*** 筒井筒のお約束をもう一度・・45 <高彬・初夜編> ***

『なんて素敵にジャパネスク〜二次小説』



           ※このお話は初夜編(完結済み)の高彬サイドの話です。
                        






***  筒井筒のお約束をもう一度・・45 <高彬・初夜編> ***  









翌朝、瑠璃さんと顔を合わせたときに気まずさと言ったらなかった。

部屋を覗くと、もうすっかり朝の仕度を終えた瑠璃さんがいたのだけど、ぼくを見てあからさまにツンと顔をそむけている。

近づいていくと

「なによ」

「怒ってる?」

「別に」

この上なくトゲトゲしい声で言われ、ぼくはがっくりと肩を落とした。

「えぇっとさ、その・・・昨日はすまなかったね。瑠璃さんの怪我を見て、その・・・度を失ってしまったんだ」

「・・・・」

「あんなところで、口うるさいこと言ってしまって・・・・ほんと、面目ないよ」

「・・・・」

「せっかく瑠璃さんがソノ気になってくれてたのに・・・」

「なってないわよ!ソノ気になんて。変なこと言わないで」

ぎょっとしたように瑠璃さんが目を見開き、次いでぱぱぱと顔が赤くなった。

「・・・ソノ気になってたのは、高彬の方でしょ」

思わず出た大きな声を打ち消すかのように、ことさらに声をひそめて言う。

「確かにぼくは、すっかりソノ気になってたけど・・・」

昨日、瑠璃さんをぼくをものにすると思ったのはウソじゃないし、瑠璃さんもそれに異論がないように思えたからこそ、ああやってコトに臨んだわけで・・・・・

とそこまで考えて、ふと疑問が湧いてくる。

「ところで、瑠璃さん」

コホンと咳払いをして瑠璃さんに向き直る。

「ソノ気って・・・どの気?」

「・・・だ、だから、つまり・・・」

瑠璃さんは目を白黒させ言葉に詰まっている。

「つまり?」

「ソノ気は・・・・・ソノ気よ」

「だから、どんな気?」

「だから・・・」

瑠璃さんはむぅとした顔で黙り込んだ後、何かを言いかけたかと思ったらまた口をつぐみ、じとっとした目でぼくを見ると、堪えきれないように吹きだした。

勝機を逃すまいとすばやく肩に手を回し接吻をしても、払いのけられもしなかったし怒られもしなかった。

ついつい長めの接吻になりながら、ぼくは何とか唇を離した。

「・・・だめだ。これ以上してたら、ソノ気になってしまう」

ため息を付くと、はじかれたように瑠璃さんが笑い出す。

「高彬って本当に真面目なのね」

「うん・・・」

ぼくはまたしても肩を落とした。

だからこそ、昨日、あの状況下で口やかましいことをクドクドと言ってしまったわけで・・・・・

我ながら情けないと言うか、男の風上にも置けないと言うか。

だけど、自嘲も過ぎればいっそ開き直ってきて(真面目で何が悪い)と言う気持ちになってくる。

瑠璃さんにもよくよく判っておいてもらった方が良いだろう、とぼくは瑠璃さんをもう一度、引き寄せた。

「確かにぼくは真面目だからね。だから、真面目に接吻をして真面目にソノ気になる」

言いながら接吻をすると

「真面目って大変なのね」

ほとほと感心したように瑠璃さんが言うので、ぼくは大きく頷いた。

「瑠璃さんの怪我がすっかり治ったら、その時は・・・真面目に瑠璃さんを押し倒すから」

瑠璃さんに昨日しようとしたことも、おそらく今後するであろうことも、決して遊び半分の気持ちなんかじゃない───

そういう意味合いも込めて言ったのに、瑠璃さんは素知らぬ風を装っている。

「こら、瑠璃さん。聞こえてるんだろ。真面目に返事しないか」

