拍手お礼SS<6>

*** 拍手お礼SSの寄せ集めです。投稿順に載せています ***





*** 夢うつつ ***




うっすらと目を開けると、視界いっぱいに何かが飛び込んできた。

何だろう・・・と、ぼんやりした頭で考え、二度、三度、瞬いたところで

(あぁ、高彬の肌ね。そっか、あたし、あのまま眠ってしまったんだ・・・)

ようやく頭が回りだした。

そのまま裸の胸に顔をうずめると

「起きたの?」

上から声が聞こえてきた。

返事の代わりに頷くと、背中に回されていた腕に力が入り、ぎゅうっと抱きしめられた。

高彬の匂いが鼻をかすめる。

いつもの嗅ぎ慣れた香の匂いと、ほんの少しの汗の匂い。

「あたし・・・どれくらい寝てた?」

「半刻くらいかな」

思ってたより長くは寝てなかったのね。

「あの後、急に動かなくなるから、気でも失ったかと正直あせったよ。寝てるだけだってすぐに判って安心したけど」

何となく笑いを含んだ声で言われて、かぁっと頬が熱くなる。

「大丈夫?どこか痛いところとか、ない?」

重ねて言われて、頬と言わず、今度は身体全体が熱くなってしまう。

さっきまでのあれやこれやを、生々しく思い出してしまった。

「心配するくらいなら・・・・」

少しは手加減してくれたらいいじゃない。あんなに際限なしに・・・

途中で飲み込んだ言葉まで、高彬にはしっかり伝わったみたいで

「瑠璃さんに本気を見せるって約束してたからね」

「約束なんかしてないわよ。高彬が勝手に・・」

「大見得切ったわけじゃないってわかっただろ?」

言葉を遮られ、あたしは口をつぐんだ。

決して戯言ではなかった高彬の<本気>。

このまま認めてしまうのは、何だか悔しい。

あたしもいい加減、気が強いわよね。

でも裸で抱きかかえられているこの状況で、どんな反撃したところで勝てっこない気はするんだけど・・・。

それに正直なところ、気だるくてたまらない。

声を出すのさえ億劫に感じるくらいだもの。

「・・・ずるいのよ。あたしはイヤだって言ってるのに、押さえつけてきて。力でかなうわけ・・・ないじゃない」

精一杯の反撃を試みるものの、我ながら口調は弱々しくて、案の定、高彬は喉の奥で笑っただけだった。

「瑠璃さんが本気でイヤがってるかどうかくらいは判るつもりだよ」

抱き寄せながら、額に接吻をする。

「もう少し、眠ったらいい」

頬にかかる髪をすくいながら優しい声でそう言い、そのまま髪をなでられる。

高彬の大きな手は気持ち良くて、すぐにまどろみの世界に引きずり込まれてしまう。

「高彬は?・・・どうするの?」

目を閉じたまま呟くと

「ぼくは少ししたら参内する。起こさずに行くから、瑠璃さんはゆっくり寝てなさい」

「・・・・」

このまま参内するって・・・本気?

