*** 筒井筒のお約束をもう一度・・47 <高彬・初夜編> ***

『なんて素敵にジャパネスク〜二次小説』



           ※このお話は初夜編(完結済み)の高彬サイドの話です。
                        







***  筒井筒のお約束をもう一度・・47 <高彬・初夜編> ***  









「吉野から帰ってたんだね」

ぼくの前で止まると膝に手を付きながら融は言った。

よほど遠くからぼくの姿を見て走ってきたのか息があがっている。

「うん、昨日の日暮れ間近なんだ、京に着いたのは」

「それで今日、参内してるんだもん。すごいよな、高彬は」

「すぐに融のとこ行きたかったんだけど、来て見たらやることがたくさんでさ。一段落着いたら行こうと思ってたんだけど・・」

「いいよ、別に。さぞ忙しかったと思うよ。高彬がいない間、近衛府の人たち、大変そうだったもん。色んな人に聞かれちゃったよ、少将どのはどうされたのですか、いつ参内されるのですか、なーんてさ。余計なこと言っちゃマズいと思って適当にはぐらかしておいたけど」

「そうか、悪かったな」

確かに承香殿女御のお忍びと瑠璃さんの記憶喪失、そしてその経緯などを考えれば、ぼくが吉野に言っていることが知れたら何かと面倒なことになりそうで、融の機転はありがたかった。

「・・・どうだった?姉さんの様子は」

心配そうに声を潜めて融が聞いてきた。

「うん・・・。まだ記憶は戻らないけど、体調は少しずつ良くなってるみたいだったよ。歩いて一緒に散歩もしたんだ」

「そっか、歩けるようになったんだ。良かった。ぼくが帰って来た時は、まだ姉さん、寝付いたままだったから」

「うん。身体の方は順調に回復しているようだ」

「姉さん、昔っから身体だけは丈夫だもんなぁ。・・・でも、記憶を失くしただなんてさ、ぼく最初は姉さんのイタズラかと思っちゃったよ・・・」

どちらからとも宴の松原に向かい歩き出しながら、融はポツンと呟いた。

「・・・うん」

ぼくも思ったことだったので、素直に頷く。

しばらくは黙って歩き、砂利を踏みしだく音だけが聞こえた。

「・・・で、どうなのかな、高彬は」

言いづらそうに融が口を開き

「どうって何が」

「だから・・その・・・高彬の気持ち・・・って言うか・・・」

足元の小石を蹴ったりしている。

「ぼくの気持ち?」

「うん」

「何の」

「姉さんへの気持ち・・・」

「瑠璃さんへの気持ち?何だよ、それ」

「あ、やっぱりいいや。何でもない」

「何だよ、はっきり言えよ」

顔の前で手を振り、へへ、と笑う融に詰め寄ると、またしても足元の小石を足でいじくりながら融はぼそぼそと言った。

「だから、その・・・・嫌いになったりしたんじゃないか、とか・・さ・・・」

「・・・・・」

「姉さん、記憶失くしちゃったからさ。そりゃ、今まで通りってわけには行かないかも知れないけど、でも、きっといつかは記憶も戻るかも知れないしさ」

「・・・・・」

「まぁ、今すぐは無理かも知れないし、もしかしたらずっと戻らないかも知れないけど。でも、姉さんは姉さんなわけで・・・」

ぼくは黙ったままなのを何と誤解したのか、融は熱心に言い、その目は心なしか潤んでさえ見えた。

「姉さんは欠点ばかりの人で、今回だって自分の不注意で怪我しちゃったわけだからさ。だから、高彬にお願いできることじゃないんだけど、でも、姉さんを好きだなんて言ってくれる人、きっと高彬くらいしかいないし。だから高彬には・・・」

