*** 筒井筒のお約束をもう一度・・20<高彬・初夜編> ***

『なんて素敵にジャパネスク〜二次小説』



           ※このお話は初夜編(完結済み)の高彬サイドの話です。
                        






***  筒井筒のお約束をもう一度・・20<高彬・初夜編> *** 









瑠璃さんの寝息が当たっている首の辺りが、かぁっと熱くなってくる。

腕に当たる柔らかい感触はもしかしたら・・・

思う間もなく、ぼくを夜具か何かと勘違いしたのか、瑠璃さんがまるで抱きつくかのように腕を回してきた。

────嘘だろ・・・

勘弁してくれよ。寝相は良い方だって断言してたじゃないか・・・

呆然としつつも、この緊急事態を乗り切るべく、ぼくはすばやく頭を働かせた。

瑠璃さんだと思うからダメなんだ。

融だと思おう。

「・・・・」

だけど、融がこんな柔らかいわけないし、何よりも融とひとつ夜具の中で寝るとか、しかもぼくに腕を回してくるなんてありえないわけで、どうにも設定に無理がある。

ならば、少しは気が逸れるかと白氏文集の中の一節を暗唱してみたものの、そんなことくらいで全身を密着させている瑠璃さんの気配から気が逸れるわけもなく、焼け石に水だった。

───仕方ない。

ぼくは小さく唇を引き結んだ。

可哀相だけど、こうなったら実力行使しかないだろう。

驚かれたり泣かれたりするかも知れないけど、大元での同意は取れているわけだから瑠璃さんも判ってくれるはずだ。

そっと腕を外し起き上がった。

見下ろす瑠璃さんは、急に支えがなくなったのが寝ながらでも不安定なのか少し身じろぎをして、だけど変わらずに眠りこけている。

身体の向きを少しずらし、ゆっくりと瑠璃さんに近づいていき、至近距離まで来たところでぼくは動きを止めた。

眠る瑠璃さんはいつもより幼く見えて、まじまじと見てしまった。

ぼくの部屋で、安心しほどけきった顔をして眠る瑠璃さんの顔を見ていたら、とてものこと先に進めなくなってしまい───

・・・やっぱりぼくには無理だ。

小さく頭を振り、少し考えてから瑠璃さんの額に軽く接吻をする。

我ながら情けないと思うけど、今のぼくに出来る実力行使はこの程度だ。

額に接吻をされた瑠璃さんが少し反応をした。

額を気にするような仕草をし、起きるかと思ったけど、そのまま眠ってしまった。

虫にでも刺されたと思ったのかも知れない。

今度は頬に接吻をしてみたら、同じように気にする仕草をし、それでも眠ったままだった。

そういえば、いつだったか融が「姉さんは一度寝たら、簡単には起きない」とか言っていたっけ。

そうだ、確か何度起こしても起きなくて、困った小萩がお粥を枕元に置いたら瑠璃さんが目を覚ました・・・とか、そんな話だったはずだ。

瑠璃さんらしいと言えばらしくて、つい笑いがこみあげてきてしまう。

何となく調子に乗って唇に接吻をすると、瑠璃さんはやっぱり眠ったままだった。

瑠璃さんとは今までに何度か接吻をしているけれど、まだ数えられる程の回数で、そのうちの一回はぼくだけが知っている接吻だと思うと、何だかドキドキしてしまった。

ドキドキした気持ちのまま横になり、目を瞑る前にもう一度瑠璃さんの横顔を見ると、やっぱり瑠璃さんはほどけきった無防備な顔をしていた。

好きな人の寝顔っていいな。

そっと手を伸ばすと瑠璃さんの指先に触れ、ぼくはしっかりとその手を握った。

これくらい、許してくれよな。

心の中で瑠璃さんに話しかけ目を瞑った。

今度こそは本当に瑠璃さんの寝息を子守唄代わりにウトウトしてしまい、ぼんやりとした意識の中で、そういえばお粥で目を覚ました瑠璃さんが、ぼくの接吻では起きなかったなぁ、お粥に負けたのか・・・なんて思いつつ、いつのまにかぼくは眠ってしまっていた。





