*** 筒井筒のお約束をもう一度・・12<高彬・初夜編> ***

『なんて素敵にジャパネスク〜二次小説』



           ※このお話は初夜編(完結済み)の高彬サイドの話です。
                        






***  筒井筒のお約束をもう一度・・12<高彬・初夜編> *** 









ふぅ・・・。

何だか・・・疲れたな。

部屋に戻り、襟元を緩めるとぼくはゴロンと横になった。

数ヶ月前から我が右大臣邸の東北の対屋にて御身をお預かりしている宮家の姫君────煌姫のところで和歌の指導を受けてきたのだが・・・。

何度かお訪ねしてご指導いただいているのだが、どうにも慣れない。

ぼくも仕事がら、ご身分の高い方とは交流もあり、宮家の方と言葉を交わす機会も少なくはないのだが、この煌姫と言う姫はぼくの知っている宮家の方々とは、何となく違うような気がされるのだ。

もしかしたら姫だから、そう思うのかも知れないな。

仕事でお会いするのは、基本的に男の人だし。

そもそも、ぼくが知っている(と言うか、よく話す)姫と言ったら瑠璃さんだけだし、その瑠璃さんときたら、およそ姫らしからぬ人だからな。

世間一般の女の人ってあんなものなのだろうか。

ぼくの話術不足なんだろうけど話が噛みあわないと言うか、失礼な言い方だけど、何を考えてるかのか窺い知れないと言うか・・・。

瑠璃さんは、何を考えてるのかが判り過ぎるくらい判る人だしなぁ。

うーん、ぼくはやっぱり断然、瑠璃さん派だな。

腹の探り合いみたいな会話は仕事だけで充分だ。

瑠璃さんかぁ。

「ひぃ、ふぅ、みぃ・・・」

ぼくは指を折って、過ぎた月を数えた。

最後に会ったのはまだ四月(うづき)だったから、瑠璃さんに会えなくなってから、もう三月もたつのか。

犬の仔を渡したのまでは良かったけど、その後、池には落ちるし、思いがけず瑠璃さんに求婚の和歌を要求されるしで・・・。

更にはお祖母さまもお亡くなりになり、服喪中ということであれっきり瑠璃さんに会えてない。

つまりはせっかく決まった結婚の話も、何の進展もないままなのだ。

せめて、この間に和歌でも勉強して、来たるべき時に困らないように備えておこうと思って、以前から守弥にしつこく勧められていたこともあり、煌姫に歌の指導を請うたのだけど・・・。

「高彬さま。北の方さまがお呼びでございますが・・・」

ふいに声を掛けられて振り向くと、大江が部屋の隅に控えていた。

「母上が?」

「はい。公子姫さまのことで折り入ってお話があるとのことでございます」

「姉上のことで・・・。わかった」

ぼくは立ち上がった。

姉上のことと言いながら、最後には瑠璃さんとの結婚に話が流れていくのは目に見えている。

正直、気が進まないけど仕方ない。

あからさまに無視すれば、やれ変わっただのと、なじられるきっかけを作るだけだからな。

大江の先導で渡殿を進みながら、庭に目をやると七月(ふみづき)に入り勢いを増した草木が所狭しと生い茂ってきており、ふと、瑠璃さんの部屋から見える庭に思いを馳せてしまった。

瑠璃さんに会いたいなぁ。

母上のいる部屋が見えてきたところで、女房が一人控えており、何とはなしに目が行く。

深々と頭を下げ、ずいぶんと礼儀正しい。

最近、女房の出入りが激しいと母上も言っていたし、新しく入った母上付きの女房だろうか。

ぼくが通り過ぎても、まだ平伏しているようだった。

まだお邸勤めに不慣れなのかも・・・・

「ひゃあぁぁっ」

突然、耳をつんざくような悲鳴が聞こえ、ぎょっとして振り返ると、先ほどの女房が取り乱したかのように手を振り払っており、目が合うと────

はぁ?!

瑠璃さん?!

・・・に、良く似た・・・・女房・・か?

いや、違う。

本物だ。瑠璃さんだ。

ど、ど、どうしてここに瑠璃さんがいるんだよ!しかも女房姿で!

