*** 筒井筒のお約束をもう一度・・21<高彬・初夜編> ***

『なんて素敵にジャパネスク〜二次小説』



           ※このお話は初夜編(完結済み)の高彬サイドの話です。
                        






***  筒井筒のお約束をもう一度・・21<高彬・初夜編> *** 









───はぁ・・・

脇息に突っ伏し頭を抱えたまま、ぼくは何度目かの大きなため息をついた。

激しく自己嫌悪、だ。

瑠璃さんは、どう思っただろうか───?あんなことされて。

あんなこと、と言うのは、その、つまり・・・。

我が右大臣邸に女房として潜り込んでいた瑠璃さんを、ついさっき三条邸に送り届けてきたわけなのだけど。

帰り道、ドライブをしたいと瑠璃さんが言い出し、嵐山まで連れて行ってあげたところまでは良かった。

朝日に輝く桂川に瑠璃さんもはしゃいだ声をあげていたし、川原を少し散策したりして、なかなかいいムードだった、と思う。

問題はその後だ。

川原に停めた牛車の中でぼくは瑠璃さんに、その、狼藉を働いたと言うか、無理強いをしたと言うか、いや、もちろん途中で我に返ってすぐにやめたのだけれど・・・・だけどなぁ・・・。

とどのつまり、ぼくは瑠璃さんにかなり紳士的でないことをしでかしてしまったのだ。

瑠璃さんが女房姿に扮してまで右大臣邸に潜入した理由は、ぼくと煌姫との仲を疑ったからで、それはぼくを嬉しがらせるのには充分な理由だった。

それに、瑠璃さんも正式な結婚を待たずとも良い───つまりはOKしてくれていて、ぼくはかなり浮かれていた。

更には出掛けに、いよいよこれからと言うところで大江に声をかけられて中断してしまい、そういうモロモロの事情が重なって、牛車での無理強いに繋がってしまったんだと思う。

別れ際は楽しく瑠璃さんと話せたし、瑠璃さんに嫌われるようなことにはなっていないと思うけど・・・。

ふぅ・・・。

もう一度、大きく息を吐き出したところで、ぼくは勢いをつけて立ち上がった。

いつまでも一人で反省会をしてたって仕方ない。

馬でも走らせてくるか。

気分転換になるだろうし、それに正直、少し身体を動かして、昨夜からの火照った頭と身体を冷やしたい。

瑠璃さんもあれこれ一人で思い悩んで大変だったんだろうけど、ぼくだって色々大変なんだよ、ほんと。

ああいう状態で中断することが、どれほど辛いか。

瑠璃さんは全然、わかってないんだろうけどな。

馬舎に着き、誰のいないのをいいことにぼくは愛馬にまたがった。

「あ、若君。どちらへ」

後ろで政文の声が聞こえた気がしたけれど、ぼくは止まることなく、そのまま北門をくぐりぬけた。







********************************************************






東に向かって走っていると、ほどなくして鴨川が見えてきた。

そういえば、瑠璃さんはことあるごとに「鴨川に飛び込んでやる」と言うけれど、実際に鴨川を見たことがあるのだろうか。

どうせなら桂川じゃなく、鴨川のほとりに連れて来てあげたほうが良かったかな。

まぁ、それで土地勘付けられて、本当にいつか飛び込まれたら困るけど。

速度を緩め、川沿いを進む。

桂川ほどの水流はないけれど、それでも馬上から見える日の光を受けた川面のさざめきは綺麗だった。

川を渡る風はさすがに涼しくて、文字通り、身体の熱が下がっていくのは心地よく、さっきまでのうつうつとした気分から回復していくのが自分でもわかった。

過ぎたことをくよくよ考えたって始まらないしな。

ぼくたちだけの話しとは言え、二月後には結婚しようってことになってるんだし、同じ考えるならそういう建設的なことを考えたほうがいいだろう。

少し進んだところで馬を下り、綱を引き川瀬まで行くとたっぷりと水を飲ませてやった。

「うまいか、疾風」

童殿上してた頃、ぼくのために父上が常陸の荘園から選りすぐった馬を取り寄せてくれ、その頃から密かに呼んでいる名を呼びながら首筋を撫ぜてやると、疾風は嬉しそうにブルルッと頭を振った。