**********************************************************





鳥のさえずりで、目が覚めた。

格子からはあるかなきかの白い筋が入り込んできており、どうやらまだ朝にはなりきっていないようだった。

隣の瑠璃さんは相変わらずの夢の中で、ぼくは解けかかっていた手をもう一度ぎゅっと握りなおした。

そろそろ、起きてくれないかなぁ・・。

い、いや、別に起きたら何かをしようってわけではないぞ。

ただ、そのぅ・・・、昨夜の「いいよ」の気持ちが変わってないかを聞きたいだけで・・・。

変わってなかったら・・、いや、しかし、朝だしなぁ・・。

いや、それよりも朝からそんなこと持ち掛けでもしたら、瑠璃さんに何と思われるか。

見慣れた天井を見上げながら、ごちゃごちゃと考え事をしていたら、ふと、瑠璃さんが身じろぎをした気配があった。

何となく目を瞑る。

そっと隣の気配をうかがうと、どうやら目を覚ましたのか、キョロキョロと辺りを見回しているようだった。

どうしようか、声を掛けようか・・と思っていると、瑠璃さんがゆっくりと身体を起こした。

恐る恐ると言う感じで振り向いた瑠璃さんは、ぼくと目が合うと慌てたように「おはよう」と挨拶をした。

どこか動揺してそうなのに、律儀に挨拶するところが、おかしくて可愛い。

「おはよう、瑠璃さん」

ぼくもきちんと挨拶を返して、少し迷ったけど思い切って額に接吻をしてみた。

さっと瑠璃さんの頬が染まり、その反応に内心、安堵しつつ

「昨夜は瑠璃さん、よく眠ってたね」

顔を覗きこんで言うと、瑠璃さんの頬が更に赤くなった。

「お、起こしてくれれば良かったのに」

つかえつかえ言った言葉に、ぼくはドキッとしてしまった。

本当に瑠璃さんはすごい。

たった一言で、たったひとつの表情で、ぼくをこんなに嬉しくさせてしまうんだから。

「起こしたよ。でも、起きなかった」

平静を装って言うと

「起こし方が悪いのよ。ちゃんと起こしてくれたら、起きたわよ」

瑠璃さんはうっすらと顔を赤らめたまま、ムキになって反論してきた。

「よく言うよ。鼻つまんでも起きなかったくせに」

接吻したのに起きなかったくせに、とは言わなくてもいいだろう。

「うそ」

目を丸くする瑠璃さんが可愛くて、思わず鼻をつまむと、瑠璃さんはびっくりしたようにぎゅっと目を閉じた。

「ほんと」

言いながらパッと手を離すと、瑠璃さんは「もうっ」とふくれ、でも目が合ったところで二人して笑い出してしまった。

笑いが止んだところで瑠璃さんの頬に手を添えると、瑠璃さんは恥ずかしそうに目を伏せながらも、そっと手をぼくに伸ばしてきた。

静かに抱き寄せ、腕の中に瑠璃さんを収める。

髪を撫ぜ、上を向かせると瑠璃さんの頬がまたほんのりと赤く染まった。

そんな瑠璃さんを見ていたらぼくも頬が赤らむ感じがしてきて、遠く鳥のさえずりを聞きながら、あまり上手とは言えない不慣れな接吻をぼくたちは交わしたのだった。





<続>


(←お礼画像&SS付きです)

コメントの投稿

Secre

まるさま

高彬初夜編、読んでいただいたのですね。
更新止まってしまっていてすみません。
ちょっと私生活が忙しくなってしまってお休みしています。

何とか最後まで書ききりたいと思っていますので、お待ちいただければと思います。
ほんとにすみません。

でも、こんな風に楽しみに待ってくださる方がいると思うと嬉しいです。
連載は(自分なりには)頭や集中力を使うので、なかなか再開の一歩が出なかったのですが、ちょっと頑張ってみようかなと思えてきました。
ありがとうございます。

はあぁ~もうキュンキュン(死語?)しながら読みました!
高彬目線、大好きです。表面上ウブながら内面はしっかりオトコっていうギャップがいいですねぇ。瑠璃限定でそれが発動するのも最高(*´∇`*)
牛車や吉野、なにより初夜!の高彬目線が読みたい!休止されてるようですが続きを書かれる予定はありますか?
ワクワクしながら待ってま~す!
瑞月さまのお陰で張りのある毎日です(笑)

非公開さま(Kさま)

好きな人と手を繋ぐってドキドキしましたよね~。
ファーストステップ゚って感じですもんね。
高彬、がんばれ~!

