*** 筒井筒のお約束をもう一度・・44 <高彬・初夜編> ***

『なんて素敵にジャパネスク〜二次小説』



           ※このお話は初夜編(完結済み)の高彬サイドの話です。
                        






***  筒井筒のお約束をもう一度・・44 <高彬・初夜編> ***  









「瑠璃さん」

抱きしめ髪をなぜながらも、やはり瑠璃さんの体調が気になった。

怪我も完治してないし、ついこの間だって熱が出たばかりだし・・・大丈夫だろうか。

「大丈夫?胸は痛まない?」

顔を上げ聞いてみると

「うん・・大丈夫よ」

小さく笑いながら瑠璃さんが頷いたので、ぼくも頷き返すと、ややあって

「でもなぜ?胸が痛むようなこと、するの?」

なんて聞いてくるので、伸ばしかけていた手が思わず止まってしまった。

「い、いや。そんなことは。そんな・・・多分、大丈夫だと・・・思う。・・・多分」

ここで<そんなことはしない>と断言してしまったら、嘘つきの汚名は逃れられないだろうからと、つい曖昧に答えてしまう。

「多分?」

さすがは瑠璃さん、するどいところを突いてきた。

「いや、大丈夫だよ。大丈夫。さ・・・いや、気を付けるから。うん」

最善を尽くす、と言いかけて、それじゃあまりに堅苦しいかと思い<気を付ける>に言い換える。

閨の場で、最善を尽くすとか言う言葉が出そうになるところが、本当に自分でも堅物だよなぁ、と思う。

まぁ、でもこういう性格は一朝一夕で変わるものではないし、おいおい直して行くしかないんだろうな・・。

なんとなく自分で納得していると、急に瑠璃さんがくすくすと笑い出した。

「なんだよ。急に笑って」

「だって、高彬ったらおかしいんだもの。一人で頷いちゃって」

「・・・・・」

まったく。さっきまで涙ぐんでたくせに。

散々、ぼくの気持ちを振り回しておいてこれだもんなぁ。

少しは意地悪な接吻をしてやろうと顔を近づけたのに、瑠璃さんのくすくす笑いが止まらずに接吻が出来ない。

「こら。真面目にやらないか」

何がおかしいのか言うほどに瑠璃さんは笑い出し、何度かの接吻を試みたものの、どうしても唇が重ならなくて、ぼくもとうとう吹き出してしまった。

ひとしきり笑い、笑いの収まったところで、もう一度、抱き寄せる。

「瑠璃さん」

笑いの名残をとどめた目元を指でたどり頬を包み、そのまま接吻をした。

手加減はしなかったし、出来なかった。する気もなかった。

強く唇を吸い舌で歯をなぞる。

瑠璃さんの喉が鳴り、呼吸が乱れかけたところで、そのまま首筋へと接吻をし、うなじに軽く歯を立てた。

袿を肩から外そうと手を掛け、もう一度だけ確認をする。

「・・痛くない?」

「うん・・・平気よ・・」

完治してないんだから全く平気なはずはないだろう、と頭の片隅では思いながらも、瑠璃さんの言葉に今は甘えたい気持ちが勝っていた。

それくらい、もう余裕がなかった。

単の合わせを開き胸元に接吻をすると、さっきの甘い匂いがより強く立ち込めた気がしてくらりとした。

掌で胸を包み、なめらかな肩に唇を這わせたところで、ぼくははっと動きを止めてしまった。

腕に巻かれた白い布はうっすらと血が滲んでいて、回りにはまだ乾いていないような傷がたくさんある。

ところどころ赤黒いあざもあり、胸のあたりが一番ひどかった。

「こんなに怪我がひどかったなんて・・・」

頭をガツンと殴られたような衝撃だった。

思えば瑠璃さんの怪我の程度を見たのは初めてで、ここまでひどいとは思ってもいなかったのだ。

本当に瑠璃さんは大変な目にあったんだ・・・。

下手したら命さえも危ういような事故だったんだ・・。

ぼくは少し事態を軽く見すぎていたのかも知れない。

「瑠璃さん」

気持ちを新たに瑠璃さんに話しかける。

「もう決して無茶はしないと約束してほしい」

「無茶って言われても・・・あたしもいきさつを覚えてないし・・」

違う、と、ぼくは大きく頭を振った。

経緯を覚えてるとか覚えてないとか、そういう問題ではないんだ。

「瑠璃さん。ぼくはもう絶対に瑠璃さんを一人で吉野に行かせたりはしないよ。たとえ瑠璃さんの思い出の地であったとしても、もうだめだ。瑠璃さんは一人にすると何をするかわからないからね」

