*** 筒井筒のお約束をもう一度・・15<高彬・初夜編> ***

『なんて素敵にジャパネスク〜二次小説』



           ※このお話は初夜編(完結済み)の高彬サイドの話です。
                        






***  筒井筒のお約束をもう一度・・15<高彬・初夜編> *** 









守弥は、数秒ぼくの顔をじっと見ると

「・・・萩野にいたくご興味を示されたそうですね」

と、さっきと同じことを言った。

またか。

うんざりしてそっぽを向き、別に・・・と言いかけて、ふと方向転換を思いついた。

大きく息を吸い、守弥に向き直る。

「興味を示したら悪いのか。守弥には関係ないだろう」

ぼくだっていつまでも童じゃないんだ、立ち入って欲しくないことだってある、と言外に匂わせながらきつい口調で言うと

「いえ、悪くはありません」

うっすらと笑いながら頭を振る。

「だったらいいじゃないか」

「はい。大変、結構です。健全にご成長なさっている証拠です」

「・・・」

「若君」

「何だよ」

「萩野を連れて参りました」

「は?」

「ですから、萩野を連れて参りました」

「・・・はぁ?」

萩野を連れ、て、きた・・・?

ってことは・・・瑠璃さんを?!

「どこに?!」

「ここでございます」

思わず腰を浮かすと、守弥はしたり顔で頷いたかと思うと声を潜め

「萩野もすっかりソノ気でございます」

目を伏せたまま言う。

「えっ・・」

「若君に目をかけていただけるのなら異存はないと申しております」

「いや、そんな・・・」

ソノ気とか、異存とか。

瑠璃さんに・・・何を言ったんだよ。

おまえは根本的なところで、大きな勘違いをしているんだぞ・・・。

呆然としていると

「主君が邸の女房に手を出すのは、世間一般ではままあること。今まで若君に、そのようなことがなかっただけのことでございます」

「・・・・」

幼い子に諭すような、気を引き立てるような、珍しく優しい口調で言う。

「先日も申し上げましたが、これからは少し若君も視野を広げられるために遊ばれた方がよろしいと思われます。まずは手始めに・・・萩野を、と」

「・・・・」

あまりと言えばあまりの展開に言葉を失っていると

「若君の困惑もお察しいたしますが、誰でもが通る道でございます。大切なのは勢いでございましょう。繰り返しになりますが、萩野もソノ気でございますので、どうかご安心を」

と、どこまでも見当違いなことを言い、深々と頭を下げて見せた。

平伏する守弥を前に、ぼくは固く目を瞑った。

鴨川に飛び込みたい気持ちって、こんな気持ちを言うのかも知れない・・・。








**************************************








やがて、守弥と入れ替わるように入ってきた足音はまぎれもなく瑠璃さんのもので、それはさっきとは比べ物にならないくらいに威勢が良く、その音を聞いただけでぼくはぐったりとしてしまった。

衣擦れの音を勇ましく隣に座ったかと思うと、間髪入れずに

「ねぇねぇ、あんたの乳兄弟って優しいのね。こうやっていつも愛人を用意してくれるんだ」

歯切れ良く一気に言い、ふぅん・・・と意味ありげに鼻を鳴らした。

愛人の用意って・・・

「そんなわけないだろ」

反論してみたものの、その主張は我ながら弱々しい。

この展開なら瑠璃さんがそう思うのも、さもありなんだろう。

案の定、瑠璃さんはぼくの言葉に納得するはずもなく、更に語気を強めてきた。

「だって、あたしに言ったのよ。若君の愛人になる気はあるかって」

愛人、のところをことさらに大きく言う。

「あいつ・・・」

くそー、守弥め。

愛人の斡旋なんて迷惑なだけなのに、しかもどうして今なんだ。

一番、持ち掛けちゃいけない相手、いけないタイミングじゃないか。

「守弥って、あんただけが大事なんですってね。大江が言ってたわ」

まったく大江と言い、守弥と言い・・・。

乳兄弟としてぼくを思ってくれているのは判るんだけど、色々とほんと迷惑なんだよ。

何が<誰でもが通る道>だよ。

「あいつはぼくを買いかぶってるんだ。それで妙に入れ込んでるんだよ。ついこの間までは『若君の将来に差しさわりがでますから女遊びはお慎みください』なんていってたくせに、最近では急に『若君も少しは遊ばれたほうがよろしいのでは』なんて言いだして、ぼくに愛人を作れと・・・・」

・・・しまった!

