*** 筒井筒のお約束をもう一度・・4<高彬・初夜編> ***

『なんて素敵にジャパネスク〜二次小説』



           ※このお話は初夜編(完結済み)の高彬サイドの話です。
                        






*** 筒井筒のお約束をもう一度・・4<高彬・初夜編> ***










「何をしているとは、これはまた無粋なことを、権少将どの」

内心の怒りを抑えながら、ぼくは務めて平静に振る舞った。

そんなぼくの受け答えが気に食わなかったのか、権少将が一歩近づきさらに睨んできた。

「こんな夜半に宮中の任務で女性のもとを訪れるわけはないでしょう。恋人に会うためにやってきたのですよ」

微動だにせず一気に言ってやると、一瞬、怯んだように顔を歪め、それでも気を取り直したかのように

「恋人だと?大納言どのから、瑠璃姫に通う男はいないと聞いている」

ぞんざいに言い

「見え透いた嘘をつくな」

吐き捨てるような口調で続けた。

心中で、これから繰り広げられる応酬をすばやく組み立てる。

「瑠璃姫とは筒井筒の頃からの恋なのですよ。今までは秘めてきましたが、本日、大納言さまにも正式にお話をしました」

一言一言、権少将の目を見据えながらゆっくりと言うと、最初はふてぶてしかった表情が徐々にあやふやなものに変わっていった。

大納言さまに話したと言う所で、この話があながち嘘ではないと思ったのだろう。

「そうですよね、瑠璃姫」

呆然と座り込んでいる瑠璃さんに声をかけながら、ちらりと瑠璃さんの着衣を確認すると、少し合わせが開いているのが気になるけど、それ以外は特に目立った乱れはないことにとりあえずは安堵する。

「さぁ、姫、こちらに」

手を伸ばし、こっちに来るように促すと、はじかれたように瑠璃さんが動き出し、権少将を避けるように回り込みながらぼくのところにやってきた。

すぐに瑠璃さんを背中に隠す。

指一本、触れさせるものか。

確かに権少将はぼくより官位が上だけど、それとこれとは話が別だ。

「何と言うこと・・!大納言どのも恥知らずな!」

目の前で<獲物>を隠された悔しさなのか、はたまた恥をかかされた苛立ちなのか、権少将は敵意を隠しようともせずに放言した。

「権少将どのにも、人に聞かれたは困る醜聞がおありなのではないですか?」

思っていた通りの応酬になり、用意しておいた止どめの言葉を口にすると権少将は言葉に詰まり、顔を真っ赤にして、けれどそのまま何も言わずに部屋を出て行った。

権少将の気配がなくなり、静かになった部屋を見回すと、几帳が倒れ、広げられたままの何かの巻物が床に散乱し、夜具が乱れている。

もう少しで瑠璃さんは、この夜具の上で・・・。

そう思った途端、がつんと頭を殴られたような衝撃を感じ、それは少し恐怖心にも似ていて

「瑠璃さん・・・大丈夫だった?」

瑠璃さんにかけた言葉が、少しだけ震えてしまった。

「何か・・・変なことはされなかった?」

さっきから瑠璃さんが黙ったままなのが気になり、一番、怖くて、だけど聞かずにはいられないことを確認する。

どこか怯えたような目をした瑠璃さんは、それでもコクコクと頷くと、震える手でぼくの袖をそっと掴んできた。

「良かった・・・」

思わず目を瞑る。

何もなくて、本当に良かった・・・。

「宮中でね、権少将どのが従者らに三条邸に行くように命じているのが聞こえたんだ。こんな時間にどうして・・と、胸騒ぎがして、ぼくも急ぎ退出して来てみたんだよ。もっと早くに来れればよかったのに・・・ごめんよ」