あたしはきっと、次に目覚めたって身体が思うように動かないに決まっているのに。

体力の違いをまざまざと見せ付けられてしまった気がするわ・・・。

ぼんやりとした頭でそんなことを思いながら、あたしは眠りに落ちていき────

眠りに落ちる寸前、高彬の接吻を受けたような気がしたけれど、夢うつつの心地には、それが定かのことなのか否かわからなかった。













*** 逢いみてのち ***





牛車に揺られながら、泣き止まない童の泣き声が耳に止まり、ふと思い立って物見窓を開けた。

瑠璃さんの部屋を出た時には薄暗さを残していた空は、今はすっかりと明け、朝の日が斜めに射している。

大路には牛車や、背に大きな荷物を背負って行く商人、童の手を引きながら歩く市女笠姿の女性などが行き交っており、どうやら先ほどからの泣き声はこの童のようだった。

母親と思しき市女笠の女性がしきりに何かを諭すように話しかけ、それでも泣き止まないと、最後にはやれやれとでも言うように抱き上げた。

抱き上げられたことで満足したのか泣き声はぴたりと止まり、母親はさぞ重いだろうと思うけど、ぼくは小さく笑ってしまった。

────微笑を誘われる、と言ったところだろうか。

皆、頑張ってるんだなぁと思うし、抱き上げられた童はすごく幸せそうに見えたから。

どういうわけだか、瑠璃さんと結婚してから、母子の姿が目に付くようになった気がする。

いつかは自分たちも、と思ってるからかも知れないし、母親と瑠璃さんの姿をどこかで重ねて見てしまっているのかも知れない。

まぁ、まだ少し先のことだろうけど・・・・。

ぼくは物見窓を閉めると寄りかかって目を瞑った。

体力には自信があるけど、一昨日は瑠璃さんと梅を見るためにあまり寝ていないし、今日だって朝方に少し眠った程度だ。

今晩は宿直だし、さすがに三日連続の睡眠不足は身体に悪そうだ。

眠くはないが、少し眠っておいたほうがよいだろう。

瑠璃さんを一人にはしない、と約束したからには、ぼくは瑠璃さんより先に死ぬわけにはいかなくて、そのためには身体にも気を付けなくちゃいけないんだよなぁ・・。

ぼくが残ったらやっぱり寂しいだろうけど、だけど、その思いを瑠璃さんが味わうより、ぼくが味わって済むのならその方が断然いい。

瑠璃さんは寂しがり屋だから・・・

「若君」

ウトウトしかけたところで、従者の声で目がさめた。

「三条邸の早馬からこちらが届けられました」

「三条邸から?」

簾の隙間から差し出されたものを受け取ると、それは見覚えのある扇だった。

袂を探ってもなくて、どうやら瑠璃さんのところに忘れてきてしまったらしい。

そうか、昨晩は三条邸に着くなりそのまま────

行儀悪く脱ぎ散らかされた衣に瑠璃さんが呆れるのも封じて・・・・。

扇を開くと、ふわりといい匂いがした。

ぼくのいつもの香と瑠璃さんの香と、ついさっきまで瑠璃さんと過ごしていた寝所の匂い───。

扇が夜具に紛れ込んでいたことに気付かないまま、夜を過ごしてしまったのか。

起き出した瑠璃さんが、夜具の下に隠れていた扇に気付いて届けてくれたのだろう。

扇を袂にしまおうとして、ぼくはふと手を止めて改めて扇を見た。

と言うことは、この扇は知っているのか。

昨晩の瑠璃さんのあの姿を、あの声を。

───誰にも言うなよ。

心で呟いて、ぼくは扇を指先でピンと弾いたのだった。






(←お礼画像&SS付きです)

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Secre

非公開さま(Mさま)

Mさん、こんにちは。
こちらのSSは「春はあけぼの」&「春はあけぼの<おまけの話>」の続編言うか、後日談としてアップしたお話です。
「枕草子シリーズ」から入って行くと出てきます(#^^#)
インスピレーションと言いますか、何となーく頭の中で二人の情景が自然と浮かんでくるので、それを文章に起こすだけ・・・と言う感じです。
ただ単に妄想力がたくましいんだと思います^^;

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非公開さま(Rさま)

Rさん、こんにちは。
拍手お礼のボタン、携帯からだと見えないのかも知れません。
妄想の赴くままに前後の見境なく(笑)つらつらと書いているという恐ろしい場所です。
時々、更新するんですよ。

ところで、ご質問(?)の件。
私も専門家ではないので詳しいことは判りかねますが(笑)瑠璃と高彬と限定するならば、やっぱり勝つのは高彬ではないでしょうか?!
武官だし若いし。
ただしこの見解は医学的、科学的ではなくて、あくまで妄想的ですよ(笑)

はい、私もホームドラマは想像出来ないです。

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