その声の主がふわっと姉上の膝に飛びつき、それは東宮さまだった。

「まぁ、宮」

姉上の声が答え、次いで

「瑠璃姫さまは本当に楽しい方ですのねぇ・・・」

と、東宮さまの髪を梳かれながら吐息交じりに言い、その口調からどうやら姉上は瑠璃さんの出現をさほど驚いていない───と言うか、おそらくは知っていたのではないかと察せられた。

さては姉上が瑠璃さんを・・・・。

「瑠璃姫・・・?」

帝のお声でぼくはハッと我に返った。

「・・・少将・・・、あの姫はまことに瑠璃姫なのか・・・内大臣家の・・・」

いいえ、違います、と申し上げたいところだが、そんなことが出来るはずもなく

「恐れ入ります。面目もございません」

ぼくに出来ることと言ったら、ひたすら平伏するしかないのであった。

「このような姫を妻にとは、右近少将も奇特な・・・」

帝は独りごちるようにおっしゃられ、何とお答えしたら良いのかさすがに頭が回らず押し黙っていると

「瑠璃姫さまはどうぞ別室にお移りなさいませ。瑠璃姫さまをあまり人目に触れさせたら高彬に怒られてしまいますわ」

ふふふ、と姉上が笑われ、それを機に瑠璃さんは退出し、帝は御前会議の時刻がせまっているということで部屋を出て行かれた。

帝の御気配がすっかりなくなり、瑠璃さんのところに行こうと立ち上がりかけると

「お待ちなさいな、高彬」

姉上に引き止められてしまった。

「まぁ、怖い顔だこと」

「これが怒らずに・・・」

「戻ったのですよ」

姉上は膝の上にいらっしゃった東宮を乳母に預けると、扇を広げゆったりと言った。

「は?・・・何がです」

「瑠璃さまの記憶です。全てを思い出したそうですよ」

「え・・・」

瑠璃さんの記憶が戻った・・・?

「本当ですか、それは。姉上」

思わず身を乗り出すと、姉上は大きく頷かれる。

「それでね、早くおまえに知らせたくてこうして後宮に出向いたのです」

「いや、しかし・・・それならぼくが三条邸に行くほうが早いと思いますが・・・」

「それでは面白くないではありませんか」

「いや、面白いとか面白くないとかではなくて・・・」

そういえば、瑠璃さんと姉上はノリが似ていたんだよなぁ・・・

「ともかく、瑠璃さまを叱ってはなりませんよ」

「しかし・・・」

「叱らないと約束しなければ、別室に案内しませんよ。一刻も早く瑠璃さまにお会いしたいのではなくて?」

扇越しに笑いを含んだ目で見られ

「姉上!」

「叱りませんか?」

「・・・・」

こういう展開に持ち込まれたら、もう頷くしかなく、ぼくは敗北感を味わいつつ、それでもこっくりと頷いたのだった。




******************************************



案内された部屋に入ると、はじかれたように瑠璃さんが立ち上がり、にこにこと笑いながら近づいてきた。

だけどぼくの目の前にきたところで笑いが消え

「えーと、あのね、高彬・・・・」

下を向き決まり悪そうに扇なんかいじくっている。

姉上には叱らないと言ったけど、だけど、やはり一言言わずにはいられない。

ずっと三条邸の部屋で過ごす瑠璃さんにはわからないだろうけど、朝廷や後宮は危険がいっぱいの場所なのだ。

新参者の女官と見れば手ぐすねひいて待っている輩も多いし、それ以外にも、鬼に喰われたとしか思えないように失踪してしまう女官だっている。

まさしく鬼が出るが蛇が出るか・・と言った闇を抱え込んでいるのが宮城で、物見遊山で来る様なところじゃないと言うのはそこを言うのだ。

そこに無防備にのこのことやってくるなんて・・・!

「えーと、その・・・」

「瑠璃さん、ここがどこだがわかっているの」

ぴしゃりと言ってやる。

一体、自分がどれだけ危ないことをしたのかを判らせなくてはいけない。

「後宮・・・です」

「そうだ、後宮だ。遊びにくるようなところじゃないって前に言ったろ」

「・・・だって、記憶が戻ったことを早く高彬に知らせたかったんだもん・・・」

瑠璃さんが顔を上げ、丸い目でぼくを見た。

吉野で会った頃よりも少しふっくらとした頬の瑠璃さんはやっぱり可愛くて、だけど、白梅院に次いで後宮にもひょっこりと現われたことを思うと、ここで強く言わなければならないと、ぼくは心を強く持って瑠璃さんに向き直った。





<続>


(←お礼画像&SS付きです)

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