*** 筒井筒のお約束をもう一度・・48 <高彬・初夜編> ***

『なんて素敵にジャパネスク〜二次小説』



           ※このお話は初夜編(完結済み)の高彬サイドの話です。
                        







***  筒井筒のお約束をもう一度・・48 <高彬・初夜編> ***  









さっき上がったと思った雨が、また降り出してきた。

ぽつりぽつりと落ちて来た雨粒はあっと言う間に本格的な雨になり、剪定された庭木の葉を揺らしている。

池の方では蛙が鳴いており、聞くともなしにその声を聞いていたぼくは、ふと思いたって文箱に手を伸ばすと、昨日、忍びやかに届いた瑠璃さんからの文をもう一度、読み返してみた。


『 毎日、雨ばかりで嫌になってしまうけど、小萩が少しでも記憶の戻るきっかけになればと言うことで、色々な思い出話をしてくれているので、何とか退屈せずに過ごしています。高彬は元気ですか─── 』


雨降りの続く中、時間を持て余しているであろう瑠璃さんを想像して、ぼくはくすりと笑ってしまった。

まぁ、瑠璃さんのことだから、天気が良ければ庭にでも下りてしまうことを考えれば、この雨も悪くないか。

怪我が治ったとは言え、まだまだ療養が必要なはずなのだから───。

そう。

先日の五月三日(さつきみか)、瑠璃さんは吉野から帰ってきた。

体調もだいぶ良くなったし、三条邸の自室に戻れば、瑠璃さんの記憶も戻りやすいのではないだろうか、と内大臣さまがお考えになったようなのだ。

どうしても代われない仕事があり、瑠璃さんを迎えにはいけなかったのだけど、それでも瑠璃さんは無事帰京を果たし、今は三条邸のいつもの部屋で過ごしている。

すぐに会いに行きたかったのだけど、間の悪いことに、立て続けに宿直が入り、忌み月だと言うこともありまだ会いにいけてないのだ。

だから今は、瑠璃さんとは文だけのやりとりで・・・。

───はぁ・・・

近くに誰もいないのをいいことに、ぼくは盛大にため息をついた。

せっかく吉野から戻ってきたというのに、まだ瑠璃さんに会えてないなんて・・・。

忌み月で仕方ないこととは言え、悲しすぎる。

それに、ため息の理由はもうひとつある。

ぼくは絶対に誰が何と言おうと瑠璃さんと結婚するけれど、だけど、実際の話はまったく進んでいないということだ。

ぼくや瑠璃さんほどの家柄同士の結婚となると、個人だけの考えである日突然「ハイ、結婚しました」と言うわけには行かなくて、それはそれ、仮にも権門と言われる家同士だから、日程の調整や準備が秘密裏に進められている必要がある。

だけど、一度目の結婚は、御世が代わるタイミングと重なってしまい流れ、二度目の結婚は、これは瑠璃さんの大怪我により、それどころじゃないと言った感じだったしで、さすがに三度目の話はまだ出ていなくて、要は結婚話が暗礁に乗り上げた形になっているのだ。

元々、結婚にいい顔をしてなかった母上は、これ幸いとばかりに、結婚の話を避けている節がある。

先日、今日こそは具体的な結婚の話を・・・と思い、父上と母上を訪ねようとしていた矢先、母上が「頭が痛い」と言い出し、叶わなかったのだ。

だけど、大江情報によると、すぐその後に、母上は荘園に出す今年の染物の色味を、声を張り上げて検討していたとかで、まぁつまりは仮病なんだと思う。

守弥は守弥で何を考えてるんだか、今ひとつよく判らない。

忌み月だから、文だって大っぴらにはやり取りできなくて、それなりに気を付けているけれど、目敏い守弥は先刻承知のようで、だけど、見逃してくれてる感じもするし。

かと言って、結婚の後押しをしてくれるかと言えば、そんな気持ちはさらさらなさそうだし。

あの2人が反対してるとなると、結婚に漕ぎ着けるのはまだまだ先のことかも知れないよなぁ・・・。

───はぁ。

本日、二度目のため息をついたぼくは、気持ちを切り替えるために大きく頭を振った。

こんな雨の日だから、どうしても悪い方に考えてしまうんだ。

楽しいことを考えよう。

瑠璃さんに───。

瑠璃さんに文でも書くとするか。

2日前も書いたばかりだから、似たような内容になってしまうけれど、少しは退屈しのぎになってくれるだろう。

女房を呼んで文を書く準備をさせようと顔を上げると、ちょうど大江がやってきたところだった。

部屋の隅に座り、手を付くと

「高彬さま、お殿さまがお呼びでございますわ」

丁寧に口上を述べた。

「父上が?」

「はい。北の方さまもご一緒のご様子でした」

父上と母上がぼくに用・・・。

うーん。なんだかすごく嫌な予感がする。

「わかった。伺うよ」

立ち上がり、先導する大江の後を歩きながら、今の空模様さながらに、ぼくの胸には黒い雲が広がっていくのだった。




<続>

(←お礼画像&SS付きです)

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