*** 筒井筒のお約束をもう一度・・31<高彬・初夜編> ***

『なんて素敵にジャパネスク〜二次小説』



           ※このお話は初夜編(完結済み)の高彬サイドの話です。
                        






***  筒井筒のお約束をもう一度・・31 <高彬・初夜編> ***  









文を読み進むうち、顔色が変わっていくのが自分でもわかった。

───瑠璃さんが崖から落ちて怪我を?

文は小萩からのもので、乱れた筆跡から小萩の動揺が伝わってくるようだった。

それでも何とか冷静に事態を伝えようとしているのか、それによると、一人で出掛けた瑠璃さんがいつまでたっても帰って来ず、心配しているところに意識を失ったままの瑠璃さんが運び込まれたのだと言う。

幸いにも命を脅かすような大怪我は負っておらず、とりあえずは医師の言いつけ通り、水分だけを与えながら目を覚ますのを静かに待っているとのことだった。

使いの者が控えたままなのも構わずに、ぼくは立ち上がってウロウロと歩き回った。

怪我ってなんだ、怪我って。

どうして、また瑠璃さんは一人で出歩いたりしたんだ。

小萩は、家の者は、どうしてそれを止めなかったんだ!仮にも内大臣家の姫だぞ。

諾々と瑠璃さんの言いなりになるなんて・・・・!

そこまで考えて、ぼくは大きく頭を振った。ひとつ息も吐き出す。

家人の説得に耳を貸すような人じゃないと言う事は、ぼくが一番判ってることじゃないか。

まずは落ち着こう。出来ればもう少し情報を───

そうだ、融だ。

三条邸にはもっと詳しい連絡が行っているに違いない。

詰め所を飛び出し、普段、融がいる殿舎に行ってみたものの、この時刻、すでに官人は皆、退出した後らしく人の気配すらまばらで、融もいなかった。

その足で厩に向かい、馬番をしてる顔見知りの雑色に声を掛け、手頃な馬を借りる。

とうに眠気なんか覚めていた。

三条邸を目指し、夜の都大路をひた走る。

築地塀の影をくっきりと作るほどの煌々とした月明かりのお陰で、夜道でも楽に走ることが出来た。

走るほどに春の温気をはらんだ夜風が頬を撫ぜて行く。

気ばかりが急いた。

突然の来訪に驚いた顔をしたものの門番はずぐに門を開けてくれ、半ば飛び降りるように馬から下りると西の対屋の融の部屋に向かう。

部屋は真っ暗で釣灯篭さえも消えていた。

もしかしたら連絡を受けて早や吉野に出立したのでは・・・一足遅かったか・・・と思ったところで、部屋の中からかすかな物音が聞こえた気がして、ぼくはためらうことなく妻戸を開け中に入った。

