*** 筒井筒のお約束をもう一度・・43 <高彬・初夜編> ***

『なんて素敵にジャパネスク〜二次小説』



           ※このお話は初夜編(完結済み)の高彬サイドの話です。
                        






***  筒井筒のお約束をもう一度・・43 <高彬・初夜編> ***  









「瑠璃さん」

呼びかけると、ほんの少し瑠璃さんの視線が動いた。

「今日も外に出てみるかい?」

「いいわよ。今日は、別に」

なるべく優しく言ったつもりだったのに、返ってきたのは何とも素っ気ない言葉だった。

硬い表情と口調から、怒っているのが伝わってくる。

「何、怒ってるの」

半分以上、理由に見当は付くけれど、それでも一応聞いてみると

「怒ってないわ」

相変わらず硬い声で瑠璃さんが言った。

「瑠璃さんは怒ると、頬をふくらませるからね。すぐわかる」

瑠璃さんの両頬を手で挟もうとすると

「いやよ。やめて」

すばやくよけられてしまった。

うーむ、これは相当怒っているぞ・・。

念のため、ひとつずつ可能性を消して行こうと思い

「その・・・後宮に行くなと言ったことを怒ってるの?」

「そんなんじゃないわ」

視線を合わせずに言う。

「じゃあ、何?」

「だから、怒ってなんかないってば」

とうとう瑠璃さんは顔をそむけてしまった。

「じゃあ・・・」

次の可能性を聞こうと瑠璃さんの顔を覗きこんだぼくは、はっと固まった。

瑠璃さんは唇をかみ締め、目に涙を浮かべていたのだ。

「瑠璃さん・・・」

「やだ、あっち行っててよ」

泣き顔を見られないようにか、身体を捻ってぼくから遠ざかるような仕草をして───

そんな瑠璃さんの姿に、ぼくは自分で自分を殴りつけたくなってしまった。

また瑠璃さんを泣かせてしまった・・・・。

何のために吉野まで来たと言うんだ。ちくしょう。

───ごめん。

言葉が出ずに代わりに抱きしめると、瑠璃さんの身体が一瞬震え、いやいやするように頭を振った。

───本当にごめん。

「瑠璃さん、泣かないで」

「泣いてなんかないわよ。これは・・・」

「あくび?」

「え?」

やっと瑠璃さんがぼくを見てくれて、ぼくは視線を逃すまいと顔を覗きこんだ。

「前もあったんだ。ぼくが仕事人間過ぎるって、瑠璃さんを怒らせちゃったことが。その時、泣いてる瑠璃さんに『泣かないで』って言ったら『これはあくびよ』って言われたんだ。『あたしが高彬のことで泣くわけないでしょ』って」

「・・・・・」

「今も、ぼくが昨日から宮廷の話ばかりするのが嫌だったんだろう?」

「・・・・・」

返事はなかったけど、目が頷いた気がした。

「ごめんよ。せっかく瑠璃さんと吉野にいるのにね。時々、自分でも自分の堅物ぶりがいやになるよ」

本当にごめん、と頭を下げると、瑠璃さんは慌てたように頭を振った。

「あ、あたしの方こそ、ごめんなさい。いつも我儘ばっかり言ってたみたいで・・・。今も・・だけど・・」

口ごもりながら言い、その顔は真っ赤だった。

(可愛いな)