呆然と瑠璃さんを見ていると、異変に気が付いた大江が走り寄ってきた。

「こ・・・この者は」

何とか言葉を搾り出すと、大江は

「臨時で入った女房ですわ、高彬さま。萩野といいますの」

瑠璃さんを、もとい女房を指し示して言った。

「萩野・・・」

小萩をもじったのだろうか・・・。多分、そうだろうな。

混乱する頭の片隅でチラリとそんなことを考え、ぼくは定まらない思考のまま呆然と今来た渡殿を引き返し始めた。

と、とにかく、頭を整理しよう。

「あ、高彬さま。どちらへ」

「大江・・・とりあえず、母上を訪ねるのは後刻にするよ・・」

振り返りもせずに呟くと

「はぁ、そうでございますか」

何とも気のない大江の声が聞こえてきた。










*************************************************








部屋に戻り、一人になったところで、ぼくは大きく息を吐いた。

そりゃあ、確かに瑠璃さんに会いたいな、とは思ったさ。

でも、早くに願いが叶いすぎだろ。

瑠璃さんが白梅院に来たのは始めてじゃない。

その都度、瑠璃さんなりには理由があったわけだけど・・・・今度は何だろう。

「大江。る・・、いや、今の者は、いつからいるんだ?」

白湯を持ち、部屋に入ってきた大江に聞くと

「今の者って萩野さんですか?つい昨日からですわ」

「母上付き?」

「いいえ。臨時と言うことですから、煌姫さま付きと言うことでしたわ」

「じゃあ、どうしてあんなところにいたんだろうか」

「さぁ・・・。先ほど、煌姫さまのお部屋にいたはずですけど・・・。高彬さまが伺ってらっしゃる時ですわ。女房部屋に戻ろうとして、もしかしたらお邸内で迷ってしまったのかも知れませんわね」

「・・・・・・」

煌姫のところにかぁ。

普段、女房なんかあまり気にしたこともないし、気付かなかったな。

「それで、その・・・る・・萩野はどこからの紹介・・・、いや、いい。・・・大江」

「はい」

「萩野を・・・呼んでくれ。それと人払いも頼む」

本人に確かめるのが一番だ。

言いつけると、大江は一瞬、ポカンとしたかと思ったら

「まぁ!高彬さまったら!・・・ふふふ」

口元を袖に当て含み笑いをした。

まったく・・・何を勘違いしてるんだよ。

大江の勘違いを解きたいのはやまやまだけど、そうすると瑠璃さんのことを言わなきゃならないし、しょうがない。

瑠璃さんを呼ぶために部屋を出て行く大江の後姿を見送った。








<続>


(←お礼画像&SS付きです)

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Secre

非公開さま(Kさま)

そう、もうじき感動の(?)再会です(笑)
ポーカーフェイスの高彬も、心の中では素直にいろんなこと思ってるんでしょうね。

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ヨッシーさま

大江はミーハーですしね(笑)
勝手に思いこんで「まぁ!」なんて思ってるんでしょうね~。

お預けの日々・・(笑)

盛り上がってきましたね♪ これから始まる高彬のお預けの日々。ぐふふですよ。大江ちゃんも勘違いしちゃいますね。女房の事を聞くなんてって。高彬様、どうしちゃったのって、妄想してますよね。私だったら、悶えますよ。楽しみにしてます。

ぺんぺんさま

> 私のなかの高彬のお預けカウントダウンが10を切ってしまいました(笑)

切りましたよね(笑)
私の中でも6あたりです。

>でも、なんか笑える…☆

もういっそのこと、ギャグと割り切って読んでいただくことをお勧めいたしマス(笑)

10、9、8…(笑)

私のなかの高彬のお預けカウントダウンが10を切ってしまいました(笑)瑠璃さんバージョンで、これから先の展開を知ってはいるものの、高彬ってほんと耐えましたよね!!でも、なんか笑える…☆

次回作も楽しみにしてまーす♪

こももさま

こももさん、おはようございます。

> 混乱しまくってるくせに、
> 萩野の名前の由来に思いを馳せてるとこに爆笑です(≧▽≦)

人ってこういう不思議な所ってありますよね?!(私だけ?)

