*** 筒井筒のお約束をもう一度・・7<高彬・初夜編> ***

『なんて素敵にジャパネスク〜二次小説』



           ※このお話は初夜編(完結済み)の高彬サイドの話です。
                        






***  筒井筒のお約束をもう一度・・7<高彬・初夜編> *** 









ぎしっぎしっと軋む音が聞こえた気がしてぼくは慌てて簀子縁に飛び出した。

案の定、従者を数人付けただけの目立たない装いの牛車が見えてきたかと思ったら、庭先まで来たところでゆっくりと止まった。

融が白梅院に遊びに来たことは何回かあるけど、こんな風やって来たのはもちろん初めてで、ぼくは内心、何事が起こったのだろうとヒヤヒヤしていた。

瑠璃さんのことでって言うけど、いい話ではないような気がするんだよなぁ・・。

牛車の前に榻が置かれ、簾が上がった瞬間、ぼくは腰を抜かしそうになってしまった。

「る、る、・・・瑠璃さんっ」

牛車から出てきた人物は、誰あろう瑠璃さん、その人だったのだ。

「どうして・・・なんで・・・」

瑠璃さんが・・・ここに・・・いるんだよ・・・。

この時代、女性が外に出るのは一生のうちでも数えるほどのはずで・・・

いや、今はそんな悠長に常識論を語っている場合じゃない。

我に返ったぼくは慌てて階を駆け下りると、瑠璃さんの手を引き身体で隠すようにしながら

「とにかく、早く中に入って」

部屋の中に連れ込んだ。

ひとまず瑠璃さんを座らせ、妻戸が閉まっているのを確認し、ありったけの几帳をたてかける。

そこまでしてようやく瑠璃さんの前に座り、そばにあった白湯に手を伸ばした。

びっくりし過ぎて、喉がカラカラだった。

「どうしたのさ、瑠璃さん。びっくりするじゃないか」

ゴクリと喉を湿らせてから言うと、瑠璃さんは神妙な顔でぼくを見ていて、まっすぐな視線のままに

「ねぇ、高彬」

改まった声で話しかけてきた。

「なんだい」

「あんた、二股かけてないでしょうね」

もう一口、白湯を口にしたところだったので、ぼくは盛大に白湯を吹き出してしまった。

はぁ?!二股?!

「な、何を言い出すんだよ、瑠璃さん」

あまりと言えばあまりの言葉に、さすがに大声で言うと瑠璃さんは「もう、汚いわねぇ・・」とぶつぶつ言いながら衣裳を拭い、ちらりとぼくを見るとコホンと小さく咳払いをした。

「あんた兵部卿宮の二の姫に、恋文なんて出してるの?」

探るような、だけどストレートな質問にぼくは即答した。

「出してないよ!なんだよ、それ」

ぼくがどれだけ瑠璃さんに純情を捧げてると思ってるんだよ!

「そういう噂を聞いたのよ」

ぼくのあまりの勢いに気おされたのか、幾分、声を潜めながら瑠璃さんが言い、その声音がすこし自信なさそうなものに変わっていた。

「二の姫となんて一度も文は・・・」

そこまで言いかけて、何かがひっかかった。

二の姫・・・。文・・・。

何か匂うな。まさか、とは思うけど・・・。

瑠璃さんには「明日、父上たちに確認してみるから」と説明し、ぼくは改めて瑠璃さんに向き直った。

「ともかく」

瑠璃さんの手を取ってみると、瑠璃さんは別段振り払うでもなく、そのままぼくに手を預けている。

「瑠璃さんはぼくを信用してくれ。二股だなんてそんな・・・」

そっと手を包み込み

「ぼくは瑠璃さんだけだよ」

身を乗り出して言うと、傍目にも瑠璃さんの表情が柔らかくなっていくのがわかった。

うん、と言葉もなく頷き、ぼくを見た。

目が合い、にっこりと笑い合う。

瑠璃さんの顔に近づいていくと、瑠璃さんはそっと目を閉じた。

────さっきは、ふいに小萩が現れて出来なかったもんな。とんでもない誤解だったけど、こういう展開なら、そう悪いことでもなかったかもな・・・

そんなことを考えながら、唇が触れ────る直前

「若君。何か話し声が聞こえたようですが、何かございましたか」

「・・・・!」

外からふいに声を掛けられて、瑠璃さんはびっくりしたように身体を離した。

なんだよ!あいつ!

「なんでもない。さがっててくれ」

呼ぶまで来るなと言ったじゃないか。

「ですが若君・・・」

「守弥。ぼくは疲れているんだ。さがれ」

さすがに頭に来て強く言うと、少しの沈黙のあとに下がっていくような気配があった。

「あんたんとこの家臣ってすごいわね。人払いしてても来ちゃうの」

瑠璃さんがびっくりしたように言うので

「あいつは特別なんだよ」

ぼくは憮然として答えた。








<続>
(←お礼画像&SS付きです)

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Secre

非公開さま(Cさま)

会うために口実っていうのはありえそうですよね。
瑠璃自身、気付いてないかもしれませんけど深層心理で(笑)
楽しんでいただいているようで嬉しいです。
早めのアップを目指しますね。

非公開さま(Kさま)

高彬はこの頃から苦労性なんですね・・・。
しかも、誠実さや素直さからくる苦労なんで、本人は大変なんでしょうけど、(可愛いなぁ)と思ってしまうんですよね。
守弥に負けないように応援しましょう!

maiさま

こんばんは。
そうなんです、私も読み返しながらなんですよ。
高彬編書いてて思ったんですけど、この時期は、約束忘れてた瑠璃よりもよっぽど高彬の方がいろんな思いがあったり、生活が変わったんだろうなぁ・・・と。
まさしく「男はつらいよ」ですね。

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No title

いいトコロで…(笑)それにしても、高彬編読んでいると、ついつい「えっと、そもそも初夜編どうだったっけ…」って久々に初夜編読み返してまた楽しんじゃってます(^^)/「1話で2度美味しい高彬編」です!

みそさま

> ウキウキそわそわしながら待ってます。(笑)

高彬もそんな感じなんでしょうかね・・?(笑)

> 『ぼくがどれだけ瑠璃さんに純情を捧げてると思ってるんだよ!』
> でも瑠璃には言わなきゃ伝わらないよ、高彬。

もし伝えたら瑠璃なら本当は嬉しいくせに「誰も捧げてくれなんて言ってないわよ」なんて言いそうですよね。
そして高彬、撃沈・・・。

なるべく早めのアップを目指しますね!


> 思わず笑っちゃいました。

あぁあ…。
高彬と瑠璃の接吻は次回に持ち越しなのですね。
じらさないで下さいませ~。(≧ε≦)
ウキウキそわそわしながら待ってます。(笑)


まさに高彬の心の叫びですね、これ。↓↓↓
『ぼくがどれだけ瑠璃さんに純情を捧げてると思ってるんだよ!』
でも瑠璃には言わなきゃ伝わらないよ、高彬。
思わず笑っちゃいました。
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