***第十話 宵の白梅院***

『なんて素敵にジャパネスク〜二次小説』




          注)このお話は連続ものです。
            カテゴリー「二次小説」よりお入りいただき
            第一話からお読みくださいませ。



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*** 第十話 宵の白梅院 ***





乱れた足音が聞こえ、向こうから人がやってきた。

近づいてくると、それは意外というか案の定というか、守弥だった。

あたしの顔を見てびっくりしたように

「萩野、おまえここで何を・・・」

と言いかけるのを制して

「按察使が倒れたわ」

「母上がっ」

ギョッとして、すぐにしゃがみこもうとする守弥に向かい、あたしは大声で言い放った。

「早く高彬に知らせてお医師を呼ぶようにいうのよ!」

「高彬・・・とは・・・。おまえは何様のつもりで・・」

睨みつけて居丈高にいう。

「いいから早く!事は一刻を争うのよっ」

ぴしゃりと言ってやると、何か言いかけたが、さすがに今はそれどころではないと判断したのか、すぐに足早に立ち去った。

あたしは袿を脱ぎ、按察使にかけた。

按察使は一時の胸の痛みは去ったのか、いくぶんは落ち着いたようだったが、それでも苦しげに顔をゆがめている。

「今、高彬に知らせたわ。じきにお医師が来るはずよ。それまでの辛抱よ。がんばるのよ」

背中をさすりながら話しかけ続けた。

「あなた様はもしや・・・」

苦しげな息遣いで聞いてくる按察使に向かい

「あたしは・・・・瑠璃です。こんな姫で驚いたでしょう。お叱りは後で受けるわ。今は静かにしていることよ」

そう言うと

「瑠璃姫さま・・・」

小さくつぶやいて、按察使はそっと目を閉じた。




          *****************************************



半刻後。

あたしは大江と一緒に、按察使の枕元にいた。

按察使は、駆けつけたお医師に出してもらった薬湯を飲み、落ち着いた様子で眠っている。

部屋に運び込まれたばかりの按察使は顔色もなく真っ青だったけど、今は顔に赤みが戻ってきたようだった。

よかった・・・。

ほっと安堵のため息をつくと、それまで黙って隣に座っていた大江が急に両手をついて深々と頭を下げた。

「瑠璃姫さま。知らなかったこととはいえ、いろいろ申し訳ありませんでした。わたしったら変なことばかり言ってしまって・・・」

どうやら「何かされた?」とか「愛人になれるわよ」発言のことを言っているらしい。

あたしは笑って

「いいのよ。まさか大納言家の姫が女房としてくるなんて思いっこないもの。あたしはぜんぜん気にしてないわ。色々話ができて楽しかったわ」

そういうと、大江は顔をあげて嬉しそうに顔を赤らめた。

「それに母まで助けていただいて、なんとお礼を申し上げて良いのかわかりませんわ。お医師の話では、もう少し処置が遅れていたら、大変なことになっていたということでした。あの場に瑠璃姫さまがいらっしゃらなかったら、母は今頃どうなっていたのかと思うと・・・」

声を詰まらせたかと思うと、ふと、思い出したように

「ときに瑠璃姫さま。ご無礼を承知でお聞きいたしますわ。どのような理由で右大臣家の女房のふりなどなさいましたの?高彬さまはご存知でしたの?」

興味津々といった感じで聞いてくる。

やっぱりなー、相当なミーハーだわ。大江って。

その何ともあけっぴろげな言い方には、他意はなさそうで、大江ってどこか憎めない。

「高彬と煌姫の噂を聞いたもんで、心配で来ちゃったのよ」

何だか言い繕うのも面倒で本当のことを言うと、大江は「まぁ」と目を開いて、クスクスと笑いだした。

「そうでしたの、瑠璃姫さま。大丈夫ですわよ。高彬さまは本当に姫さまを大切に思っていらっしゃいますもの。いつも高彬さまのお側近くに仕える、この大江が保証いたしますわ」

