*** 筒井筒のお約束をもう一度・・13<高彬・初夜編> ***

『なんて素敵にジャパネスク〜二次小説』



           ※このお話は初夜編(完結済み)の高彬サイドの話です。
                        






***  筒井筒のお約束をもう一度・・13<高彬・初夜編> *** 









ほどなくして、静かな足音とわずかな衣擦れの音が聞こえてきた。

来た。

いつもとは比べ物にならないほどの静かな足音に、瑠璃さんの心の中が表れているようで、ふとおかしくなってくる。

部屋の入り口で足音が止まり、中を窺う姿が横目に入ったけど、ぼくは素知らぬ顔を続けた。

ここで甘い顔をするわけには行かないからな。

少しは厳しくしないと。

声を掛けようかどうしようか迷っている気配があり────ぼくは我慢できずに瑠璃さんを見てしまった。

ぼくと目が合った瑠璃さんは

「・・・あのう・・・そのう・・・」

さすがに気まずいのかしどろもどろになっていて、そんな瑠璃さんが可愛くて、笑ってしまいそうになる。

いやいや、だめだ。

ともすれば緩みそうになる顔を引き締め、少し怖い顔を作って見せると、瑠璃さんは入り口あたりに座ったかと思うと

「お呼びでしょうか、高彬さま」

手を付いて、丁寧に頭を下げた。

瑠璃さんにこんな風に頭を下げられたのは、初めてのことではないだろうか。

そうか、瑠璃さんもやろうと思えば、姫らしい振る舞いが出来るのか・・・。

妙なところで感心しつつ

「お呼びしましたよ、瑠璃姫」

そう返事をすると、はっとしたように瑠璃さんが顔を上げ、目が合うとそのまま走りより、ぼくの胸に飛び込んできた。

こんなことを好きな人にされて、嬉しくないわけがない。

まずいなぁ。これをどうやって厳しくしろって言うんだ・・・。

瑠璃さんの身体を抱きしめながら、叱ろうか、それとももっと抱きしめようか、思案すること数秒、すんでの差で叱る方を取ったぼくは、瑠璃さんの身体を離した。

「瑠璃さん」

瑠璃さんを前に座らせると手を取った。

丸い目がぼくを見つめている。

「どうやってここに来たの」

「どうやってって・・・網代車でよ」

あっけらかんと瑠璃さんが言い、内心、コケそうになる。

これだもんなぁ。

「そうではなくて、どうしてここに来たのってことだよ」

「だって変な噂を聞いたんだもん」

瑠璃さんの顔が曇った。

「噂ってどんな」

「あんたと煌姫が・・・・恋仲だとか・・・」

俯きながらボソボソと瑠璃さんが言い、ぼくは呆れかえってしまった。

煌姫と恋仲だって?

