*** 筒井筒のお約束をもう一度・・19<高彬・初夜編> ***

『なんて素敵にジャパネスク〜二次小説』



           ※このお話は初夜編(完結済み)の高彬サイドの話です。
                        






***  筒井筒のお約束をもう一度・・19<高彬・初夜編> *** 









母上の部屋を出て後ろ手に妻戸を閉めると、見上げるまでもなく庭の真正面にある月が目に入ってきた。

さっき見た時よりだいぶ位置が下がってきていて、かなりの時間が経ってしまったようだった。

天空では思いのほか風が強いのか回りに掛かっていた雲がはなくなっており、月はその姿を惜しげもなく現していたが、美しさを愛でることなく、ぼくは自室に向かい足早に歩き始めた。

────瑠璃さん、起きてるかな?

母上の話しは案の定、起承転々とした主たるテーマも何もない、いわゆる世間話しだった。

以前、父上が

「北の方の話しはクドくてのう。何を言いたいのかさっぱりじゃ。かといって適当にかわすと『殿はわたくしをないがしろにするのですね』などとわめきだすしのぅ・・・困ったものよ」

などとおっしゃっていたが、そのお気持ちが良く判る。

母上の機嫌を損ねないため顔を見せにいったが、要領を得ない母上の話には本当に辟易してしまった。

心ここにあらずとは良く言ったもので、母上の話しに適当に相槌を打ちながらも、部屋でぼくの帰りを待つ瑠璃さんの顔が頭にチラついてしまい気もそぞろだった。

渡殿を歩きながら首筋がやけに熱く感じるのは、夏の熱気のせいばかりではなさそうで、落ち着くために部屋の前でぼくはいったん大きく息を吐いた。

息をひそめて、そっと妻戸を開ける。(自分の部屋入るのに、息をひそめるって言うのもおかしな話だけど)

部屋の中はシンと静まり返っていて、几帳を通して燈台の灯りがやわやわと広がっているのが見えるだけで、ここからでは瑠璃さんがどうしているのかが皆目わからない。

どうか起きていてくれ・・・。

祈るような気持ちで部屋を横切り、そっと几帳を回り込むと────

瑠璃さんはスヤスヤと眠っており、ともすれば寝息までも聞こえてきそうで、眠りはかなり深そうだった。

───やれやれ

眠る瑠璃さんを見下ろす格好で、しばらくの間、ぼくは立ち尽くしてしまった。

強引に起こしていいものか、それともここは紳士的に瑠璃さんが自然に目を覚ますのを待つべきなのか。

思案すること数秒、とりあえずその中間を取って、ぼくは小さな声で瑠璃さんに呼びかけてみた。

「瑠璃さん」

何度か呼びかけて軽く肩をゆすってみたものの、瑠璃さんが目を覚ます気配はない。

「瑠璃さん」

耳元で少し大きな声で呼んでみても、瑠璃さんはうるさそうに頭を振っただけだった。

起きそうな気配は全くない。

母上の話し、長かったもんなぁ。

一日、気が張ってただろうし、目の前で按察使が倒れたりしたわけだから、疲れて瑠璃さんが眠りこけるのも無理はないよな・・・。

仕方ない、今日はこのまま休むとするか。

脱いだ狩衣を適当に衣架にひっかけると、夜具に横たわり目を閉じた。

隣で眠る瑠璃さんの寝息を子守唄代わりに、ぼくはすぐに眠ってしまい・・・

ガバと起き上がる。

────眠れるわけないだろ!