前にお勤めしてた時、ものすごい失敗をしでかして上司に叱れている時、猛省し泣きそうになりながら、ふと(部長、ハゲが進んだな・・)と思ってた時があります(笑)

小萩をもじってる(爆)

瑞月さん、こんばんは☆彡

煌姫が何を考えているのか分からない高彬。
自分のことを必死にロックオンしてるってことに、
気付けるわけは…無いですね(^_^;)

混乱しまくってるくせに、
萩野の名前の由来に思いを馳せてるとこに爆笑です(≧▽≦)

ホント高彬目線って、
瑠璃さんのことをすごーく思ってることが分かって、
らぶらぶ度がUPですね♡


さりいさま

> ついに、ついに私の大好きな白梅院の話に移ってきたのですね!

はい、移ってきました!

> そして、そして、ここで「待て次回」なのですね。あううーーー早く続きが読みたい(悶絶 笑)

そこまで楽しみにしていただいて、出演者一同(?)感激しております。
ありがとうございます。

> それにしても、高彬が全く、まーったく煌姫の色仕掛けを何とも思っていないのが、かなりツボでした(笑)

時間と色仕掛けのムダでしたね、煌姫(笑)

> 『ぼくはやっぱり断然、瑠璃さん派だな』
> って、うふふ。素直だなぁ。可愛いなぁ。

そして、私たち読者は『断然、高彬派』ですよね!

非公開さま(Nさま)

ほんと、服喪が半端なく長くてびっくりですよねぇ。
もしかしたら守らない人もいたかも知れませんけど、そこは真面目な高彬、きっちりと守りそうですしね。

シチュエーションはとんでもなかったけど、まぁ、会えたので結果オーライと言うことですね(笑)

みそさま

> 実家にいる、「甘やかされたボンボンの高彬」って好きです。

私もです!
「素」でいいですよね。
(お堅いこと言ってる高彬ももちろん好きですけど。って、結局全て好きなんですけど)

> しかも今後の展開が分かっているだけに、楽しみで楽しみで。(笑)

わ~、そうですか?そう言っていただけると嬉しいです!
高彬目線ならではのシーンも新たに入れつつ、進めていこうかなぁと思ってます。

高彬の華麗なる転身!

これ、いいキャッチコピーですね!(笑)



ラムティさま

> ひとりニヤニヤしまくりではたからみるとヤバイ人ですね(笑)

うわ、そんなラムティさんを物陰からこっそり見てみたいです(笑)
でも、大丈夫ですよ、私もサークルで他の方の作品を読むとき、そんな感じですから(笑)

> 同じ結末でも主人公が違うと面白さもまた別物ですね♪

なんでだか高彬バージョンになると、どんどんギャグになっていきそうで・・・。
だって、きっと高彬、色々とあわあわオタオタしてるはずでもん!

き、き、き・・・

きゃあーーーーーーーっっっ!

(って、連日コメントすみません・・・)

初夜編が更新されてて、とても、とても嬉しい上に・・・
ついに、ついに私の大好きな白梅院の話に移ってきたのですね!
そして、そして、ここで「待て次回」なのですね。あううーーー早く続きが読みたい(悶絶 笑)

すみません、テンションが上がりまくっていて、日本語が変ですね。
えぇ、勿論いつも通りに、瑠璃編も読ませて頂き、復習&予習には抜かりございません(笑)

それにしても、高彬が全く、まーったく煌姫の色仕掛けを何とも思っていないのが、かなりツボでした(笑)
『ぼくはやっぱり断然、瑠璃さん派だな』
って、うふふ。素直だなぁ。可愛いなぁ。

次回も楽しみにしています!ワクワク。

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実家にいる、「甘やかされたボンボンの高彬」って好きです。
新鮮で可愛い☆(≧∇≦)
しかも今後の展開が分かっているだけに、楽しみで楽しみで。(笑)
「お坊ちゃん高彬」から「積極的なオトコ高彬」への華麗なる転身!
あぁ、楽しみ。(≧ε≦)

No title

ヤバイです!仕事の休憩中に拝読させていただいたんですが、ひとりニヤニヤしまくりではたからみるとヤバイ人ですね(笑)

瑠璃バージョンでは高彬の思考はわからないですが、高彬バージョンでは高彬の思考が知れて面白すぎです!
同じ結末でも主人公が違うと面白さもまた別物ですね♪
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