「融」

「もちろん今すぐ結婚してあげてって言ってるわけじゃなくて・・・」

「だから、融ってば。ぼくの話を聞けって」

「・・・・うん」

「プロポーズ、したんだ」

「え?」

「瑠璃さんに改めてプロポーズしてきた。瑠璃さんは変わらず今でもぼくの婚約者だよ」

「えぇー?!ほんと?本当に?」

「うん」

「・・・・」

融の目が見る見る赤くなり、それを恥じるかのように手でごしごしとこすっている。

「ありがとう。高彬ぁ・・・」

甘ったれた声で融が言い、ぼくはふいに昨日の守弥の気持ちがわかってしまった。

ストレートなお礼の言葉は、確かに恥ずかしい。

「おまえ、不実な男が出てくる物語でも読んでるんじゃないのか。そんな時間あったら漢詩のひとつでも覚えたほうがいいぞ」

照れ隠しにわざと厳しい声で言ってやると

「物語なんか読んでないよぉ・・」

とぐずぐずと鼻をすすりながら言い、それでも最後は嬉しそうに笑った。

融と別れて図書寮で調べものをしながら、そういえば、瑠璃さんから婚約を解消されるんじゃないかと言う心配はしていても、その反対の心配はしていなかったなぁ・・・なんて思っていた。

融、ぼくが吉野に行っている間、そんなことを心配していたのか。

記憶を失った瑠璃さんのことを、ぼくが嫌いになるんじゃないかって。

嫌いにならないまでも、結婚しなくなるんじゃないかって。

うーむ、男として見くびられたものだと言う気がするけれど、まぁ、姉思いの心根に免じて許してやろう。

それにしても。

ぼくは再度、心の中で(うーむ)と唸り声をあげた。

お礼を言われて、つい憎まれ口を叩くなんて、ぼくはひょっとしたら、かなり守弥に似ているんじゃないだろうか・・・。







<続>


瑞月です。

いつもご訪問ありがとうございます。

少し前「50話くらいで完結予定です」と書きましたが、すみませんがもう少し長引きそうです。

一気に最終話!を目指していましたが、いくつか書きたいエピソードが出てきて、せっかくだからじっくりと書こうかと思い初めています。

途中、思いついたら短編や雑記などもはさんでしまうかも知れません。

急がずのんびりと(ダラダラとも言いますが)話を進めて行きたいと思っています。

現代編のパラレルで書いてみたい話があるのですが、あまりにも初夜編と雰囲気が違うため、今は自重しておきます。

何かと私生活も慌しく(要領が悪いだけかも・・)思うように更新が出来ないでいますが、どんなに時間が掛かっても最終話まで根性と気合で(?)たどりつきますのでよろしければお付き合いくださいませ。


(←お礼画像&SS付きです)

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Secre

非公開さま(MTさま)

融の恋愛事情とか、すごーく気になります。
案外、惚れっぽい性格みたいだから、もし由良と結婚したとしても浮気するんじゃないだろうか、とか。
そうしたらやっぱり高彬に泣きつくのかな、とか。
由良の尻にひかれちゃうんでしょうかねぇ・・(笑)

非公開さま(MSさま)

そうです、高彬は真のヒーローなのです(笑)
でも、ああいう性格だから、そういうことにならないわけで、少しでも高彬がそういう人だったら、そういう方面に行ってしまう危うさがあるわけでして・・。
と何とも煮え切らない書き方ですが。
色々、考えるに、これはなかなか奥深い案件です(笑)

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非公開さま(Mさま)

新学期、始まりましたね。(ようやく、と言う感じ・・)
と言いますか、もう4月と言うことにびっくりです。
今月末にはGWがきて、梅雨が来て、少ししたら夏休み・・・・あわわわ。

融、安定の可愛さですよね。

>「おまえ、不実な男が出てくる物語でも読んでるんじゃないのか。そんな時間あったら漢詩のひとつでも覚えたほうがいいぞ」
>照れ隠しにわざと厳しい声で言ってやると

実はここの部分、最初は

*********************

「ありがとう。高彬ぁ」

そう言って融が抱きついてきたので

「~漢詩のひとつでも覚えた方がいいぞ」

と融の頭を小突いてやると、融は、へへ、と照れくさそうに笑った。

***********************

こんな感じだったんですよ。
でも読み返してみて
(何、いちゃいちゃしてんの、この2人。ほのかにBLテイストの香りが・・)
とか思いまして(笑)急遽、変えたんです。

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