本当にもっと早くに来てあげればよかった。

そうしたら瑠璃さんは怖い思いをせずに済んだのに。

自分の判断の甘さを後悔していると

「・・・高彬ぁ」

ふいに瑠璃さんが声をあげ、そのままぼくにしがみついてきた。

そうしてわんわんと声をあげて泣き、その泣き方が幼い頃の瑠璃さんそのままで、ぼくは胸が詰まってしまった。

ごめん、瑠璃さん・・・。

「怖い思いをさせてしまったね、ごめんよ」

しゃくりあげながらしがみつく瑠璃さんが可哀相で、ぼくは瑠璃さんをぎゅうっと抱きしめた。

抱きしめても抱きしめても、でも・・・それだけでは足りない思いが湧きあがってくる。

そっと瑠璃さんの身体を離して、瑠璃さんの顔を見た。

童の頃から、ずっとずっと見ていた顔。

笑い顔も泣き顔も、横顔も俯く顔も、ぼくは全部知っている。

だけど、今、目の前にいる瑠璃さんは、今までのどの瑠璃さんの顔とも少し違って見え、ぼくはドキドキが止まらなくて困ってしまい────

考えるよりも先に身体が動いていた。

唇と唇が一瞬触れ、離れた時はさっきよりももっとドキドキしていた。

涙の跡の残る潤んだ目で瑠璃さんに見つめられ、ぼくはたまらず瑠璃さんの頬を両手で包み込んだ。

瑠璃さん・・・。

今度は意志を持って少しずつ瑠璃さんの顔に近づくと、瑠璃さんが静かに目を閉じ、ぼくはもう一度、唇に触れた。

瑠璃さんの唇は柔らかくて、少しだけ涙の味がした。

瑠璃さんは、本当にどこもかしこも柔らかいんだな・・・。

そんなことが頭をよぎり、ぼくは慌てて唇を離すと立ち上がった。

「どうしたの?高彬」

ふいに立ち上がったことに驚いたのか瑠璃さんが言い、その声音がいつもの声だったことにホッとした。

接吻したこと、怒ってないんだ・・・。

「帰っちゃうの」

心配そうな言葉にぼくは頭を振って見せた。

「いや、あんなことがあった後で今日は瑠璃さんも不安だろう。ぼくが宿直してあげるよ」

ぼくを見上げる瑠璃さんが可愛くて、少し慌ててその場を離れようと歩き出すと

「待ってよ、高彬だって仕事の後で疲れてるんでしょ。一緒に寝ましょうよ」

屈託ない言葉が聞こえてきて、ぼくはギョッとして足を止めた。








<続>
(←お礼画像&SS付きです)

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Secre

非公開さま(Nさま)

Nさん、こんばんは!

一途な高彬、良いですよね~。
この段々と近づいていく恋のはじめのあの感じって独特ですよね。
音にしたら「キュンキュン」(笑)

同じペットでも、反応があるとやっぱり嬉しいみたいですよ。
カブトムシはなつくわけじゃないし、どうも飽きてしまうみたいですね・・・。
また、こちらこそよろしくお願いします。

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cookiemomさま

こんにちは!

> 理性が焼き切れなかった高彬に今さらながら感心します。

そうなんです。
今回、改めて高彬目線で書きながら
(ここで高彬の理性が吹きとんだら、それはそれで面白かったんじゃないの・・?)
と思ってしまいました。
そしたら「初夜編」は2話で完結しちゃいますけど(笑)

初夜編、読み返してみたら、高彬、自ら好んで「おあずけ」してる場面が数ヶ所ありました(笑)

No title

「一緒に寝ましょうよ」…あざとい!
常々瑠璃はあざといと思ってましたが、高彬視点でこのセリフを聞くともうものすごい破壊力ですね!!
理性が焼き切れなかった高彬に今さらながら感心します。

今回もとっても素敵でした。次回もすごく楽しみです
+(0゚・∀・) + ワクワクテカテカ
瑞月様、ありがとうございます!

kabaさま

kabaさん、おはようございます!

