*** 筒井筒のお約束をもう一度・・26<高彬・初夜編> ***

『なんて素敵にジャパネスク〜二次小説』



           ※このお話は初夜編(完結済み)の高彬サイドの話です。
                        






***  筒井筒のお約束をもう一度・・26<高彬・初夜編> ***  









例えば<ご無礼致します>と言う言葉は、仕える者が上のものに話しかける時に付ける枕詞のようなもので、実際に本当に<ご無礼>であると言うことは滅多にない。

滅多にないのだけど・・・・

昨夜の小萩の

『ご無礼致します』

あれは、確かに「ご無礼」であったような気がする。

だけど小萩が悪いわけではないし・・・。

───はぁ・・・

ぼくは襟元を緩めると、ごろんと寝転がった。

見慣れた自室の天井が目に入る。

どうしてこういうことになるかなぁ。

昨夜、今まさに瑠璃さんとの結婚に向かおうとしていた矢先、思わぬ横槍が入ったのだ。

三条邸に宮中から使者があり、帝が譲位されたと言うことを知らせてきた。

すぐに参内するように───

との伝言で、もうそうなったら臣下として出仕しないわけには行かず、ぼくは振り切るような思いでその場を後にしたのだ。

泣きそうな顔で瑠璃さんに

『行っちゃうの?』

と言われた時にはさすがに心が動いたけれど、だけど、ここで参内しなければ

「衛門佐の頼りにならぬことよ」

の悪評は避けられず、それは今後の宮廷生活において大きなマイナスなのだ。

そうなれば昇進にも差し障りが出るだろうし、それはひいては生活の困窮にも繋がる恐れがあり、瑠璃さんと結婚すると決めた今、それだけは避けなければいけないわけで、結局ぼくの取る道はひとつしかないのだった。

小萩はオロオロしていたし、瑠璃さんに至っては呆然自失のていで、ぼくが話しかけてもロクに言葉も出てこないような状態だった。

無理もないよな。

女性にとってあの段階での横槍と言うのは、ぼくとはまた違った意味で大変なことだろうから。

瑠璃さんなりに色々、覚悟もしてくれてたと思うし。

あの後、取るものもとりあえず参内してみれば、やはり思った通り、宮廷内は大混乱に陥っていた。

一昔前のように、部族間での血で血を洗うような闘争がない今の世では、御世が変わると言うのが、文字通りの一大政変なのだ。

あれこれと雑務に忙殺され、ようやく仕事から解放され白梅院に戻ってきたのがついさっき。

部屋には、何とも複雑な顔をした大江がいた。

昨日、三条邸に向けて出発する時には

『高彬さま。何と言ってもムードですわ、ムードが大切ですわよ』

『明日の朝は、うーんと素敵な後朝の歌をお作りくださいませ、ね。選りすぐりのご料紙をいくつか揃えておきますわ』

などと、まるで自分が結婚するかのような興奮ぶりで、まさかこういう事態になるとは想像もしてなかったのだろう。

なまじ盛り上がっていただけに、その落胆も大きいようだった。

それはもちろんぼくも同じで、大江の落胆振りに少しだけ慰められる思いがした。

今までにも何度かいいところでジャマが入ったことはあったけれど、まさか天下晴れての結婚初日に横槍が入るとは思ってもなかった。

「──若君」

ふいに声を掛けられて頭だけで振り向くと、いつの間に来たのか部屋の隅に守弥が控えていた。

「ふいのご参内、さぞお疲れのことでしょう。台盤所に言って何か夜食でも作らせましょうか」

これ以上はないと言うくらいの優しい声で言う。

「いいよ、向うで軽く済ませてきたから」

「ではすぐに寝所を用意させましょうか」

「・・・・・」

大江とは反対に、昨日はほとんど口を開かなかったくせに今は随分と滑らかに口が回るらしく、その理由がこれ以上はないという程に明確であるだけに、かえって腹立だしさが増す。

返事がないのを肯定とでも受け取ったのか、守弥は女房に言いつけるために立ち上がりかけ、ぼくは同時にむっくりと起き上がった。

おや、と言う顔で守弥がぼくを見た。

「守弥。お前、嬉しいんだろ。瑠璃さんとの結婚が流れて」

直球で言うと

「はい」

守弥はあっさりと頷いた。

口の端には笑みが浮かんでいる。

「・・・・・」

おまえなぁ、・・・・噓でもいいから少しは否定しろよ。

5歳の童でも、もう少し気を使うぞ。

「嬉しいなんてもんじゃありません。このタイミングでの帝のご譲位、これも御仏のお導きでしょう」

普段、仏の効力なんて露ほども信じてないくせに、シャアシャアと言う。

よく言うよ、とぼくはそっぽを向いた。

うやうやしく頭を下げて見せると、守弥は立ち上がった。

部屋を出て行こうとする後姿が、意気揚々と言う感じなのが小憎らしい。

「ぼくは絶対に絶対に瑠璃さんと結婚するんだからな!」

背中に向かって言うと、守弥はゆっくりと振り返った。

そうしてたっぷりと5秒はぼくの顔を見た後

「夢を見るのは良いことです」

にやりと口の端を片方だけ上げて言い

「御前失礼」

と渋い声で決めると出て行った。

くっそー、守弥の奴め。

まるで瑠璃さんとの結婚を、見果てぬ夢みたいな言い方しやがって。

人の不幸を喜んでると、いつか罰が当たるぞ。

守弥の足音が聞こえなくなると、昨日からのあれやこれやの疲れがドッと来て、ぼくはもう一度ゴロンと寝転がったのだった。






<続>

(←お礼画像&SS付きです)

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Secre

非公開さま(Hさま)

Hさん、おはようございます。
これからの高彬に、ぜひご期待ください!

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みそさま

> 高彬以上に堅物なはずなのに、なぜか彼はコメディアン。(≧∇≦)

わたしの中でも、守弥はしっかりコメディアンです。
守弥を見てると、コメディの本質を垣間見る思いがします(笑)

そういえば!みそさん。
誘惑に逆らえず(笑)例のスピンオフ、書いてしまいましたよ~。
いやー、はまりそう(笑)
かなり好きな分野です。
バカバカしいほどのギャグ作品なので、公開方法などを思案中です。

『女盗賊 小萩』(笑)
高彬が真剣であればあるほど、考えていることが妙で面白いです。
本人は至って真面目なんだろうけど、そこがまた笑えてしまう。

そして、私の脳内守弥が小躍りしてます。
スキップしてます。(笑)
高彬以上に堅物なはずなのに、なぜか彼はコメディアン。(≧∇≦)
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