部屋に差し込む月明かりを頼りに室内を見回すと、物音は几帳の向うから聞こえてきており、回り込むと融が寝ていた。

何のことはない、物音と思ったのは融の寝息だったのだ。

「融」

声を掛けても反応はなく

「おい、起きろって」

肩を揺すると「うぅぅ・・」と何とも間の抜けた声を出して、融は目を開けた。

それでも状況が掴めないらしく、目をこすりながら辺りを見回し、ようやくぼくと目が合った所で

「高彬じゃないか、どうしたの」

上体を起こしながら、あくびまじりに言った。

「どうしたのって・・・」

ぼくは口ごもった。

この様子からして、融はまだ知らないのかも知れない。

ぼくは慎重に切り出した。

「融、落ち着いて聞けよ。瑠璃さんが・・・・崖から落ちて怪我をしたらしいんだ」

「うん、知ってる」

「は?!」

あまりのあっけない返事に思わず大声が出る。

「知ってるっておまえ・・・、心配じゃないのか。よく呑気に寝て・・・」

「命には別状ないって言うんだしさ、ここで慌ててもしょうがないじゃないか。まぁ、父さまと母上はすごい心配してるみたいだけどね」

「・・・・」

「明日の朝、皆で吉野に向かうことになったんだよ。着くころには姉さんも目を覚ましてるって。あーあ、明日、早いのに高彬に起こされちゃったよ」

「・・・・」

「向うに着いたら姉さんの様子、知らせるからさ」

「・・・うん、頼む・・」

「もう寝ていい?」

「あ・・・うん」

パタンの横になり衾に埋もれる融を見ながら、ぼくは何と言うか・・・・気が抜けていた。

確かに言われてみれば融の言うとおりで、今ここで慌ててもしょうがないわけで・・・。

命に別状がないと言うのだし、様子を見るしかない、か・・。

来た時とは比べ物にならないくらい、ゆっくりと馬に揺られながら、ぼくは月明かりの中を内裏へと戻った。

融からの連絡を今か今かと待ちわびながら数日間を過ごし、ようやく融からの文を受け取ったのは、久しぶりに白梅院に戻っていた時だった。

「高彬さま、お待ちかねのお文ですわ」

大江が持ってきた文を受け取り、ぼくは大急ぎで目を走らせた。

『高彬、姉さんは目を覚ましたよ』

書き出しの言葉にホッと胸をなでおろす。

文はまだ続いた。

『だけど・・・・、姉さんは頭を強くぶつけたみたいで、どうやら記憶を失くしてしまったみたいなんだ』

記憶を・・・?

・・・・失くした・・・?

「・・・・・・」

頭の中が真っ白になり、ぐらりと回りの景色が揺らいだ。





<続>


更新遅くなりすみません。連載、再開しました!
皆さん、今年もよろしくお願いします。

瑞月

(←お礼画像&SS付きです)

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Secre

ななさま

ななさん、あけましておめでとうございます。
今年もよろしくお願いします^^

> 待ってましたー!吉野でのタカアキラ&瑠璃のまた恋に落ちるところ、大好きです。

そうです!2人は恋に落ちるんです。小林明子です!
(小林明子、知ってます??古過ぎでしょうか・・・)
高彬目線ならではのエピソードも書いて行きたいと思っています。

こももさま

こももさん、あけましておめでとうございます^^
あっと言う間に1月も中旬ですね~。^◇^;)
>
> 高彬、いよいよ吉野で記憶の無い瑠璃さんと再会ですね。

はい、ようやくここまできました!

> 切なく苦悶する高彬を是非ともじっくり描いていただきたいものです♡

切なく苦悶・・・う~ん、素敵な響きですねぇ(笑)
せっかくの高彬目線なので、悩める心の内を書いていきたいと思います。
最後は良い思いが出来るんだから、それなりに苦悶してもらわなければ!(?)

こちらこそ今年もよろしくお願いします。

明けましておめでとうございます!

待ってましたー!吉野でのタカアキラ&瑠璃のまた恋に落ちるところ、大好きです。タカアキラ視点楽しみです!!!

瑞月さん、こんばんは☆彡
あけましておめでとうございます。
出遅れのコメですみません(^◇^;)

高彬、いよいよ吉野で、
記憶の無い瑠璃さんと再会ですね。
よそよそしく呼び掛けられて、
グッと切ない高彬が楽しみ過ぎです o(≧▽≦)o

まっさらな瑠璃さん相手なのに、
イチャイチャといい思いするところもいいけど、
切なく苦悶する高彬を、
是非ともじっくり描いていただきたいものです♡

ではでは、
今年もどうぞよろしくお願いします。

みそさま

みそさん、明けましておめでとうございます!
今年もよろしくお願いします~^^
たくさん高彬愛を語っていきたいです。

> 大物の片鱗が見えましたよ。(o^∀^o)
> きっと融は大器晩成タイプなんですね!

融も将来は大臣クラスの官位にはなるんですよね?(と、なぜか疑問形)
あの時代はどんなに無能でも(笑)家柄がよければそこそこ出世できたようですし、融って案外、高彬とはまた違った方面で有能かも知れませんしね。
でも、融って結婚しても愛人とか作りそうな気がします。
惚れっぽいみたいだし。
由良が瑠璃に泣きついて、瑠璃が激怒してそうです。
そこを高彬が取り成して・・・って感じでしょうか。どっちにしても高彬って大変そうですね(笑)

> そして、ついに、高彬は吉野へ旅立つのでしょうか。

はい、そろそろです!

> 「心配と不安を抱えたまま吉野に行った割には、結構、イイ思いしてんじゃん、高彬」な吉野編。(笑)

最後、高彬が真の「イイ思い」をするまでお付き合いください!

明けましておめでとうございます!
今年も、鬱陶しいくらいに高彬愛を語っていきますので、よろしくお願いします!!

どシリアスになるはずの展開で、この融のマイペースっぷり。
さすがですね。
大物の片鱗が見えましたよ。(o^∀^o)
きっと融は大器晩成タイプなんですね!
高彬の乗馬シーンも見れて、新年早々、ウキウキしてます。(≧∇≦)
そして、ついに、高彬は吉野へ旅立つのでしょうか。
「心配と不安を抱えたまま吉野に行った割には、結構、イイ思いしてんじゃん、高彬」な吉野編。(笑)
楽しみです。
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