*** 筒井筒のお約束をもう一度・・54 <高彬・初夜編> ***

『なんて素敵にジャパネスク〜二次小説』

 

           ※このお話は初夜編(完結済み)の高彬サイドの話です。
                        







***  筒井筒のお約束をもう一度・・54 <高彬・初夜編> ***  









格子から入り込んだ月明かりが床に規則正しい影を作っている。

昼のうちにはあった風も止み、部屋の中はまだまだ夏の名残のむぅとした空気が漂い、その中で額の汗を軽く拭いながら権少将のことを考えていた。

───ぼくに何か用だったのだろうか?

権少将は、以前、瑠璃さんに夜這いをかけようとしたことがあり、当時、衛門佐だったぼくはそれを阻止した。

官位が下でしかも年下のぼくに邪魔されたのが面白くなかったのか、その時以来、どうもぎくしゃくしていると言うか、因縁の仲と言うか、まぁ、一言で言うと、とてものこと友好的な相手ではないのである。

その時(仕事できっちりと結果を出してやる)と誓い、その後ぼくは右近少将となったので、権少将より実質的には上の立場になった。

同じ近衛府と言うこともあり、もちろん仕事上で話があってもおかしくはないのだけど・・・。

だけど、わざわざぼくに話を持ってくるだろうか。

こもごも考えるうちに丑の刻が近づき、宿奏(とのいもうし)を終えた左近衛府の少将らが戻ってきた。

入れ替わりで立ち上がり、一通りの見回りを終えて控えの間に戻った時には、すでに東の空が白々と明け初めていた。

控えの者に聞いても権少将が訪ねてきたどころか、顔を覗かせた形跡もなかった。

───何かあったら、また言ってくるだろう。

そう思ってはみたものの、何か急ぎの仕事のことだったら・・・と気になってしまい、仮眠を取った後、権少将の元に立ち寄ってみることにした。

ところが、とうに出仕してていい時間だと言うのに、権少将は来ておらず

「さしずめ、またどこぞの女人のところで足止めでも食ってるか、痴話喧嘩でもしているか・・・そのどっちかじゃないのか?」

顔見知りの文官は呆れたように言い、普段の権少将のふるまいや評価が図らずも露呈するのであった。

適当に相槌を打ち、右近衛府に戻り雑務をこなす。

権少将が怪我をしたらしい、と文官がこっそりと耳打ちしてきたのは翌日の夕刻のことだった。

「怪我?ひどいのか?」

確執はともかく気になって尋ねると

「いや、そうでもないらしい。ただ見舞いに行った者の話によると、額だか顎だかが大きく腫れて相当ひどい痣があったらしい。権少将のやつ、悔しそうに『あの怪力女め・・・』などと歯軋りしていたらしいから、やっぱり昨日の俺の考察は当たらずとも遠からずってわけだ」

