*** 筒井筒のお約束をもう一度・・39 <高彬・初夜編> ***

『なんて素敵にジャパネスク〜二次小説』



           ※このお話は初夜編(完結済み)の高彬サイドの話です。
                        






***  筒井筒のお約束をもう一度・・39 <高彬・初夜編> ***  









どれくらいそうしていたのか、ふいに日が翳り、どうやら雲が流れて日差しを遮ったようだった。

春とは言え、木陰はひんやりとしているし、こうして日が翳ってくると尚の事、風が少し冷たく感じられる。

あまり長くいると瑠璃さんの身体に障るだろう。

最後に小さく接吻をするとそっと瑠璃さんの身体を離した。

「瑠璃さん」

そろそろ戻ろうか・・・と言いかけると

「なぁに」

瑠璃さんが顔を上げて言い、その頬がほんのりと赤い。

まさか熱でもぶり返したのか、と一瞬焦り、でもすぐに、もしかしたら瑠璃さんはさっきぼくが教えたばかりの<瑠璃さんらしい返事>をしてくれてるのでは・・・と気が付いた。

試しにもう一度「瑠璃さん」と呼んでみると

「だから・・・なぁに」

照れたように下を向き、目をそらしたままに言う。

───やっぱりだ。

瑠璃さんなりにぼくとの距離を縮めようとしてくれているのかも知れない。

「瑠璃さん」

顔を上げさせ、目を覗きこむ。

「誰より・・・・好きだよ」

接吻をしながら背中に手を回すと、瑠璃さんがほんの少しだけ身体をぼくに預けてきた。

目を閉じ接吻を続けながら、ふと瞼の裏が明るくなり、どうやらまた日が出てきたみたいだった。

良かった、これで少しは暖かくなるだろう・・と思っていたところで、ふいに瑠璃さんに突き飛ばされた。

突き飛ばされたと言っても、身体を少し離されただけだったのだけど、びっくりして目を開けると、瑠璃さんが顔を真っ赤にしている。

びっくりしたように目を開き、何か言いたげに唇を押さえ───

「あ、ごめん・・」

いろいろ嬉しくて、ちょっと強引な接吻・・・だったような気がする。

そうだった、瑠璃さんにとってぼくはまだ昨日会ったばかりの人で、いくらプロポーズを受けてくれたとは言え、記憶が戻ったわけではないわけで・・・。

「瑠璃さんは覚えてないんだよね・・・」

ふいに今までに瑠璃さんと交わした接吻や、それ以上のあれこれを思い出してしまった。

「お、覚えてないわよ。そんなこと・・・してたの?」

そんなこと?