「そんな、あたしは・・・」

瑠璃さんは不服そうに唇を尖らせた。

「下手したら瑠璃さん、死んでたんだよ」

死んでたんだ、のところを強調して言うと、瑠璃さんは自覚があるからなのか、それともぼくの剣幕に押されたのかは判らないけれど「うん」と小さく頷いた。

「瑠璃さん。この際だから言わせてもらうけど少し行動に気を付けた方がいいよ。瑠璃さんは前後の見境なく突っ走って突飛なことをするところがあるからね。今までも瑠璃さんはいろんなことをしているんだよ。お忍びをしたり、ひょっこり右大臣邸に現れたり」

「・・・・」

「それも瑠璃さんらしいな、と思ってぼくも何も言わなかったんだけど、こんな風に命の危険にさらされるようなことがあったとなると、そうも言ってられなくなる。わかるね?」

「う、うん・・・。あの、高彬・・・」

黙って聞いていた瑠璃さんの目が泳いた。

「なんだい」

反論があるなら聞こうと耳を傾けると

「ひ、単を着てもいいかしら?」

もごもごと瑠璃さんが言い、良く見たら瑠璃さんは胸がはだけたままのあられもない姿なのだった。

思わず胸に目が吸い寄せられてしまい、それでも内心の動揺を悟られないようにすばやく単を着せ、話を再開する。

「そもそも貴族の姫がひとりで山道を歩くということはおかしなことだよ。違う?」

「違わない・・・」

単の合わせをごそごそと直しながら瑠璃さんは言い、ぼくは大きく頷いた。

「だろ。もうひとりでふらふらと出歩くようなことをしてはだめだ。わかったね」

「でも、高彬・・・・」

まだ反論するのか、とさすがにちょっと頭にきて、少し大きな声が出る。

「でも、じゃないだろ。瑠璃さんは言い出したら聞かないところがある。童の頃からそうだ。小萩や家の者が言っても、おそらく聞かないんだと思う。そこは瑠璃さんのいけないところだ」

「・・・・・」

「今回のことで、どれだけ内大臣さまや母君さまがお心を痛めていらっしゃるか・・・・。姫らしくなれ、とか、そういうことを言うつもりはないけど、でも、これからは少し気を付けなければいけないよ。わかったね」

「う、うん・・・、わかったわ」

ようやくぼくの言いたいことが伝わったのか、瑠璃さんは反省したように頷き、ぼくは安堵して部屋を後にし───

あれ?と思ったのは、一人床に就いた時だった。

(さっき、瑠璃さんをぼくのものにすると決めたはずなのに。一体全体どうしてこうなったんだろうか・・)

首を捻り、あれこれ考えているうちにぼくはまたしても自分で自分を殴りつけたくなってしまったけれど、でももう、時すでに遅し───なのだった。






<続>

次回は初夜編を一回お休みして「牡丹日和+おまけの話」をアップする予定です。


(←お礼画像&SS付きです)

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Secre

非公開さま(Mさま)

○○○な方向・・・(笑)
黒高彬。結構、好きですよ、私は。
だって絶対、資質ありますよね?ね?

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非公開さま(Mさま)

Mさん、おはようございます。

な、何ですかー、最後の会話は!
ジャパネスク源氏物語バージョンと言うか、高彬が瑠璃を自分好みの女に育てて行くような、そんな流れではないです!
しかも記憶を失くしてるのを利用してて、ビミョーに卑怯(笑)
これ、続きが気になる・・・。

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