***短編*** 秋の、もみじ葉<おまけの話> ***

「秋の、もみじ葉」のおまけの話しです。
一部、携帯からの閲覧が出来ないということでしたので、この部分だけ再アップいたします。(2014.2.18改定)





<おまけの話>





「あのぅ・・・小萩さん。姫さま、まだお目覚めにならないようなんですが・・・」

翌日、局でたまっていた縫い物などをしておりますと、早苗が開け放った引き戸の向こうから声をかけてまいりました。

気持ちの良い秋の空気を感じたく、また、姫さまのお部屋から見える紅葉には到底かないませんが、わたくしの局からも心ばかりの紅葉が見えますので、引き戸は開けてあったのでございます。

このようなささやかな人生の楽しみ方も、生前、父や母がわたくしに教えてくれたことでした。

「少将さまは今日はご出仕されないので、ごゆっくり休まれているのでしょう」

縫い物の手を止め早苗に答えますと

「はぁ・・・ですが、そろそろ朝餉をと、台盤所の者が・・・」

早苗は困ったように口ごもりました。

おそらく、台盤所の者から、催促の声がかかったのでしょう。

確かにすっかり日は高くなってきております。

「姫さまのところにはわたくしが行くから、おまえはもうお下がり」

そう言ってやりますと、早苗はホッとしたような顔をし、ふと、わたくしの手元を見ますと

「小萩さんって何でも出来るんですね。わたし、縫い物は苦手で・・・」

と上目遣いで、何やら物言いたげに言うのでした。

「何か縫い物があるのなら、あとで持ってらっしゃい」

言ってやりますと

「いいんですか?嬉しい!」

両手を打ちつけ、じゃ、あとで・・・などと言いながら下がっていきました。

やれやれ・・・。

下がっていく早苗の足音を聞きながら、わたくしは小さく息を吐きました。

微苦笑を誘われる、と言ったところでしょうか。

なんのかんのと言いましても、早苗は可愛い子です。

独身主義を通していた頃の姫さまの年頃だと思いますと、生意気なことを言いたてますのも、せんないことかと思われるのです。

ま、わたくしもついついムキになって言い返してしまうのですが・・・。

やりかけの縫い物を置き、わたくしは姫さまの部屋へと向かったのでございます。







**********************************************************





姫さまのお部屋の前で、わたくしは足を止めました。

姫さまお一人でお休みになられてるのでしたら、何の躊躇もなく部屋に入り几帳を回り込むところですが、今朝は少将さまがいらっしゃるのです。

まさか・・・・いえ、ご夫婦ですから何も悪いことなどではなく、至極当然のことなのではありますが・・・

まさかのもしも、いえ、もしものまさか・・・・の事態を考えますと、いくら女房とは言え、部屋に入っていくのはためらわれるのでございます。

そうかと言って、ずっとこうしていては埒があかないわけですし、わたくしは意を決してお部屋に入っていきました。

まずは部屋の隅に控え、耳をそばだてます。

何やら話し声が・・・・。

耳を澄ませてみますと、それはまぎれもなく姫さまのお声で「・・・雀の子が・・・」「罠をしかけて・・・」などとおっしゃっているようでした。

どうやら姫さまは雀の子を捕獲する話しを少将さまにしているようでございました。

姫さまの声に混ざって、時折り、低く笑われる少将さまのお声も聞こえてまいります。

考えていたような事態ではないことがわかり、ひとまず安堵のため息をつきました。

実は先日来、姫さまは庭にやってくる雀の子を捕まえることに夢中になっているのでございます。

この様子でしたらお声をおかけしても大丈夫だろうと思いまして、膝を進めお声をおかけしようと口を開きかけますと「小萩が・・・」と、ふいにわたくしの名前が聞こえてまいりました。

驚いて言葉を飲み込みますと

「小萩も、もういい年なのよねぇ。小萩って結婚する気あるのかしら」

なんとまぁ、今度はわたくしの結婚についての話をされているようなのでした。

ついついにじり寄って聞き耳を立てますと

「結婚ばかりは、年齢でするものではないからね。これぞという人がいなければ小萩だって結婚はしないだろう」

と、筋の通ったもっともなことをおっしゃる少将さまのお声がしました。

お2人とも普段よりも声がくぐもって聞こえますのは、やはり横になられながらのお語らいだからなのでございましょう。

ふと顔が赤らむ心地もしましたが、やはり話しの内容が気になってしまうのでした。

「高彬のとこに、誰かいい人いない?」

「いい人かぁ・・・。結婚してない者は大勢いるけど、いい人となるとなぁ」

「なによ、右大臣家の従者って、皆、性格悪いの?」

「いや、そういうわけじゃないけど。やたら気難しかったり、お調子者だったり・・・。悪い奴らじゃないんだけど。年の釣り合いだけで言ったら、あいつかなぁ・・」

「どんな人?」

「・・・気難しいやつの方なんだけど」

「気難しいのはダメ。結婚したら妻は大変よ。・・・大らかで優しくて面白くて、小萩だけを大事にしてくれるような人でなきゃ。小萩は早くに両親を亡くしてるから、父親のような包容力もなきゃダメね」