恋仲どころか、部屋を訪ねただけで疲労困憊してると言うのに。

「瑠璃さん、そんな噂信じたの。ぼくは生涯、瑠璃さん1人だって約束したじゃないか。ぼくの言うことより、そんな噂を信じるの」

少し強く言うと、瑠璃さんの頬が不満そうにわずかに膨れた。

「だってさ・・・」

「だってもあさってもないだろ。将来の妻になる姫が、女房に扮して右大臣家にいるなんて、もし家のものにでもばれたら、ぼくの立場がないじゃないか」

「・・・・・」

瑠璃さんは目を伏せ、しょんぼりと俯いた。

─────しまった、強く言い過ぎたかな。

唇をかみ締め、黙り込む瑠璃さんを見ていたら、どうしてだかぼくの方が悪いことをしたような気分になってしまった。

それに良く考えたら、煌姫との仲を疑ってそれを確かめるために来たってことは、それが意味することといったら・・・。

そっと瑠璃さんの髪をなぜる。

はっとしたように瑠璃さんが顔をあげ、目があったところで、ぼくは瑠璃さんに接吻をした。

「久しぶりだね、瑠璃さん」

怒ってないことが判るように優しく言うと、やっぱり伝わったみたいで、瑠璃さんは嬉しそうに

「高彬ー」

とぼくに抱きついてきた。

今度こそはしっかりと抱きとめながら、それでも内心、反省する。

う~ん、叱るつもりがこの体たらく。なんてザマだ。

「・・・ぼくもいいかげん、瑠璃さんに甘すぎるんだよな」

思わず呟くと

「ん?何?何か言った?」

瑠璃さんが顔を上げた。

「いや、何も」

頭を振ると、それ以上は追求せず、また瑠璃さんはぼくの胸に顔を埋め、しばらくすると小さく笑い出した。

「何だい」

「さっきの煌姫のところにいる高彬ったら!」

くすくす笑っている。

瑠璃さんの笑っている意味が判らずに黙っていると

「あんたって、どこまで朴念仁なの」

顔をあげ、呆れたような口調で言った。

ますます意味が判らない。

「まったく・・・少しは女心を勉強しなさいよ」

注文付けてるわりにはどこか嬉しそうに言い、またぼくの胸に顔を埋めた。

そうして少しすると、くぐもった小さな声で

「でも・・・少しかっこよかった。いっぱしの公達みたいで」

顔を埋めたまま言い、ぼくはまた黙ってしまった。

かっこいいってことは・・・これは誉めてくれたんだろう・・・な、うん。

何か言おうと口を開きかけた瞬間

「やれば出来るじゃない」

瑠璃さんが顔をあげ、からかうように言い眉をあげて見せた。

「そういう瑠璃さんこそ。さっきはえらく姫らしい振る舞いをしてたじゃないか。やれば出来るは、お互い様だな」

とっさに応戦すると、瑠璃さんは「もうっ」と言いながら頬を膨らませ、ぼくは・・・瑠璃さんの髪をなぜた。

会えた嬉しさがじわじわと胸に広がってくる。

「瑠璃さん」

名前を呼び、見詰め合って────

近づいていくと瑠璃さんはそっと目を閉じ、やがて唇が触れると、ぼくたちはお互いの手を探りあて、互いに指を絡め合ったのだった。








<続>


(←お礼画像&SS付きです)

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Secre

非公開さま(Nさま)

高彬から見たら、きっと瑠璃って可愛くて仕方ないんでしょうね!
PTA、どれくらいの忙しさになるのやら・・・。本格始動は、もう少し先みたいです。
優しいお心遣いありがとうございます。

ヨッシーさま

> 煌姫のお色気攻撃にびくともしない高彬は、最高です。

煌姫も時間のムダでしたね。
やっぱり好きな人にしか色気って感じないものなんでしょうね~。(特に高彬は)

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

煌姫のお色気攻撃にびくともしない高彬は、最高です。瑠璃さんも、朴念仁がと言いながら、喜んでるし。女心が、疎い高彬が好きです。瑠璃さんが、煌姫みたいにしたら、気づきますよね。襲っちゃいそうですね。

みそさま

> 「惚れた弱み」というより、「シュンとした瑠璃」に弱過ぎですよね、高彬。(≧∇≦)

典型的な「女の涙に弱い」タイプなんでしょうかねぇ・・・。
あ、でも母親に涙ぐまれた時はうんざりしてましたっけ。

> しかも「高彬フィルター」絶好調ですね。(笑)

何重にも強力なフィルターがかかってますね!(笑)

甘々

ほんとに高彬って瑠璃に甘いですよね。(瑠璃はそう思ってなさそうだけど…)
説教をするわりには長続きしないし。
怒っていても、結局、瑠璃のペースに丸め込まれてしまうことが多いし。
「惚れた弱み」というより、「シュンとした瑠璃」に弱過ぎですよね、高彬。(≧∇≦)

やっぱり高彬と瑠璃の甘々な雰囲気は良いですね~。(o^∀^o)
ほっこりしちゃいます。
しかも「高彬フィルター」絶好調ですね。(笑)
瑠璃が可愛く見えて仕方がありません。
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