心の中を見透かされたようでドキドキしてしまう。

「そりゃ、恋人同士だから、さ。いろいろと・・・」

「いろいろっ?!何を?」

顔と言わず耳まで赤くした瑠璃さんに詰め寄られ、思わず身体をひく。

「い、いや。何を、と言われると・・・困るんだけど・・」

ほんと、困る・・・。そんなこと口で説明出来るわけが・・・・・

いや───、待てよ。

「知りたい?」

瑠璃さんの顔を覗きこむ。

「口で説明するより、手っ取り早い方法があるんだけど」

更に顔を近づけると、ぎょっとしたように今度は瑠璃さんが身体を引き、目を白黒させながら

「い、いいわよ、まだ知らなくって・・・」

もごもごと口の中で言葉を転がし、語尾はと言うと消え入るように小さい。

「まだ?・・・ってことは、いつかは知りたいってことだよね」

すかさず切り返すと、しばらくは黙って横目でちらちらとぼくを見ていた瑠璃さんが、やがてくすくすと笑い出した。

何がおかしいのかしばらく笑っていたかと思うと、真顔に戻り、コホンとひとつ咳払いをすると

「えぇっと・・・その・・・そうね。いつかは、知りたいわ」

いつかはね、いつかよ、今じゃないわよ、と念を押すようにぶつぶつ呟き、恥ずかしそうに目をそらしている。

「うん」

いつかで十分だ。その言葉が聞けただけで嬉しい。

手を取り指を絡めると、やっぱり瑠璃さんの指先は少し冷たくなっていた。

「そろそろ帰ろうか」

立ち上がりかけると

「まだこうしていたいわ」

瑠璃さんは首を振った。

「せっかく外に出たんだもの。こんなに天気も良いし」

同時に空を見上げると今まさに雲が太陽に掛かりかけていて、瑠璃さんは雲を振り払うかのように、ふぅっと息を吹きかける素振りをしている。

ふと、その横顔に幼い頃の瑠璃さんの姿が重なり、ぼくは口をつぐんだ。

本当に、その頃の瑠璃さんの隣にいたのが、ぼくだったら良かったのにな・・・。

「やっぱり帰らなきゃだめよね。小萩にも早く帰るように言われてるし・・・」

ぼくが黙っているのが気になったのか、諦めたように吐息まじりに言い

「そうね。帰りましょ」

自分を納得させるように頷いている。

「いいよ。もう少しいても」

気がついたらそんなことを言っていた。

「でも、小萩が・・・」

「大丈夫、ぼくがいるんだし。何かあったらぼくが瑠璃さんを守るから」

「・・・・」

ぼくを見る瑠璃さんの目は、何と言うか期待と信頼に満ち溢れているように見えて、ぼくはくすぐったい気持ちになってしまった。

思えば、瑠璃さんにはいつもぼくが年下であることをからかわれていて、こんな風に<頼られてる>という実感を持ったことはなかったような気がする。

万が一、記憶が戻らなかったとしても、こんな風に瑠璃さんに頼りにされる人生って言うのも悪くないかも知れないな。ふむ。

そういえば今の瑠璃さんはぼくの年齢を知らないわけだし、いっそこのまま言わずにいれば、年下のイメージを払拭できるのではないだろうか・・・・。

『ねぇ、高彬。これってどうしたらいいのかしら』

『あぁそれはね、瑠璃さん。こうしたらいいんだよ』

『ありがとう。やっぱり高彬は頼りになるわ』

そんな会話を想像して一人悦に入っていると、遠くから、ふと人の声がした。






<続>

さて、誰の声でしょう・・・?

(←お礼画像&SS付きです)

コメントの投稿

Secre

非公開さま(Sさま)

Sさん、こんにちは!

高彬のささやかな妄想です(笑)
確かに吉野の地で気持ちの整理ができたのは高彬の方かも知れませんね。
いろいろ言えたわけですし。

声の主の答え合わせは・・・次回のお話で!

みそさま

みそさん、こんにちは!

そうなんです、高彬ってものすごい楽天的な一面があると思うんです。
堅物で責任感の塊みたいな楽天家(笑)
どっちやねん!って感じですけど、まぁどちらも兼ね備えているのが高彬の魅力なんでしょうね。

> さて、声の主は…?
> オーソドックスに小萩かな~とは思いますが。
> いや、ちょち待った。
> やっぱ政文ですかね。

ふふふ。答え合わせは次回のお話で^^

> きっと守弥は懲りずに「記憶が戻らないのなら好都合。このまま吉野に籠もって下さればいいものを」とか思ってるんでしょうね~。

はっ。瑠璃が崖から落ちた本当の原因は、まさか守弥が突き飛ばしたとか・・・?!(笑)

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

以前、瑞月さんも仰っていたかと思いますが、高彬ってポジティブと言うか楽天的ですよね~。
そこが可愛いんですけど。(≧ε≦)

さて、声の主は…?
オーソドックスに小萩かな~とは思いますが。
いや、ちょち待った。
やっぱ政文ですかね。
守弥に「若君の吉野行きは渋々だが了承した。だが、それとこれとは話が別だ。いいか、政文。もし若君と瑠璃姫が近しくなりそうなことがあれば、何があっても邪魔するのだ」とか何とか言われて。(笑)
きっと守弥は懲りずに「記憶が戻らないのなら好都合。このまま吉野に籠もって下さればいいものを」とか思ってるんでしょうね~。
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