*** 筒井筒のお約束をもう一度・・46 <高彬・初夜編> ***

『なんて素敵にジャパネスク〜二次小説』



           ※このお話は初夜編(完結済み)の高彬サイドの話です。
                        







***  筒井筒のお約束をもう一度・・46 <高彬・初夜編> ***  









「お呼びでしょうか」

その声でハっと目を覚まし、ぼくは自分がうたた寝していたことに気がついた。

守弥が来るまでのほんの少しの時間に、どうやら眠ってしまったらしい。

ほぼ休まずに吉野から京まで駆ってきたから、さすがに疲れているのかも知れない。

今日は早めに就寝して、明日の参内に備えるか・・・

目をこすりながら思い、ふと視線を感じて顔を上げると、守弥がじっとぼくの顔を見ていた。

「・・・・」

「・・・・」

しばし見詰め合うも、守弥からの言葉はない。

まったく。

吉野から帰って来たんだぞ。お帰りなさい、ぐらい言ってくれてもいいじゃないか。

「今、吉野から戻った」

仕方なく自分から切り出すと

「はい」

と頷き、それきり黙っている。

それだけかよ!

さぞお疲れでしょう、とか、瑠璃姫のお加減はいかがでしたか、とかそういう人間味あふれる言葉があっても・・・・・

・・・まぁ、守弥がそんなこと言うわけないか。

心の中で肩をすくめ、それでも気を取り直してこれだけは言おうと思っていた言葉を口にした。

「政文の馬の手配をありがとう」

守弥の眉がぴくりと上がった。

「吉野までのあの距離で、疾風の速さに付いてこれる馬は父上のあの馬くらいだからな。助かったよ」

吉野行きを快くは思っていないだろうに、すばやく手配してくれた守弥の心積もりはやっぱりありがたかった。

「お陰で予定よりも早く吉野入り出来たし、瑠璃さんにも・・・・」

早く会えたし、と言葉を続けようとしたところで、ふいに守弥が口を開いた。

「若君。私は若君が早く吉野に着くために、あの馬を手配したわけではございません。あまりに遅れを取るような駄馬を連れていては、道中、何かと人の口の端にも上りましょう。そうなれば右大臣家の威信にも関わります。駿馬を駆っての長旅は、京に右大臣家あり、と広く里の者にまで知らしめる絶好の機会です。そのために手配したまでです」

一息に言い、また口をつぐむ。

顔色ひとつ変えずに、と言ってやりたいところだけど、よく見ると目の淵に変な力が入っていることに、守弥は気が付いていないんだろうな。

まったく。

照れやがって。

ぼくだって、守弥のくせのひとつやふたつは把握しているんだぞ。

困ったり照れたりしてる時の守弥は、良く見ると目の辺りに変な力が入るのだ。

ぼくがストレートにお礼を言ったから、きっと、今、守弥は困ってるんだと思う。

お礼を言われ慣れていないからなのか、ただ単に素直じゃないからなのかは判らないけど。

まぁ、そのどっちもなんだろう。

「でも助かったよ。ありがとう」

感謝の気持ち半分、困る守弥を見たい気持ち半分で、もう一度お礼を言うと

「右大臣家の威信のためですから」

案の定、守弥はますます無表情を装い、そのくせ妙に目に力を入れて重ねて言ってくる。

「・・・・ふぅん。ま、そういうことにしておくよ」

含みを持たせて言うと、守弥は何かを言いかけ、それでも一礼をして部屋を出て行った。

守弥の後姿を見送りながら、ぼくは小さく吐息した。

本当に素直じゃないよな。

ま、素直な守弥なんて、ばりばり仕事をこなす融くらい、似合わない気もするけど。

いいとこある奴なのに、あの性格で損しなきゃいいけどなぁ・・。

つらつら考えていると大江と数人の女房がやってきて、すぐに寝所を整え始めた。

何だ何だ、と思っていると

「兄から言われましたの。高彬さまがお疲れのようだから、すぐにご用意しろって」

代表して大江が言い、そうしてぼくのそばにやってきたかと思うと小声で

「吉野での瑠璃姫さまとのご様子は、またゆっくり聞かせてくださいね。小萩さんからちょっぴり文で教えてもらっちゃいましたけど。うふふ。高彬さまったら」

「・・・・」

小萩から何を聞いたか知らないけど異様に盛り上がっている。

ミーハーと言うのか俗っぽいと言うのか、守弥とは真逆に人間味あふれ過ぎのような気がする。

信じられないけど兄妹なんだよなぁ、この2人・・・。

足して2で割ったら普通になるんじゃないだろうか。

設えられた夜具に、ぼくはゴロンと横になった。

仕事もたまってるだろうから、明日は忙しくなりそうだな・・。

承香殿女御のところにも顔を出さなければ・・・。

それから融にも・・・

───だんだんと眠りに引きずり込まれて行く。

瑠璃さんの顔が浮かんだのを最後に眠りに付き、翌朝、睡眠時間が少ない割にはすっきりと目を覚ました。

早めに参内してたまりにたまっていた実務をこなし、ふと気が付くとすでに正午を回っていた。

身体を伸ばしがてら、調べものをするために図書寮へと向かっていると

「高彬!」

向うから融が小走りにやってきた。






<続>
(←お礼画像&SS付きです)

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Secre

非公開さま(Mさま)

春休みって短いようで長いですよね。
宿題ないから子どもは暇そうだし・・(笑)
私はこれから、寒い雨の中、保護者会です・・。こんな日は家で創作していたいのに~。
融ファンですか。いい味出してますよね、融。
「ミステリー」で、高彬にマジ切れされてる辺りの融が大好きです(笑)
では行ってきます。

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非公開さま(Rさま)

Rさん、こんばんは。
昨日は暖かかったのに、今日は真冬の寒さです。(明日はもっと寒いそう・・)
春休み中、我が家は桜を求めてふらふらと歩き回っていました。
細い道とか入ると、結構、お庭に桜のある家とかがあってずいぶんと楽しめました!

そろそろ最終回に近づいてきました。
が、どんな終わり方にするのか、実は今もって未定なんです。
書きながら考えているという、この計画性のなさ・・・。
よろしければお付き合いくださいませ。

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