***短編*** 七夕伝説<おまけの話の別バージョン> ***

『なんて素敵にジャパネスク〜二次小説』




         注)このお話は一話完結です。
  
           「七夕伝説」の<おまけの話>の別バージョンです。
           途中までは同じですが、まったく違う展開に進んでいきます。
            
           ※セクシャルな表現がありますので苦手な方は閲覧ご注意ください。
        
           





***短編*** 七夕伝説<おまけの話の別バージョン> ***









抱きしめた瑠璃さんからは雨の匂いがして、でも、すぐにそれはぼく自身の衣に着いた匂いなんだと気が付いた。

「高彬、雨の匂いがする」

笑いを含んだくぐもった声で瑠璃さんが言い、匂いを確かめるように息を吸いこんだ。

「姉小路あたりから雨が降りだしたからね。衣が少し濡れてしまったのかも知れないな」

「じゃあ早く乾かさなきゃ」

慌てたように身体を離し、すぐにでもその手配をしそうな瑠璃さんを、ぼくは封じ込めるようにもう一度、抱きしめた。

「いいよ、放っておけばじきに乾くさ」

さっき腹をくくって、あれだけの口説き文句を言ったんだ。

だから少しはその見返りを期待したって・・・なんて瑠璃さんに言ったら、枕箱のひとつやふたつ飛んで来そうで言えないけど、だけど、そういう気持ちが全くないと言ったら嘘になる。

心の中で次の動作に移るタイミングを計っていると、まるでその時を見定めたかのように、御簾の向う、七夕の壇の脇の燈台の芯がジッと音を立てて火が消えた。

どうやら油が切れてしまったらしい。

この雨のため、軒下の釣灯篭の火も消されており、正真正銘、たったひとつの明かりだった燈台の火が燃え尽きて、部屋の中は真の闇に包まれた。

抱きしめている瑠璃さんの姿さえ見ることができない。

「油が・・・。小萩に・・・」

身じろぎをした瑠璃さんの動きを再度、封じると、暗闇の中、手探りで両手で瑠璃さんの頬をはさむ。

ハッと瑠璃さんが息をのむ気配がして、ぼくは瑠璃さんが何か言うよりも早く接吻をした。

無意識に目を閉じていて、ふと、心の中で

(目を開けてても閉じてても、どうせ同じ暗闇なのにな)

などと思い、そんなことを考えていたらどうやら随分と長い接吻になってしまったようで、瑠璃さんが身をよじるようにして唇を離した。

「・・・油、継ぎ足さなきゃ」

「いいさ、このままで」

袿に手を掛けて肩から滑らせると、今度は小さく息を飲むような気配があり、そのままそっと瑠璃さんの身体を横たえると

「ちょ、ちょっと、高彬・・・何を・・・」

暗闇の中、あやふやで頼りなさそうな瑠璃さんの声がした。

構わずに腰紐に手を掛けると、今度こそは瑠璃さんははっきりと抗議めいた言葉を口にした。

「格子も蔀戸も開け放しなのよ」

「ここまで暗ければ何も見えないよ。物音は雨音がかき消してくれるし」

断言すると、瑠璃さんからの返事はなく、返事がないのは了承ということだろうと解釈して、ぼくはするりと腰紐の結びをほどいた。

実際、雨足はさっきよりも強くなっており、雨音がうるさいほどに部屋を満たしている。

少々の、────いや、かなりの物音をたてても大丈夫だろうと思われた。

髪をなぜ首筋に唇を這わせ、単の合わせに指をすべりこませると、瑠璃さんの身体が震え

「ねぇ、高彬。暗すぎて・・・何だか、ちょっと・・・」

またしても頼りなげな、どこか怯えたような声が聞こえてきた。

「・・・この間は、明るすぎるって文句言ってたじゃないか」

「・・・・・」

暗すぎても明るすぎてもダメだと言う瑠璃さんの気持ちはわからなくもないけど───

わかるからこそ、聞き入れてあげたくないと言うビミョウな男心もあるんだよなぁ・・・。

なんて言ったら瑠璃さんは激怒するだろうから、言わないけど。

やがて、瑠璃さんの口から言葉にならないような吐息が漏れ出し、まったく姿が見えない闇の中から聞こえてくると言うのが思いがけずに扇情的で、ぼくはすっかり度を失ってしまった。

度を失ったからと言って後戻りするかと言うとまったくその逆で、夢中になりながらも、ぼくはふと、さっきの瑠璃さんの台詞───

(好きな人と一年に一度しか会ってはいけませんって言われて、はいそうですかって引き下がる?)

を思い出してしまった。

・・・そうだよなぁ、引き下がらないだろうなぁ。

瑠璃さんの言ってる意味とはちょっと違うかも知れないけど、確かに好きな人と年に一度しか会えないと言うのはオトコとして辛いものがあるだろうな・・・。

この気持ち、牽牛だったらわかってくれるような気がする。

ますます牽牛に親近感、だ。

堪えきれずに上げた瑠璃さんの声は、ぼくが断言した通りに雨音がかき消してくれて───

七夕の夜のこの雨に感謝しつつ。

───ごめん。年に一度の逢瀬の日なのに。

ぼくは密かに牽牛に謝ったのだった。






<終>

(←お礼画像&SS付きです)

コメントの投稿

Secre

ぺんぺんさま

ぺんぺんさん、おはようございます。お久しぶりです~!