隣に好きな人がいるんだぞ。

しかも、ついさっき「いいよ」と言ってくれたわけで、この状況で熟睡できる男がいたら、顔を拝んでみたいものだよ。

どうしたものか、とぼくは夜具の上で腕を組んだ。

月明かりは申し分なくあるから、射場で弓術の鍛錬でもしてくるか・・・。

だけどなぁ、いつ瑠璃さんが目を覚まさないとも限らず、その時、ぼくが隣にいなかったら、また機会を逸してしまうわけだし。

それに、誰かがこの部屋にやってくる可能性もあるわけで、その時に瑠璃さん一人が寝てるというのはまずい。

やっぱりここで横になっているのが最善の選択だと判断したぼくは、もう一度、横になった。

瑠璃さんから離れるように身体を端っこに寄せ、自衛手段を取る。

誘惑は少ないに越したことはない。

チラリと横目で瑠璃さんを見てみる。

夜目にも艶のあるふっくらとした頬、うっすらとほどけた唇、規則正しく上下する胸・・・。

────人の気も知らないで気持ち良さそうに眠りやがって。

恨み言のひとつも言ってやりたい気分だけど、まぁ仕方ない。瑠璃さんが悪いわけじゃないしな。

こうなったら無心で寝るしかないと半ばヤケクソに目を瞑ると、何かの気配がして、温かいものが肩に触れた。

ぎょっとして目を開けると、肩に当たっていたのは瑠璃さんの顔で、つまりは瑠璃さんが寝返りを打ったのだった。

これじゃ瑠璃さんから離れた意味がないじゃないか!

瑠璃さんの髪がはらりとぼくの腕にかかり、気が付けば寝息まで首に当たっている。

一体全体、ぼくにどうしろって言うんだ!

頼むよ、瑠璃さん・・・。





<続>

(←お礼画像&SS付きです)

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Secre

非公開さま(cさま)

cさま、こんにちは!

瑠璃を思うからこその「我慢」なんですよね~。
しかも瑠璃は、高彬のこの「我慢」を知らないわけで・・・。泣ける・・(だけど笑っちゃう)

高彬、「かっこかわいい」ですよね。
だって16歳ですよ~。初々しいです。
そりゃあ、守弥も母君もベタ惚れしますって!

まだまだ高彬の目的達成は先ですが(笑)お付き合いくださいね。

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さりいさま

> 皆さんおっしゃるように、ガバといかない所が(結婚前の)律儀な高彬。でも頭の中は・・・(笑)という訳ですね。

そうですね。
結婚後はそれなりに(?)強引になる高彬ですが、やっぱりこの時期はこんな感じですよね。

> でも、実は、高彬が瑠璃を見下ろしてる構図、パッと頭の中に浮かんできて、ぎゃー何かカッコいい!とやっぱり心酔してしまいました(笑)

ふふふ、さりいさんも完全に高彬病ですね(笑)

>何でだろう。何故か素直に、山内先生の絵で浮かんできました。(きっと、来月発売の文庫版を楽しみにしている影響に違いない)

高彬、どんな表情してたんでしょ。
そういう他の方の<脳内高彬>ってとっても興味があります~(笑)

むふふ

美味しい・・・美味しすぎる・・・!
今回のお話は、高彬サイドじゃないと知り得ないお話で、読んでいて、さすがの私(=高彬のカッコよさに心酔しまくりの私)も笑えてきました。
皆さんおっしゃるように、ガバといかない所が(結婚前の)律儀な高彬。でも頭の中は・・・(笑)という訳ですね。

でも、実は、高彬が瑠璃を見下ろしてる構図、パッと頭の中に浮かんできて、ぎゃー何かカッコいい!とやっぱり心酔してしまいました(笑)何でだろう。何故か素直に、山内先生の絵で浮かんできました。(きっと、来月発売の文庫版を楽しみにしている影響に違いない)

いやーいいなー瑠璃の寝返りで更に悶々とする高彬。やっぱり美味しすぎる・・・
瑞月さん、本当にいつも素敵なお話をありがとうございます。一週間の疲れが癒やされましたよ(爆)

非公開さま(Nさま)

そうですね。「眠りの森の姫」にしては、たくましいですしね、瑠璃は(笑)

Nさんも委員のお仕事、お忙しそうですね。
私も明日、朝からPTAの集まりで出かけてきます~。

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ぺんぺんさま

ぺんぺんさん、おはようございます。

> このときの高彬の様子を、天井からこっそり見ていたいくらいです。

確かに!

