*** 筒井筒のお約束をもう一度・・53 <高彬・初夜編> ***

『なんて素敵にジャパネスク〜二次小説』

 

           ※このお話は初夜編(完結済み)の高彬サイドの話です。
                        







***  筒井筒のお約束をもう一度・・53 <高彬・初夜編> ***  









唇を合わせたまま瑠璃さんの髪を撫で、少し体勢を変えようとしたところで

「いやなわけじゃないのよ。でもね・・・・」

下にいる至近距離の瑠璃さんが、ぼくの身体を押しとどめた。

「やっぱり、きちんとした手順で結婚したいかなって。記憶を失う前のあたしは、そう思ってたみたいだし・・・」

「・・・・」

記憶を失う前の瑠璃さん───。

いくつかの状況が思い出された。

そういえばあの時もこの時も、瑠璃さんはちゃんとした手順で結婚したいと言っていたっけ・・・。

「それに・・・あの・・誰か来るかも知れないし・・・」

瑠璃さんのその言葉で、ふいに鮮明に思い出した光景があった。

あれは瑠璃さんが白梅院に女房として潜入した翌日のこと、三条邸に送り届ける途中の牛車の中で───

少しばかり暴走しかけたぼくは、自分のペースで事を進めそうになり、その時に瑠璃さんは「こんなところではいやだ、誰か来る」と嫌がり、そうして・・・・・・泣かせてしまったんだ。

何度も同じことを繰り返しているのかと、我ながら呆れてしまう。

「そういえば、前にもそんな風に言われたことがあったな」

呟くと

「前にも?」

「うん、やっぱりその時も、瑠璃さんは誰かが来ることを心配してた」

「どんな状況だったの?」

思いがけずに瑠璃さんが食いついてきた。

まずったかな、と思わないでもなかったけど、行きがかり上、答えないわけにはいかず

「あの時は、確か牛車の中で・・・・」

「牛車の中?!」

正直に話すと、案の定、瑠璃さんの顔色が変わった。

「い、いや、あの時はいろいろと、事情がさ・・・」

「牛車の中でなんて・・・・いやに決まってるじゃない」

一刀両断、ばさりと切られてしまう。

「ほんと・・・後悔してるよ。でも、あの時は瑠璃さんもいけないんだ」

「なぜよ」

「なぜって、瑠璃さんは覚えてないだろうけど、ひょっこり白梅院に現れて、一緒に寝させてくれと言ってぼくを誘惑したり・・」

「うそっ」

「本当だよ。隣で瑠璃さんに寝られるぼくの身にもなって欲しいよ。生きてきた中で、あんなに辛いことはなかったよ」

「大げさね」

「大げさじゃないさ。瑠璃さんには男の気持ちがわからないからね」

「あたしは女ですからね。それで牛車の中で高彬はどうしたの?」

「そりゃ、やめたよ。いやだって言われたらやめるしかないだろ。今まで何度お預けを喰らったことか」

ちらりと瑠璃さんを見ると

「そんな状況でやろうとする高彬が悪いのよ。自業自得だわ」

瑠璃さんはふんとそっぽを向き、そのしぐさはまさしく記憶を失う前の瑠璃さんそのもので、ぼくは嬉しくなってしまった。

ここで焦って無理にコトを進めなくても──

今まで、ずっと大切にしてきたんだしな。瑠璃さんのこと。

「まぁ、確かにその通りだね。ちゃんと結婚の日まで待つことにするよ。明日から、また宿直や物忌みが続いてしばらくこちらに来れないけど、佳き日を選んでなるべく早くに結婚しよう」

髪を撫ぜ、額に接吻をする。

「ちゃんとした手順でね」

コクンと瑠璃さんが頷き、「高彬」と呟きながらぼくの首に腕を回してきた。

瑠璃さんの甘い匂い、柔らかい身体───。

「ほら、またそうやって誘惑する」

怖い顔を作って睨んでやると、瑠璃さんは肩をすくめてくすりと笑い、その唇が何とも魅惑的でぼくはたまらず接吻をしてしまった。

───このまま、こうしていたいな・・・。いや、出来ることなら瑠璃さんをぼくのものに・・・。

またしても不埒な考えがもたげてきたところで

「ひ、姫さま!少将さま!」

素っ頓狂な声が聞こえ、それが小萩の声だと判ったとたん、ぼくと瑠璃さんは二人まるで示し合わせたように起き上がった。

ほぼ抱き合ったままの状態で恐る恐る小萩を顧みると

「お、おやつをお持ちしました」

顔と言わず首と言わず、もしかしたら目の中まで真っ赤かもしれないような様子で膝をついており、手には高杯を掲げ持っている。

「あ、あ、ありがとう、小萩」

うろたえた瑠璃さんが息も絶え絶えに礼を言い、小萩はと言うと、こけつまろびつしながら部屋を出て行った。

「・・・・・」

「・・・・・」

言葉も出ずに見詰め合う。

奇妙な沈黙が流れ、最初に口を開いたのは瑠璃さんだった。

「やっぱり来たじゃない。誰も来ない、だなんて適当なこと言って。・・・小萩の足音とか気付かなかったの?」

自分だって気がつかなかったくせに、恨みがましい口調で言う。

だけど、こんな時、強気になれるわけもなく

「それは、まぁ・・・・集中してたから・・・。ごめん」

謝るしかないのだった。

「とにかくせっかくだから、おやつを頂こうよ」

気を取り直して言ったのに

「こんな時に食べられるわけないでしょ、もう・・・」

ぶつぶつと言い、ぼくは久しぶりに会えた瑠璃さんの機嫌を損ねてしまったことに、がっくりと肩を落とした。





***************************************************




その後、何とか機嫌の回復した瑠璃さんに手を振り三条邸を辞したのは、陽はとっぷりと暮れ、東の空には星が瞬き始める頃だった。

今日は宿直のため、そのまま宮廷へと向かう。

控えの間に向かっていると

「高彬」

後ろから声をかけられ、振り返ると同僚の源重行が立っていた。

「さっき、権少将が右近衛府に来たぞ」

「権少将が?」

「あぁ。今日はお前が宿直かどうかを気にしているようだった」

「・・・ふぅん、なんだろうな。・・・・ま、ぼくは今日、宿直だから、何かあったら来るだろう」

重行に礼を言い、ぼくはそのまま宿直の間に向かった。





<続>


(←お礼画像&SS付きです)

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