ご懐妊されていたんですね。
つわりがおさまってきたということは、そろそろ安定期と呼ばれる月数でしょうか。
つわりは本当に辛いですよね・・。大変でしたね。
出産予定日は来年?ですか?楽しみですね。

そしてお誕生日だったんですね。おめでとうございます。
次の誕生日は、赤ちゃんがいてにぎやかになりそうですね!

お元気そうでよかったです。
どうされているのかなぁ・・・と思ったりしてましたので^^
コメントありがとうございました。
身体に気をつけてお過ごしくださいね!

お久しぶりです。

瑞月さま、こんばんは☆
お元気でしょうか。お久しぶりです(^^)

瑞月さまの書かれた作品、いつも拝読しておりました。
私も今年はいろんなことがあり、なかでも一番の出来事が妊娠でした。ようやくつわりが楽になり、このような拙いコメントではありますが、お邪魔させて頂きました。

本来ならこのような超プライベートなコメント、こちらの作品のコメント欄には相応しくないと思うのですが、この作品の発表日が私の誕生日だったんです。だからとても嬉しくって(*^^*)
瑞月さまから誕生日プレゼントをいただいた気に勝手になってます(笑)

瑞月さまもプライベートがとても多忙のようですね。
体調には気をつけてくださいね。
高彬の初夜編、近々更新されるのでしょうか。今から楽しみにしています♪

さりいさま

そうです、これが前回のコメントに書いたセクシャルバージョン、最初におぼろげにあった構想です。

途中、瑠璃が「それよ、あんた、今いいこと言ったわ」と言ったばかりに、ああいうコミカルな展開になりました。

> 2人の関係性が、本当にいいですね。

本当に対等で思いあってるからこそ、コミカルもセクシャルもしっくりくるんでしょうね!


まるさま

> 瑞月さんが書かれたようにこの時代の夜はほんとに真っ暗闇でしょうしね。声と手触りと香りがすべてだなんて…エロティックすぎますね~!(笑)

本当にそうなんですよね。
この時代の「夜の闇」って言ったら、今の「夜」とは比べ物にならないほどの闇だったはずですしね。
今なんて、電気消してもテレビや携帯のどこかのランプが光ってるし、外からは街灯の明かりが入ってくるし。
多分、昔の人の方が五感が優れてたんででしょうね。
気持ちを歌にして送りあうなんて、どれだけの感性だったんだろうって思います。
何だかそういう時代の秘め事って、もうそれだけでエロティックですよね~。

みそさま

> 前回の、瑠璃のペースに乱され「あれ、おかしいぞ。こんなつもりじゃなかったはず…」な高彬も、なぜかしっくりきますが。(笑)

そうそう、そうなんですよね。
高彬って、ほんと、どんな役柄(?)もこなしてしまう名優のようなキャラクターだと思います。
どっちも絵になるんです。そしてどっちも捨てがたい・・・。

>ここでいかなきゃ、ねえ…。

いついくんだ、って感じですよねぇ・・。

> しかし、『弾正』と聞くと、色好みとか男色の殿方をイメージしてしまうのは私だけでしょうか……。

私もですよ、何ででしょ。
「ざ・ちぇんじ」に出てきてましたっけ?
それか、リアルな話しだと和泉式部のお相手になった人の一人・・・でしたっけ???

んきゃーーーーーー!!!
瑞月さん、天才!凄すぎです。これか噂のセクシャルバージョン!
鼻息荒く(?!)読みふけってしまいましたよ。同じ導入なのに、こんな話にもなるなんて、本当に凄いです!そして、こっちは思いっきりロマンチックで、いいなぁ。

高彬の「なんて言ったら瑠璃さんは激怒するだろうから、言わないけど。」が妙にツボでした。策士のくせに、可愛げがあって、ズルイぞ、こら!って感じでしょうか(笑)

2人の関係性が、本当にいいですね。
あー今日はいい夢見られそう(笑)素敵な話をありがとうございました!

2パターンもおまけが読めてとーっても楽しかったです!
どちらも同じくらいニヤニヤしちゃいました。良い夢が見られそう(笑)
瑞月さんが書かれたようにこの時代の夜はほんとに真っ暗闇でしょうしね。声と手触りと香りがすべてだなんて…エロティックすぎますね~!(笑)

きゃあ

こんなanother storyも素敵ですね!(≧∇≦)

前回の、瑠璃のペースに乱され「あれ、おかしいぞ。こんなつもりじゃなかったはず…」な高彬も、なぜかしっくりきますが。(笑)
オトコ高彬も捨てがたい!
まだまだ若いですしね。
七夕、暗闇、口説き文句とお膳立てバッチリですもの。
ここでいかなきゃ、ねえ…。

しかし、『弾正』と聞くと、色好みとか男色の殿方をイメージしてしまうのは私だけでしょうか……。
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