*** 筒井筒のお約束をもう一度・・25<高彬・初夜編> ***

『なんて素敵にジャパネスク〜二次小説』



           ※このお話は初夜編(完結済み)の高彬サイドの話です。
                        






***  筒井筒のお約束をもう一度・・25<高彬・初夜編> ***  









抱き寄せた瞬間、瑠璃さんが息を飲むような気配がしたけれど、ぼくは手を緩めることなく、むしろしっかりと抱きしめた。

鼻先を瑠璃さんの匂いがかすめる。

「ずるいわ、高彬。当てずっぽう言うなんて」

ぼくの胸の辺りで瑠璃さんの声がして、瑠璃さんが何か言うたびにその振動が直に伝わってくる。

本当は当てずっぽうなんかじゃない。

あの頃、瑠璃さんに関してのどんなささいな情報も知りたかったぼくは、瑠璃さん付きの女房や融付きの女房に世間話を装っては、あれこれ聞き出していたのだ。

だけど、そんなこと一生、瑠璃さんに言うつもりはないし、まぁ、それくらいの秘密は瑠璃さんも許してくれるだろう。

「でも、当たってたじゃないか」

どうとでも取れる返事をしながらも、ぼくは瑠璃さんが身じろぎするたびに鼻をかすめる匂いに、正直めまいがしそうだった。

髪の匂いとも香とも少し違う、瑠璃さんの匂い・・・。

「瑠璃さんだ」

瑠璃さんの顔を上げ目をのぞきこむと、丸い目がぼくを見つめ返してきた。

そっと唇を合わせる。

瑠璃さんの唇は温かく、と言うことは瑠璃さんはぼくの唇を冷たく感じているのかも知れないな・・・

そんなことを思ったけど、でも、ぼくはもう<ぼくの唇、冷たい?>と聞く気にはなれなかった。

瑠璃さんを横抱きに抱いて立ち上がると、几帳を回り込む。

帷子が揺れて、真新しい絹の匂いが辺りにただよった。

瑠璃さんをそっと寝所へ下ろし、ともすればすぐに次の行動に行きたがる自分の心を諌めるように、ゆっくりと瑠璃さんの髪をなぜる。

なぜたり指に絡めたりしていると、二ヶ月も瑠璃さんに会えずによく生きてこれたものだと、不思議な気持ちになってくる。

「二ヶ月は・・・長かったよ・・・」

思わず本音を漏らすと、瑠璃さんは小さく笑い

「・・・うん」

聞き取れないほどの小さな声で呟き、それでは足りないと思ったのかコクンと頷いた。

おずおずと言う感じで瑠璃さんの手がぼくの頬に触れ、一瞬だけ固まってしまった。

瑠璃さんが自発的にしてくれることは、何でも嬉しい。

瑠璃さんが信じられないくらいウブなことを知っているから尚更だ。

もう一度、接吻をすると今度こそはもう抑えることが出来なくて、そのまま指で髪を分け入り耳朶に唇を当てると、瑠璃さんは(あ)と驚いたような声をあげた。

慌てて唇を離す。

自分で思っていたよりも強く───ひょっとしたら歯を立てるほど強く、瑠璃さんの耳に接吻をしていたのかも知れない。

───驚かせてどうするんだ、少し、落ち着けよ・・・

ひとつ心で深呼吸をして、細心の注意を払いながらぼくは出来るだけ落ち着いて優しく見えるように接吻をした。

唇、首すじ、喉もとへと唇を伝わせながら、そっと瑠璃さんの身体に触れる。

力を入れ過ぎないように、驚かせないように、ゆっくりと落ち着いて・・・。

呪文のように心で唱えながら、手を這わせていく。

「大丈夫?瑠璃さん」

瑠璃さんの様子が気になって言うと、瑠璃さんは何か言いたげな顔で見返してきた。

「だめだって言われても、今日は手加減はしないよ」

言ってから(何、ひどいこと言ってんだ)と思ったけど、後の祭りだった。

瑠璃さんの気が変わって<やっぱりやめる>なんて言い出すんじゃないか思ってしまったのだ。

それは・・・やっぱり困るから。

「そういう約束だろ」

前に会った時にそういう約束をしていたのも確かなので顔を覗き込みながら言うと、瑠璃さんは一瞬、口を真一文字に結び、まるで何かを決心したかのようにコックリと頷いた。

その顔からは隠しようのないほどの緊張が伝わってきて、いっそ他の時だったらからかってやりたくなるほどだった。

そうしなかったのは、きっとぼくだって同じような顔をしているに違いないと思ったからだ。

瑠璃さんに頷き返しながら、ぼくはぼくである決心をした。

まぎれもない初心者であるぼくが、うまくリードしたりスムーズにことを進めることなど不可能なのだ。

かの光の君だって、最初から手練手管に長けていたわけではないだろうし、あれは物語だからその辺りは美化しているだけで、きっと初めての時はかなりかっこ悪かったに違いない。

それに確か、光の君の初めての相手は人妻だったはずで────

ともかく。

変にかっこつけるのはやめよう。

当たって砕けろ、だ。

いや、ほんとに砕けたらそれはそれで困るんだけど・・・。

瑠璃さんの合わせに手をかけると、ぼくはそれを左右にそっと開いた。

むき出しになった瑠璃さんの身体に灯台の明かりがチラチラと映り、ぼくはその光景に思わず息を止めてしまった。

<綺麗だ>と、そう言うつもりだったのに、情けないことにきちんとした言葉にならず、わずかにうめき声が漏れただけになってしまった。

そっと身をかがめていくと、恥ずかしさのためなのか、瑠璃さんははじかれたように合わせを両手で掴んで覆った。

手をよけようとすると

「待って・・・高彬・・・」

上ずった声で瑠璃さんが言った。

・・・・ここで「待った」はないだろう、瑠璃さん。

難なく瑠璃さんの両手を絡めて、ぼくは再度、合わせを開いた。

「手加減しないって言っただろ、瑠璃さん。待ったはなしだ」

唇を合わせ、そっと下へたどっていく。

柔らかい胸元に唇が触れたところで、遠くから足音が聞こえてくることに気が付いた。

ぼくの沓を取りに来たのかもしれないと思ったけれど、それにしてはかなり急いでいるようにも聞こえる。

足音は部屋の前で止まり、どうやら中の様子を窺っているようだった。

まさか────

賊か?

足音が女性のそれだったから、女盗賊ということも考えられる・・・。

さすがに今日は刀を持ってきていないけど、相手が女だったら丸腰でも行けるだろう。

とっさにそう考えたところで

「・・・ご無礼致します。高彬さま、お聞きでいらっしゃいますか」

女盗賊の、もとい、小萩の声が聞こえてきた。






<続>

(←お礼画像&SS付きです)

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Secre

ダイキチさま

高彬、可愛いですよね~。純情可憐!(笑)

高彬の心情、可愛すぎます(笑)
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