*** 筒井筒のお約束をもう一度・・11<高彬・初夜編> ***

『なんて素敵にジャパネスク〜二次小説』



           ※このお話は初夜編(完結済み)の高彬サイドの話です。
                        






***  筒井筒のお約束をもう一度・・11<高彬・初夜編> *** 










明るく言う瑠璃さんを見ながら、ぼくは気付かれないように小さく息を吐いた。

瑠璃さんが寂しがり屋だと思うのはこんな時だ。

何でもポンポンと言いたいことを言っているようで、肝心のことは言わない。

そういえば少し前に融が

「父さまがまた姉さんのこと、どうにもならんじゃじゃ馬だって嘆いていたよ」

なんて言ってたし、もしかしたら結婚が決まったことにより、ぼくが職場や実家でモヤモヤとした思いを味わっているように、瑠璃さんにも何かあるのかも知れないな。

だけど、何も言わないということは、しつこく聞き出すようなことは出来ないしなぁ・・・。

瑠璃さんには瑠璃さんの領域があるのだろうし。

何とか元気付ける方法はないか、と考えて、ふと思い出した。

「そうだ。瑠璃さんにこれをあげようと思って来たんだよ」

袂から犬の仔を取り出し、瑠璃さんに手渡す。

「なあに」

不思議そうな顔で見ていた瑠璃さんの顔が、次第にほんのりと赤く染まっていった。

思い出してくれたのかな・・・?

チラリとぼくを見て、目が合うと、ますます瑠璃さんは顔を赤らめた。

「この間、市に行ったんだけど、そこでたまたま見つけてね。可愛かったから・・・」

思い出のものだから、とか、すぐに瑠璃さんにあげようと思ったとか、それくらい気の利いたこと言えればいいんだけど・・・なんて思っていると、瑠璃さんは下を向いたまま

「あ、ありがとう」

と言い、ますます顔を俯かせたかと思ったら

「瑠璃は・・・・嬉しい、です」

聞き取れないくらいの声で言った。

「・・・・」

言葉が出てこなくて────

困ってしまった。

こんな時は何と言ったらいいのだろうか・・・。

そっと指に触れてみる。

一瞬、瑠璃さんの指先が驚いたように動き、それでも振りほどかれたわけではないことに励まされて指先を徐々に絡める。

瑠璃さんはずっと下を向いていて、ちらりと横顔を盗み見ると、頬はほんのりと赤いままだった。

ぼくも瑠璃さんも何も言わず、水面を渡る風の音だけが聞こえ、「瑠璃さん」と口を開こうとした時

「姫さま!こちらでしたか」

突然、大きな声がした。

あ、と思ったときには瑠璃さんの手から犬の仔の人形を転げ落ち、手を伸ばした瑠璃さんはバランスを崩し、二人して池に落ちてしまった。

すぐに瑠璃さんに手を伸ばし、何とか溺れることだけは避けようと身体を伸ばしてみれば、何のことはない水位は腰の高さくらいだった。

呆然と立ち尽くす瑠璃さんは、ぼくと目が合うと

「何もあんたまで落ちなくても・・・」

と呟き、じろじろとぼくを見たかと思ったら

「あんたの格好ったら!」

と笑い出した。

そういう瑠璃さんの格好だってずぶ濡れで

「瑠璃さんこそ!」

負けじと言い返すと、瑠璃さんは笑いながら水をかけてきて、ぼくも盛大にかけ返してやった。

それで黙ってる瑠璃さんのはずがなく、しばらくは2人して水のかけ合いが続き、何だかぼくはここのところの憂さが晴れていくようだった。

職場での噂がなんだ。家の者の反対がなんだ。

ぼくは瑠璃さんを好きで、それで結婚したいんだからいいじゃないか。

笑いながら水をかけ続け、それでも小萩の

「もうおやめくださいませ。お風邪をお召しになりますよ」

の言葉で我に返ったぼくは、渋る瑠璃さんの手を引き池からあがった。

池から瑠璃さんを引き上げる時、たっぷりと水を含んだ衣裳は重く、だけどそれを入れたとしても瑠璃さんが思いのほか軽いことにびっくりしてしまった。

昔は瑠璃さんをおんぶするとヨロヨロとよろめいて、一苦労だったのに。

ぼくが力持ちになったのか、瑠璃さんが華奢になったのか・・・。

瑠璃さんが裳着を迎えたあたりから、一緒に駆け回って遊ぶことがなくなったけど、何だかそれからの時間の長さをふと感じてしまった。

ついこの間までは二人とも童だったのに、いつの間にかぼくは<男>に、瑠璃さんは<女>になってしまっていたのかも知れないなぁ・・・・。

こもごも感慨にふけっていると

「ほら、風邪ひいちゃう。身体拭いてあげるから、脱いで!」

いきなり瑠璃さんに小袖を脱がされかけて、ぼくはびっくりして飛びのいた。

「い、いいよ。自分でやるよ」

な、な、何を言ってるんだ、瑠璃さんは。

ぼくはもう童じゃないし、それよりも何よりも、たっぷりと水分を含んだ薄織の単が瑠璃さんの身体にぴったりと貼り付いていて、もうどこを見てていいのやら・・・困る・・・。

そう、困るんだよ、色々と。

その上<脱いで>だなんて、まったく瑠璃さんは!人の気も知らないで。

ムッとして瑠璃さんを睨むと

「何よ、あんたか勝手に池に落ちたんじゃない。高彬の怒りんぼ!」

そう言って、プイッと横を向いたのだった。








       
<続>


(←お礼画像&SS付きです)

コメントの投稿

Secre

非公開さま(Nさま)

この時期(婚約初期)の2人は、確かにいろんなバランスが絶妙ですよね。
高彬への恋心に目覚めた(?)けれど、まだ姉貴分の瑠璃と、とっくに自覚のある高彬。
「恋の始まり」ですよね!

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非公開さま(Kさま)

2人はきっと「顔を見たら元気になれる!」ような相性なんだと思います。
そんな人がいるって2人とも幸せですよね~。

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