そう思ったら自然に接吻をしていた。

涙の残る頬に、額に、まぶたに・・・・、また頬に。

「くすぐったいわ・・」

首をすくめる瑠璃さんを抱き寄せ唇に触れる。

あ、と瑠璃さんの口から小さな言葉が漏れ、その言葉ごと唇を封じると、同時にどんどん自分の気持ちが高まっていくのがわかった。

瑠璃さんの唇は柔らかく、そっとなぞっているうちに我慢が効かなくなってくる。

唇を開けさせ、舌をそっと絡めるように這わせると、瑠璃さんの身体が緊張したように強ばるのが伝わってきた。

「・・こういうのはいや?」

唇を離し聞いてみると、本当に小さくだけど瑠璃さんが首を振ってくれたので、ぼくは再度、唇を重ねた。

いや、と言われても、続けていたかも知れないな・・・

そんなことを思いながら接吻をする。

少し痩せたようにも見える瑠璃さんの身体は頼りなくて、ぐっと力を込めたら折れてしまうんじゃないかと思われた。

薄く傷の残る頬に唇を寄せ、そのまま耳、首筋に接吻をすると、また瑠璃さんの身体がびくりと震えた。

いつかの時もやっぱり瑠璃さんはこんな風に身体を強ばらせていたことが、今更ながらに思い出される。

「やっぱり瑠璃さんだ。反応が・・・同じだね・・」

何だか嬉しかった。

たとえ瑠璃さんの記憶が消えていたとしてもぼくは覚えているわけで、それだけで十分なような気がしてくる。

ぼくが瑠璃さんを忘れるんじゃなくて本当に良かった。

「瑠璃さん・・」

強く抱きしめると、ふわりと甘い匂いが立ちこめてきて、瑠璃さんの胸元から目が離せなくなる。

思わず手が動きそうになり、ぼくは慌てて拳を握った。

そっと瑠璃さんの身体を離し息を吸い込むと、瑠璃さんが不思議そうな顔でぼくを見てきた。

「その・・・このままだと、ぼくも抑えが効かなくなりそうだし、瑠璃さんはまだ怪我が治ってないし・・・・」

「・・・・・・」

「記憶を失う前の瑠璃さんは、結婚はきちんとした手順でしたいって言ってたんだ。だから、今ここで、瑠璃さんを押し倒す・・・いや、その、無理に、・・・・するわけには・・・」

何を言いたいのかいい加減、自分でも判らなくなり口をつぐむと、少しすると瑠璃さんがそっと身体を寄せてきた。

ぼくの胸に顔をうずめ、じっと動かないでいる。

「・・・・・」

いい、のかな・・。

頬に手をあて顔を近づけて行くと、瑠璃さんは静かに目を閉じた。

唇を合わせても、瑠璃さんはもう驚いた声を上げたり身体を強ばらせたりはせずに、おとなしくぼくの接吻を受けている。

唇を離し、見つめ合う。

瑠璃さんの潤んだ目で見つめられ、ぼくは心を決めた。

ここで瑠璃さんを───抱く。

ぼくのものにする。

瑠璃さんを抱き上げ、几帳の後ろに敷かれたままになっている夜具の上にそっと下ろした。






<続>

(←お礼画像&SS付きです)

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Secre

ダイキチさま

ダイキチさん、こんばんは~。

> 原作でも、何度もお預け喰らってますし!

そうなんですよね、え~と、確か3回?4回?
髪箱投げつけられた時、融が切りつけられた時、鷹男の文の時、尼寺の時。
あ、4回ですね(笑)

>煌姫は眼中にないってのが当たり前ってのも、笑えますね。←私の妄想ですが(笑)

きっぱりなかったでしょうね!
だって煌姫は守弥の恋人だって思ってたくらいですから。
朴念仁って、勘違いの仕方も半端ないって感じですよね(笑)

> 続き、とても楽しみにしてます!でも、無理なさらないでくださいね!気長に待ってます(笑)

はい、ありがとうござます!

>高彬編書いていると、時々、展開を変えてしまいたくなるんですよ。
なんだか、わかりますよー!!高彬、不憫過ぎる(笑)

原作でも、何度もお預け喰らってますし!

それでも、純情を突き通した高彬だから、愛されるワケです(笑)もしかしたら、途中で夏姫のことが気になったとしても!煌姫は眼中にないってのが当たり前ってのも、笑えますね。←私の妄想ですが(笑)

続き、とても楽しみにしてます!でも、無理なさらないでくださいね!気長に待ってます(笑)

非公開さま(Rさま)

Rさん、こんにちは。

ふふふ、そうですね、最後のお預け(笑)
あ、でも、これは自発的に「預けた」わけですから、言うなればオウンゴール?!

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ダイキチさま

ダイキチさん、こんにちは!
瑠璃編との読み比べ、読んでいただきありがとうございます。
高彬編書いていると、時々、展開を変えてしまいたくなるんですよ。
高彬、このまま一気にいっちゃえー、一気に最終回だー、とか。
高彬目線で書いていると、何度も流れるのが本当に不憫で不憫で・・(笑)

瑠璃編と読み比べながら、読んでます。先の展開を知ってても、やっぱり気になります。
高彬、がんばれー

葵さま

葵さん、こんばんは~。

高彬なら、そんな風に思いそうだなぁっと思って。
高彬みたいな人いたら、絶対に好きになっちゃいますよね。

非公開さま(Mさま)

Mさん、こんばんは~。

だって、これくらいかっこいいことは言わせてあげないと!
さぁ、次回、はたして高彬は瑠璃を自分のものできるのか?!否か?!
乞うご期待!


・・・って、未遂に終わるのは周知の事実なんですが。
でも、この勢いで瑠璃を自分のものにする高彬を見てみたい誘惑にかられています(笑)

No title

瑠璃さんが忘れていても、ぼくが憶えているから、それでいいって、感動しました。こんな男性、私にも居ないかなぁ~

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