そろそろ守弥がぼくがいないことに気付く頃だろうし、面倒なことになる前に帰るとするか。

守弥のことだ、ぼくがいないと気付けばあれこれと家人に聞きまわり、すぐにぼくが馬で出たことを突き止めるに違いないのだ。

そうして政文に向かって「どうして若君をお止めしなかったのだ」などとうるさいことを言うに決まってる。

新参者の女房が瑠璃さんだと知った守弥がどう出てくるか、今の段階では皆目見当が付かないけど、まぁ、しばらくは様子を見るしかないだろう。

再び、疾風にまたがり、手綱を取ったところで、ふと、三条邸の前を通って帰ろうかと思いついた。

少し回り込めばいいだけだし、騎馬なら尚の事あっと言う間だ。

自分の思い付きにほくほくした気分になりながら疾風の脇腹を蹴ると、疾風はまるでぼくの心弾みがわかったかのように一声いななくと颯爽と駆け出した。

富小路を渡り、万里小路を越えたあたりで、遠くに三条邸の築地塀が見えてきた。

融と遊ぶために三条邸には童の頃からちょくちょく通っていたぼくは(まぁ、もうひとつの目的があったけど)牛車の物見窓からこの築地塀が見えると

(もうじき三条邸に着くんだ)

とわくわくしたものだった。

だから今でもこの塀を見ると、何だか懐かしいようなくすぐったいような気持ちになる。

北門の前を過ぎると、門衛たちが一瞬(あれ?)と言う顔でぼくを見たような気がしたけど、そのまま通り過ぎた。

瑠璃さん、上手く邸に戻れたかな。

『お忍びは慣れてるから大丈夫よ』とか何とか、姫君らしかぬこと言ってたけど・・・。

角を曲がり、疾風の歩調を緩め進んでいると、西門から一台の牛車が出てくるところだった。

(しまった)

と思った時には、時すでに遅く

「あれ、高彬じゃないか」

物見窓が開き、融が声をかけてきた。






<続>

(←お礼画像&SS付きです)

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Secre

maiさま

maiさんでしたか^^
お忙しそうですが、休息をとって身体をいたわってくださいね。
もうすぐに年末になるし、何かとバタバタとする時期ですから。
私ももちろん、高彬ラブです~。

失礼しました!

瑞月さま 名前が消えてたのでしょうか、気がつきませんでした。失礼しました。maiです(^^;)9月は忙しくて、時々お訪ねするぐらいでしたが、いつも楽しみにしています。やっぱり、高彬、ラブです!

Re: No title

おはようございます。

(すみません、お名前の記載がなかったもので・・・)

> 新婚ラブラブもいいけど、思いが叶うまえのイロイロも楽しいですよね!

そうなんです!
特に高彬なんて、片思いが長かった分、色んな思いがあったと思うんですよねぇ。

No title

「まぁ、それで土地勘付けられて、本当にいつか飛び込まれたら困るけど。」この高彬のセリフにツボりました!瑞月さまの高彬の書き方って、ほんと、高彬らしい、って感じがしてすごく好きなんです。
新婚ラブラブもいいけど、思いが叶うまえのイロイロも楽しいですよね!

さりいさま

> そう、ぼくだって、イロイロ大変だよねぇ(笑)

そうなんです、あれこれイロイロ大変なんですよー(笑)
なんてったって青春真っ只中!ですからね。

ヨッシーさま

>高彬が、困る所見たいです!!

この先、たくさん出てきますので、お楽しみに(?)!

あぁー安定のうまさです!読ませて頂いて無性にホッとしました。
思春期の高彬って感じで、あれこれ考えてますね。ふふふ。可愛い。
また高彬が色々悩みながら成長していくのを、楽しみにしてます!

そう、ぼくだって、イロイロ大変だよねぇ(笑)

高彬、苦悩してる。瑠璃さんがらみ大好物です。スンドメ、最高♪ 男しては、大変だよね。でも、ニヤニヤしちゃうし、高彬が、困る所見たいです!!
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瑞月(みずき)です。

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