腕の中の瑠璃さんを揺らすと、聞き取れないほどの小さな声だったけど「うん」と言い、それでけでは足りないと思ったのかコクリと頷いた。

そっと顔を覗きこむと、うっすらと頬が赤い。

「───少し外に出てみるかい?」

すっかり気をよくして提案して見ると

「いいの?」

はっとしたように顔をあげた瑠璃さんの目が丸く見開かれている。

「だって、今日にはもう都に帰るんでしょ?」

「昼前に発てばいいんだ。少しなら大丈夫だよ」

小萩を呼んで瑠璃さんの準備を頼み、今度こそは政文にも忘れずに声を掛ける。

また迷子の童よろしく、探しに来られたらたまらない。

散歩に出ることを告げると、今すぐにでも発てる格好をしていた政文は不服そうに唇を尖らせた。

「若君、早めに発ちましょうよ。都入りが夜になってしまいますよ」

「明るいうちに峠さえ越えておければ大丈夫だよ。暗くなったら松明を持てばいいさ」

政文にもそれくらいの手綱さばきは出来るはずなのに

「でも・・」

と恨みがましい目でぼくを見ている。

「なんだ、おまえ。まさか暗くなるのが怖いのか」

からかうように言ってやると、果たして図星だったようで、政文は「うっ」と呻いたきり言葉に詰まってしまった。

「・・・・・」

まったく。情けない奴だな。

道中、何があってもぼくを<お守り>するんじゃなかったのかよ。

護衛が夜を怖がってどうするんだ。

その太刀は伊達か。

政文を任命したのは守弥みたいだけど、どうもぼくの側近どもは、どこか抜けてるんだよなぁ・・・。

瑠璃さんの部屋へと向かい歩き出すと、後ろで

「物の怪がぁ・・・鬼がぁ・・・」

と何とも情けなさそうに呟く政文の声が聞こえたけど、とりあえず無視してやった。

部屋に近づくと何やら騒がしく、どうやら外に出るのが待ちきれずに一人で庭に下りようとしてしている瑠璃さんと、それを止めようと躍起になっている小萩との攻防が繰り広げられており、ぼくに気付くと瑠璃さんは照れくさそうに舌を出してみせた。

いたずらを見つかった童のような仕草に、ぼくは笑ってしまった。

やっぱり瑠璃さんだよなぁ。

元気な瑠璃さんの様子に、嬉しさ半分呆れるの半分と言った感じの複雑な表情を浮かべる小萩に見送られて山荘を出る。

雨に打たれて桜の花びらはいくらか散ってしまったけれど、それでも、先日よりも一段と新緑は力強さを増しており、数日で一気に季節が進んだように見えた。

朝の澄んだ空気の中、ゆっくりと手を繋ぎながら歩く。

柔らかい風が瑠璃さんの髪をなびかせている。

瑠璃さんは、自分たちの<なれそめ>を知りたがり、ぼくは請われるがままになるべく正直に伝えた。

神妙な顔をしたり、時には笑ったりして聞いていた瑠璃さんは、全てを聞き終わると満足したのか

「わかったわ」

と大きく頷いた。

「うん」

頷き返し、ぼくたちはしばらくの間、黙って見つめ合っていた。

どちらからともなく来た道を戻り始め、その間、ずっと手は繋いだままで、ぼくは何とも言えない充足感に包まれていた。

いよいよ出立する時になり

「じゃあ、もう帰るから」

瑠璃さんに告げると

「うん」

瑠璃さんはこくんと頷き、次いで

「あたしももうじき帰るから。・・・待っててね」

はにかむように付け加えた。

「うん、待ってる」

最後に指先を握り、吉野を後にする。

暗くなる前に早く早くと政文に急き立てられたお陰か、まだ陽のあるうちに都に戻ってくることが出来た。

出迎えた家の者に疾風を託し、部屋で人心地ついたぼくは隅に控えていた女房に声を掛けた。

「守弥を呼んでくれ」





<続>

(←お礼画像&SS付きです)

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