> みそさまの「高彬フィルター」確かにすごいですね(*^^*)

「瑠璃フィルター」は、時々、雲ってしまうときもあるようですが(笑)「高彬フィルター」は曇り知らず!安定の威力です。

> 瑠璃は自然にしてるだけなんでしょうけど 笑

ある意味、魔性の女?!(笑)
高彬にとって、全てがツボなんでしょうね。あー、うらやましい・・・。

No title

かっこよく権少将を追い払う高彬も、瑠璃にドキドキする高彬も両方見れて
楽しんじゃいました♪ 全て瑠璃さんが好きっていう気持ちなんですよね。
みそさまの「高彬フィルター」確かにすごいですね(*^^*)
守ってあげなきゃ!って感じになります。
瑠璃は自然にしてるだけなんでしょうけど 笑

まだまだドキドキが続きますね、高彬頑張れ〜!





非公開さま(Kさま)

瑠璃編を読み直しながら書いてるので、毎日の更新は無理そうなんです~、ごめんなさい。
でも、切りの良いところまでは、なるべく間隔をあけずに更新するようにしますので!
一途って良いですよね。

ヨッシーさま

> 高彬が、カッコ良いですよ。権少将なんて、殴っちゃえと思いました。

一発くらいグーで殴っても良かったですよね!(笑)

> 融ちゃん、高彬の仕事できたかな。かなり、心配です

確かにそうですよね。うろたえてる融の姿が目に浮かんできますね・・・・。

非公開さま(Tさま)

Tさん、こんばんは~。

高彬って、瑠璃目線だと「年下のガキ」扱いで書かれてますけど、かなり最初から「男くさい」人ですよね。
この先、少し間、高彬にはイロイロ葛藤してもらうことになりますが(笑)

同じ家族構成とは!なんか嬉しいですね~。
あちらはコメ欄は設けてないのですが、良かったら時々、覗いてみてくださいね。

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No title

更新ありがとうございました♪ 二人の初チュー、ニヤニヤしながら読みました。前回、良い所で続くだったので、私がおあずけでした( ̄∇ ̄*)ゞ
高彬が、カッコ良いですよ。権少将なんて、殴っちゃえと思いました。官位なんて関係ないですね。高彬のチューが何倍も良いですよ。瑠璃さんの柔らかさを味わるな所ぐふふと怪しくなりました(///ω///)♪ 融ちゃん、高彬の仕事できたかな。かなり、心配です

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ラムティさま

> 権少将ザマーミロって感じです!高彬にかなうはずないですもん!!

ですよね~!仕事の能力だって、瑠璃を思う気持ちだって、断然高彬の方が上!

> 初☆チューまではうまくいくのにこれからが長い長い道のりですね~

そうなんですよ。ここからが長い・・・(笑)
高彬の苦労の(?)始まりです。

みそさま

> 瑠璃に対して「大切な女の子」っていう想いを強く感じますもの。

ずっと好きだったんですもんね。
どんなに瑠璃がお転婆でも、高彬にとっては「女の子」なんだと思います。

> それにしても高彬、心配し過ぎ!
> 初チュー後に怒られるなんてことありえませんから!!

瑠璃さんならありえるんだよなぁ・・・とか、そんな感じなんでしょうか?(笑)

ぐふふっと笑いが止まりません(笑)
権少将ザマーミロって感じです!高彬にかなうはずないですもん!!
(個人的には高彬が瑠璃父に結婚の許しを聞きにいった場面も見たかったですが...(笑))

初☆チューまではうまくいくのにこれからが長い長い道のりですね~
毎日更新されてないかドキドキしながら待ってます♪

改めて

結婚前の高彬の視点って良いですね~。
瑠璃に対して「大切な女の子」っていう想いを強く感じますもの。
なんだか初々しくて、より一層、瑠璃が可愛く見えます。
恐るべし『高彬フィルター』o(`▽´)o

それにしても高彬、心配し過ぎ!
初チュー後に怒られるなんてことありえませんから!!
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