そんなふうに言われて悪い気はしないから、あたしも嬉しくなってしまった。

「高彬さまは最近、お時間があるとお歌を呻吟なさってますもの。瑠璃姫さまへのお歌ですわ」

「ねぇ、ところで、大江」

そうよ。ちょっと聞いておかなきゃいけないことがあったのよ。

「はぁ、なんですの、瑠璃姫さま」

「おまえの兄の守弥って、どういう者なの」

「どういうもこういうも、相当な変わり者ですわ。変わり者と言うか、ひねくれ者と言ったほうがよいかもしれませんけど。独りで勝手に世をすねて、自分の官位は望まずに、一心に高彬さまに仕えていますの。はたから見てもうっとうしいほどですわ。きっと、高彬さまもそうだと思いますわ」

「ふうん」

あまりと言えばあまりの酷評に、さすがのあたしも毒気を抜かれてしまった。

「守弥って、あたしと高彬の結婚に反対みたいだしね」

「兄の思惑などに、瑠璃姫さまがお心を煩わせるようなことはございませんわ。ほっときゃいいんですわ、あんな変わり者。わたしも、母だってきっと、瑠璃姫さまを応援いたしますもの」

「あ、どうも・・・」

思わずお礼を言うと、大江はにっこりと笑い

「瑠璃姫さま、ここはもう大丈夫でございますわ。わたしが付いておりますので、どうぞお休みになってくださいませ」

その言葉に促されて、あたしは部屋を後にした。



            **********************************************



足音を忍ばせて簀子縁を歩き、妻戸を開けてそっと部屋をのぞくと・・・・

灯台の明かりの下、高彬は脇息に寄りかかり、ぼんやりとしていた。

小さく咳払いをすると、あたしに気付き、すぐにやってきた。

そうして部屋に招き入れ

「どうだった、按察使は」

心配そうに聞く。そりゃあそうよね、なんたって育ての親だもの。

「今はよく眠っているわ。大江がついているから大丈夫よ」

そういうと安心したように頷き

「瑠璃さんにもお礼を言わなきゃいけないね。あの場に瑠璃さんがいなかったら、按察使は危なかったらしいね」

「いいのよ、そんな・・・」

「でもね、瑠璃さん」

高彬は改まった声で言い、そうしてあたしの手を取った。

「ぼくの言いたいことわかるよね」

「はぁ・・・まぁ、なんとなく」

「言ってみて」

「えぇっと・・・なるべく誰とも話さないでって言われたのに、話しちゃったこと?」

「そうだね。あとは」

「・・・まっすぐ局に戻らずに釣殿に行っちゃったこと・・?」

「うん、それもある。あとは」

「・・・・・」

「瑠璃さん。もうひとつ、一番、重要なことが抜けてるよ」

「あたしが・・・瑠璃姫ってことが・・・ばれちゃったこと・・・かな?・・・あはは・・はは」

笑ってごまかそうと思ったんだけど、高彬に睨まれて、笑い声もしぼんでしまった。

「・・・ごめんなさい・・」

高彬があんまりあたしのことをじっと見るもんだから、なんだか恥ずかしくって俯いていると、ふいに抱きすくめられてしまった。

「た、高彬・・・?」

びっくりしていると、今度は抱き上げられてしまい、高彬はそのまま几帳の裏に回りこみ、と思ったら、しつらえてあった夜具の上に横たえられてしまった。

ぽかんとしていると、高彬はあたしの上に覆いかぶさるように、接吻をしてくる。

いきなりの展開について行けずにいると、高彬が唇を離し

「瑠璃さん、ぼくは瑠璃さんに言ったよね。ぼくだってイロイロ我慢してるんだから、瑠璃さんも我慢して局で寝ておくれよって。瑠璃さんが我慢して局に戻らなかったんだから、ぼくだって我慢しなくていいってわけだ」

そういって尚も深い接吻をしてくる。

ちょ、ちょ、ちょっと待ってよー。

あたしは身をよじって何とか高彬から逃れようとしたんだけど、がっちりと抱きすくめられていてどうにも動けない。

そうこうするうちにも高彬の動作はますます熱を帯びてきているようで、あたしは眩暈にも似た感覚におそわれて、クラクラしてしまうのだった・・・・。




                   <第十一話に続く>



〜あとがき〜

氷室先生の小説の中で、高彬は本当に本当に本当に、よく我慢したと思います。

一体、何度お預けをくらったことか・・・。

おそらく高彬が武官として腕が立つのは、「お預け」くらった時に発散するために、たくさん稽古に励んだからだと推測されます(笑)

読んでいただきありがとうございました。


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