「包容力か・・・。難しいな」

少将さまが困ったように返事をされ、考え込まれているようでございました。

ほんに少将さまのおっしゃる通りでございます。

一体そんな殿方がいるのかいないのか、また、もしいたとして、この小萩を気に入ってくれますかどうか・・・。

「とにかく小萩には幸せになってもらわなきゃ。変なのに捕まる前に、あたしがいい人を探してあげられたらいいんだけど」

「あんまり瑠璃さんが口うるさく言うと、かえって小萩の結婚が遠のくと思うけど」

「まぁ、それはそうだけど。・・・父さまにも聞いてみようかしら。荘園を管理してる受領にも裕福なのはたくさんいるもの。でも、小萩に地方に行かれても寂しいし、京に住んでる六位くらいの堅実な役人あたりなら・・・」

このままでは、この場でわたくしの結婚相手が決まってしまいそうな気配でございます。

部屋の隅に戻りまして、わたくしは咳払いなどいたしました。

「小萩」

すぐに気付かれた姫さまが、ひょいと几帳から顔を出されました。

「いたの」

「今、参ったのですわ。何やらお話声が聞こえましたので、もうお起きになられてるのだと思いまして」

伏し目がちに申しますと、何も疑わないのか、姫さまは少将さまと揃って几帳を回ってこられました。

「すっかり遅くなってしまったね」

「たまにはのんびりしなきゃ。いつも忙しいだもの」

少将さまがすまなそうにわたくしにおっしゃるのを、姫さまは笑ってさえぎり、わたくしも深く頷いたのでございます。

すっかり身支度を整えられたお二人は、庭の紅葉が良く見える特等席に並んでお座りになり、こうして見ると、本当にお似合いの仲睦まじいご夫婦なのでした。

お二人とも、先ほどまでわたくしの結婚話をしていたことなどおくびにも出さず、ふとそれが何やらおかしくてならず

「少将さま。姫さまは昨日「結婚ってどんなものですか?」と聞いたわたくしに『こういうきれいな紅葉を見ると、見せてあげたくなるような感じだ』とおっしゃったのでございますのよ」

ついつい、少将さまに話してしまったのでございます。

「小萩!」

ふいをつかれたかのように姫さまが赤くなられ、少将さまは「へぇ」と目を見開いて姫さまをご覧になられました。

「それは嬉しいな」

にっこりとおっしゃる少将さまに、姫さまはむぅぅとした顔で黙り込まれ、そのままのお顔で「もうっ!」とわたくしを睨むのでございました。

やはり姫さまは、お優しいくせに、でもどこか不器用な、可愛いお姫さまなのでございます。

「そういえば、ぼくも同じように思ったことがあったな」

ふいに少将さまが口を開かれ

「でも、ぼくは美味しい団喜を食べた時だったけどね。あぁ、これを瑠璃さんにも食べさせてあげたいなって」

笑いながらおっしゃられ

「あたしがひどい食いしん坊みたいに聞こえるわ」

ますます姫さまはむくれられ、そういう姫さまを少将さまは可愛くてしょうがないと言った風情で眺められているのでした。

「・・・・朝餉の準備をして参りますわ」

一礼して立ち上がり、わたくしは御前を失礼いたしました。







***************************************************************






渡殿を台盤所へと向かいながら、ふと顔を上げますと、気のせいか昨日よりも一段と色づいたように見えるもみじ葉が庭を覆い、時折り吹く風に、その葉を舞わせているのでした。

秋の深まりにつれ、その色を変え、時満ちて色づいた葉が自然に落ちるように、いつかわたくしも、どなたかの殿方の色に染められ、そして、その方の掌中にはらはらと舞い落ちて行くのでしょうか。

そんな日が早く来て欲しいような、もう少し今のままでもいいような、ふと、我が身の行く末に思いを馳せる、うららかな秋の日なのでございました・・・。








          <おしまい>


(←お礼画像&SS付きです)

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