ぼくは慌てて言葉を切った。

興味津々に探るような目をしている瑠璃さんが何か言うより早く

「さぁ、瑠璃さんは局に戻って。明日には融に文を書くからさ」

ぼくは瑠璃さんに立つよう促した。

こう言う状況下での長話は危険だ。

瑠璃さんに強い口調であれこれ詮索されたら、ありもしないことまで白状させられてしまうかも知れない。

ここは早めに局に戻ってもらって・・・

「もう局に戻るのやだ。ここで寝てく」

「え」

ぼくの気持ちを知ってか知らずか、瑠璃さんは座ったままにぶすっとして言った。

「だって、あんたんとこの女房って怖いんだもん。あたしが高彬に目をかけられたと知ったら、みんなしてあたしを悪く言うのよ。朝までここにいさせてよ」

「いや、しかし・・・」

女房に負けるような瑠璃さんじゃないだろう・・・と思いつつ、愛人疑惑から瑠璃さんの目がそれてくれたことにホッとした気持ちが勝り、あやふやに答えてしまう。

「何よぉ、いいじゃない」

瑠璃さんが口をとがらせて言い、ぼくはため息をついた。

一難去って、また一難だ。

ここで寝てく、朝までいさせてよ、の意味が判って言ってるのかな、瑠璃さんは。

ちらりと瑠璃さんを見ると、その<怖い女房>でも思い出してるのか、憮然とした顔をしていて、とてものこと艶な雰囲気は感じられない。

まったく、これだもんなぁ・・。

「瑠璃さん」

ぼくは瑠璃さんに向き直った。








<続>

(←お礼画像&SS付きです)

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Secre

非公開さま(Nさま)

Nさん、こんばんは。

高彬目線だと、守弥の出番が増えそうです。
いつもひっついてますからね(笑)

保護者会は、年間の予定とか校長から話とか新任の教員の紹介とか・・・。
そんな感じでした。
Nさんも委員さんですか。お互い、忙しくなりそうですね。がんばりましょう~。
イケメンでしっかりしてるなんて、ナイスではないですか!
堅物ではありませんでしたか?(笑)

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ヨッシーさま

> 高彬は、大変ですね。乳兄弟には、からかわれて、二人して楽しそう。

高彬って、鷹男にもからかわれていたし、からかいやすいタイプなんでしょうね。
(守弥と大江は、からかってるってつもりでやってるわけではないのかもしれませんが・・)
高彬が目の前にいたら、私もからかってしまいそうです(笑)

高彬は、大変ですね。乳兄弟には、からかわれて、二人して楽しそう。守弥、瑠璃さんに愛人になれなんて、面白かったです。瑠璃さんの言動で高彬が、あたふたする所楽しみにしてます。♪

ラムティさま

> 守弥の大きな勘違い...凄すぎます!!

すごい破壊力ですよね!

> 高彬、なんだか乳兄弟のことも含めかわいそうですが...

そうなんですよ・・・。
でも、今更、話を変えるわけにも行かず。
他の話しで良い思いをさせてあげなければ・・・(笑)


maiさま

> このあとの、「こういう意味だよ」が…高彬視点で…

はい、おっしゃる通りです。
はてさて、高彬はどんなことを考えていたんでしょうね。

No title

クックックッと笑いが止まりませんっ!
守弥の大きな勘違い...凄すぎます!!
主君なのに乳兄弟の兄妹に苦労している高彬に同情しちゃいますね。

そろそろ高彬の苦しいお預けが近づいてきてますね。
高彬、なんだか乳兄弟のことも含めかわいそうですが...
次回作も楽しみに待ってます♪

No title

おぉ!この場面の高彬の心情ってめっちゃ興味津々ですよね?思わずまた瑠璃編を読み返してしまいました。ここで切ったということは、このあとの、「こういう意味だよ」が…高彬視点で…うふふ。楽しみにしています(ワクワク)
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