ヨッシーさま

> 瑠璃さんが、ひっついたんだもの、非常事態だね。

高彬の頭の中では、赤ランプ点滅&サイレンが鳴り響いていたと思いますよ。
よく耐えたと思います(笑)さすが高彬!

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このコメントは管理人のみ閲覧できます

瑠璃さんが、寝てる間こんな事思ってたんだ。瑠璃さんが、ひっついたんだもの、非常事態だね。高彬。私には、おいしいシーンでしたよ。襲いそうなのに。理性がすごいな。高彬らしいです。無理強いしないねが。お手手つないで寝てる所が、可愛いかったです。チュウ、不慣れですかね。上達してると思いましたが。

さりいさま

> 前回のお話もそうでしたが、最近の初夜編は、漫画の山内先生の絵で脳内再生されてます。ちょっとウブい、初期の高彬で。

オデコに若葉マーク貼られてた頃の高彬ですね!
瑠璃が二の姫邸に乗り込んだ頃のと言うか。

> そっかぁ、大人っぽい言動が多いので、つい忘れてしまいますが、まだ16歳でしたね…(遠い目)

今の16歳とはちょっと違うと思うので、まぁ、さりいさんのお好みの年齢設定でお楽しみください(笑)

> 守弥と同衾って…あーりーえーなーいー(笑)

これ、夕日に向かって叫びました?(笑)
ほんと、ありえませんよね。
照れてる守弥とか、やーめーてー!(笑)

うわぁ、もう可愛い!高彬が可愛すぎる!(特に前半)
前回のお話もそうでしたが、最近の初夜編は、漫画の山内先生の絵で脳内再生されてます。ちょっとウブい、初期の高彬で。

そっかぁ、大人っぽい言動が多いので、つい忘れてしまいますが、まだ16歳でしたね…(遠い目)

でも、みそさんへのコメント見て、爆笑してしまいました。守弥と同衾って…あーりーえーなーいー(笑)

何か、守弥があーゆーキャラなだけに、違う方面に話が行きそうで…って、ここから先は考えないようにしましょう(笑)

非公開さま(Nさま)

Nさん、こんにちは。

そうですね。夫婦になるのはもう少し先ですもんね~(笑)
今はまだお似合いの筒井筒ってことですね!

私の方もメールやら書類が飛び交ってます。一気にアドレス帳の登録件数が増えましたよ。
ほんと、何事も手順があったりで会社勤めしてたころを思い出しました(笑)
毎日、バタバタです・・。
今週末が運動会なので、今はそれの準備に追われています。
ブログを休止にすればもっと時間にゆとりが出来るのはわかってるんですけど、ブログは私の楽しみでもあるので続けたいなぁと思ってます!
お互い、がんばりましょ~♪

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このコメントは管理人のみ閲覧できます

みそさま

高彬のビフォーアフター(笑)を知ってるだけに「今のぼくに出来る実力行使」が意味深に聞こえてきますよね(笑)

> それにしても苦肉の策にしては『融だと思おう』は…。(笑)

実はですねぇ、この場面。
『守弥だと思おう』にするか迷ったんですよ(笑)
融と高彬が並んで寝てる姿はギリギリ想像出来たんですが、守弥と寝てる姿はどうしても浮かんでこなくて・・(笑)

> 果たして、高彬が食べ物に勝てる日はくるのか。
> どうですか、瑞月さん?(笑)

来ます!(きっぱり)
いつか瑠璃が「あたしはね、お粥よりあんたが好きよ。あんたがいれば、お粥がなくたって構わないのよ」と高彬に言う話を書いてあげたいです(笑)

『我ながら情けないと思うけど、今のぼくに出来る実力行使』が結婚後にはねぇ、うふふ…とニヤニヤしてしまう私は怪しい人かもしれません。
それにしても苦肉の策にしては『融だと思おう』は…。(笑)

しかもお粥に負ける高彬…。
でも、まあ、これは仕方ない。(笑)
果たして、高彬が食べ物に勝てる日はくるのか。
どうですか、瑞月さん?(笑)
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瑞月(みずき)です。

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