> だって、寝ている瑠璃さんを起こして…なこともあったような(短編であったような…)。

そうなんです。
私も書きながら同じことを思っていて、見直してみたらそういう話が2編ありましたよ。
今の高彬に、そっと読ませてあげたい・・・。
そして、それを励みにしばらく続く苦悩の日々を乗り切って欲しいもんです(笑)

高彬の心の叫び…

こんばんは。お久しぶりです!!

高彬の心の声、いや叫びがめっちゃうけました(笑)
このときの高彬の様子を、天井からこっそり見ていたいくらいです。
笑いを堪える自信は全くありませんが。

いやー、それにしても今回の高彬に結婚後の高彬を見せてあげたい!
そして、未来はこんなんだから、これからも瑞月さんがちょこちょこイタズラ(←スミマセン…。)するけど耐えるんだよって励ましたい(笑)
だって、寝ている瑠璃さんを起こして…なこともあったような(短編であったような…)。
そんなことも踏まえると、結婚後の高彬は腕を上げましたねー。

瑠璃と両想いになってからこそ新たに芽生えるドキドキ感が、読んでいて楽しいです。いつも素敵なお話をありがとうございます。

maiさま

>本人が寝てしまって語る事もないこの夜に、高彬が七転八倒していた訳ですね!

そうなんですよ!知らぬは瑠璃ばかりなり、です。
眠る瑠璃を前に、頭の中グルグルの高彬、可愛いなぁ(笑)

>お預けくらうとわかって読んでいるからなおさら可笑しいです。

言えてますね!(笑)高彬には内緒ですけどね。

非公開さま(kさま)

高彬、振り回されっぱなしですもんね。
相当、お疲れのはず・・(笑)

No title

いやいや、もう大ウケしてしまいました!瑠璃編では本人が寝てしまって語る事もないこの夜に、高彬が七転八倒していた訳ですね!「眠れるわけないじゃないか!」のツッコミがほんと可笑しくて…(笑)お預けくらうとわかって読んでいるからなおさら可笑しいです。がんばれ高彬!

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ヨッシーさま

>好きな人が隣にいるんだもんね。

そうなんですよ。しかも夜、部屋に2人きり。想いは受け入れられているわけで・・。
強引に行かないのが高彬らしいと言えばらしいのですが、でも、たまには強引な高彬も見てみたいですよね(笑)

高彬、大変だ。好きな人が隣にいるんだもんね。恨み事言っちゃいますよ。瑠璃さんの誘惑にどう対処するんだろう。楽しみです♪ 無理矢理に起こさないのは、高彬らしいです。もっと強きになってと思いました

みそさま

> 高彬の苦悩が痛いほど分かります!(笑)

まさしく苦悩ですよね。
あれこれ考えずに、ドーンと行っちゃえばいいのに・・・と思ってしまいましたが(笑)でも、これが高彬なんですよねぇ。
まぁ、決める時は決めてくれますけどね!(そんなところも好き)

>ノリツッコミもしちゃいますよね。

本人は大真面目なんでしょうけどねぇ・・・。

我慢の子…

高彬の苦悩が痛いほど分かります!(笑)
自室に戻ってから瑠璃が目覚めるまでに何かあっただろうな~とは思ってましたが…。
いやはや自称『寝相はいい』瑠璃に翻弄されまくりの高彬とは。
『一体全体、ぼくにどうしろって言うんだ!頼むよ、瑠璃さん・・・』には掛ける言葉もございません。(泣)
そりゃあ、『隣で眠る瑠璃さんの寝息を子守唄代わりに、ぼくはすぐに眠ってしまい・・・ガバと起き上がる。────眠れるわけないだろ!隣に好きな人がいるんだぞ』なんてノリツッコミもしちゃいますよね。
高彬には悪いけど笑わせてもらいました。(^w^)
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