ニヤリと笑い

「ま、このことは内密にな。・・・そのうち一杯やろう」

ぼくの肩をポンと叩くと立ち去っていった。

夕闇に溶け込んで行く後姿を見送ると、ぼくは踵を返し歩き出した。

瑠璃さんに結婚の確認を取ったことを、姉上に報告しなければならない。

姉上に「もっと顔を出しなさい」と言われているしな。

しかし、母上と言い姉上と言い、どうにもぼくを童扱いしてる気がする。

瑠璃さんも融のこと、いつも散々に言ってるみたいだし、身内っていうのは案外そんなものなのだろうか。

結婚して瑠璃さんと<身内>になったら、瑠璃さんはぼくをどう評価するのだろう。

そうでなくても年下なんだし、これはかなり頑張らないといけないよなぁ。

結婚したら、試しに「さん付け」をやめてみようか。

『瑠璃、こっちに来なさい』

『瑠璃、今日は遅くなるから先に寝てなさい』

───悪くないよな。

想像し、緩む頬を抑えながら承香殿を目指す。

その時のぼくにとって、権少将がこさえた痣など、まったくもってどうでも良いことなのであった。





**************************************************





あっと言う間に七月に入り、乞巧奠や盂蘭盆会の準備、宿直や雑務・・・と毎日の仕事は多忙を極めた。

あの日以来、瑠璃さんには会えていなかったけれど、それでも陰陽道に占わせて結婚も一月後と決まり、忙しいながらも充実している、と言ったところだろうか。

朝一番で帝に呼ばれ、御前を辞してきたその帰る道すがら、豊楽殿の横を歩いていると、前に融がいることに気がついた。

「融!」

ぼくの声に振り向いた融は、ぼくの姿を認めるとびっくりしたように身体を反らせ

「急いでるからまたね!」

両手を振りながら走り去ってしまった。

「・・・・・」

またか・・・。

ぼくは小さく息を吐いた。

気のせいかもしれないけど、何だか最近、融に避けられている気がするんだよな。

近いうちに三条邸に訪ねに行ってみようか。

少し前は融に会いに三条邸に行っていたのに、最近は三条邸に行くといったらもっぱら瑠璃さんに会うのが目当てばかりだからな。(まぁ、昔から、ひょっとしたら瑠璃さんに会えるかも・・・なんて下心があったのも事実だけど・・・)

右近衛府に戻り、いくつかの仕事をこなしていると

「右近少将どのはおられますか」

部屋の外から使いの者が言い、立ち上がり近づくと

「帝がお呼びでございます」

手を付いて口上を述べた。

帝が?

さっき御前を辞したばかりだと言うのに何だろう・・・。





<続>

-次回予告-

「右近少将、なにかわたしに報告することはないのか」

「・・・・」(え?何だろう・・・。特に仕事上で報告することはないしな・・・)

「では質問を変えましょう。少将、わたしに何か隠していることはないかね」

「・・・・・」(あわわわ・・・)

**********

鷹男にいびられる、可哀相な、だけど書いてて楽しい高彬をお届け致します。

いつもご訪問ありがとうございます。

暑さに負けずに頑張ります!・・・と書きたいところですが、連日の猛暑にすっかり戦意喪失しました。

「負けました。参りました」と全面降伏です。

お願いしたら少しは涼しくしてくれるのなら、天の神様にでも隣のおじさんにでも土下座します。

皆さんも気をつけてお過ごしくださいね。


瑞月
(←お礼画像&SS付きです)

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Secre

非公開さま(Rさま)

Rさん、こんばんは。

滝のような雨、降ってほしいです。東京はカラッカラです。
昔は夕立がざっと降って、夜には暑さも和らいだのですが、今は夕立って降らなくなりましたよね。
ゲリラ雷雨とか局地的な極端な雨はあっても。

うちは男女の双子なんで、男の子も女の子もいます。
息子に高彬のような有能さは垣間見れませんが(笑)
高彬ってきっと自立心が旺盛で、可愛がれるのがうっとうしいって思うタイプなのかもしれませんよね。
対して融は可愛がられるのが大好きなタイプ。
高彬母と融が親子だったらうまくいったのかも・・?
あ、でも、高彬だったから溺愛したのかもしれませんしねぇ。

Rさんも身体に気をつけて!夏を乗り切りましょう。

ななしさま

ななしさん、こんばんは。

>特に高彬に関しては原作よりもこちらのほうが出番も多いしうれしいです。

はい、何と言ってもこのブログのメインテーマ(?)は、陰謀や事件ではなく2人の甘々ですので、高彬もたくさん出てきます。
瑠璃一人じゃ甘々は出来ませんからね!

>新婚編の更新も気長に待ってます!

ありがとうございます。そんな風に言っていただけて嬉しいです。
いつも新婚編のことは頭の片隅にあり、いずれはきちんとした形にしたいと思っています。
コメントありがとうございました。

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No title

ジャパネスクの二次小説はたくさんあれど端月様の書かれる小説が一番原作の雰囲気やキャラに近い気がします。瑠璃は原作よりエキセントリックさが減ってまるくかわいらしさが増した感じ。高彬は原作よりまめで優しい。特に高彬に関しては原作よりもこちらのほうが出番も多いしうれしいです。新婚編の更新も気長に待ってます!
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瑞月(みずき)です。

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