*** 筒井筒のお約束をもう一度・・3<高彬・初夜編> ***

『なんて素敵にジャパネスク〜二次小説』



           ※このお話は初夜編(完結済み)の高彬サイドの話です。
                        






*** 筒井筒のお約束をもう一度・・3<高彬・初夜編> ***












詰め所へと向かいながら、ぼくはふと足を止めた。

今、耳に入った言葉がやっぱりどうにも気に掛かる。

車寄せですれ違った権少将が従者に密やかに何事かを告げた言葉。

(・・・に向かってくれ)

三条邸に、と言ってなかったか────?

権少将と大納言さま、何がしかの公務の連絡事項があってもおかしくはないけれど、こんな時刻に?

それに権少将と言えば、瑠璃さんとの見合い話しにすっかり乗り気で、さすがに今の時点で大納言さまから取り止めの話しはまだ伝わっていないはずだ。

一瞬、嫌な想像が浮かび、ぼくは慌てて打ち消した。

まさか、な。

まだ取り止めの話が伝わってないのならば、権少将だって変な考えは起こさないだろう。

我こそはいずれは三条邸の婿、と思っているのなら、その時期をおとなしく待つはずだ。

いくら女グセが悪いとは言え、そこまで愚かではないだろう・・・。

考え過ぎだ。

先回りして考えすぎるのは、どうもぼくの悪い癖だな。

「・・・どうしたんだよ、高彬。難しい顔して」

ふいに声を掛けられて顔を上げると、融が立っていた。

「皺、寄ってるよ。何か仕事で失敗でもしたの?」

ぼくの眉間を指差しながら、ニコニコと言う。

「ばーか、おまえじゃあるまいし」

軽く小突いてやると、融は「いってぇ」とわざとらしく顔をしかめ小突き返してきた。

「詰め所、行くんだろ。一緒に行こうよ」

「うん」

融と並んで歩き、話しかけてくる融の言葉に適当に相槌を打ちながら、自分を落ち着かせるためにすばやく考えをまとめて見る。

三条邸ならしっかりした門衛も付いているし、それにしっかり者の小萩もいるし・・・。

「・・・え?今、何て言った?」

融の口から<小萩>と聞こえた気がして、ぼくは思わず聞き返していた。

「今?今夜は暖かいね、のこと?」

「いや、その後」

「後?・・あぁ、小萩が今日から里帰りするってこと?ぼく付きの女房が、わたくしもお休みをいただきたいですわ、なんて言い出しちゃってさ・・・って、高彬、どこ行くんだよ!」

今夜は小萩がいないって?!

さっき収まったはずの嫌な予感がまた湧き出してきて、ぼくは踵を返すと足早に歩き出していた。

「高彬ぁ!仕事は!」

「ごめん!ぼくの分も頼む!」

「・・・そんなぁ」

情けなさそうに呟く融の声を遠くに聞きながら、ぼくは振り返りもせずに車寄せへと向かった。

驚く従者らに行き先を告げ、急いで車に乗り込む。

さっき権少将が出てから、そう時間はたっていないはずだ。

万が一、ぼくの思い過ごしならそれでいい。瑠璃さんの部屋の様子だけ見て帰ってこよう。

だけど、もしもの時は・・・。

ぼくは薄暗い車内で、空を睨みつけた。








*****************************************************************







ガタン、と音がして急に車が止まった。

外でわらわらと人の動く気配がしたかと思ったら従者の声が聞こえてきた。

「若君、申し訳ありません。大きな石を踏んでしまったようで車輪が外れてしまいました」

ちくしょう・・!寄りによってこんな時に!

ぼくは簾を巻き上げ

「沓をこっちへ」

慌てふためいている従者に指図をし、用意されるのを待っていると

「若君・・・どちらへ・・」

松明を持つ将人がおずおずと聞いてきた。

「ここからは徒(かち)で行く」

「そんな・・!危険でございます」

「三条邸までは目と鼻の先だから大丈夫だよ」

「ではお供します」

月もない三条通りは、文字通りの真っ暗闇で、なるほどこれならば石に気づかずに乗り上げることもあるだろうと思われる。

松明の灯りをたよりに歩いていくと、ほどなくして三条邸の築地塀が見えてきた。

どこまでも続くと思われる塀を横目に歩きながら、自然と足は速くなっていく。

走りたくとも、こう暗いと思うように走れないのがもどかしい。

まさかな、と言う打ち消す気持ちのそばから、悪い予感が這い上がってきて、だんだん胸が苦しくなってくる。

ようやく門が見えて来た時、ぼくは将人から松明をひったくるようにして取り上げ、駆け出していた。

慌てたように付いて来る将人の気配を背中に感じながら、繁みを分け入り庭を横切ると、一路、瑠璃さんのいる東の対屋へと向かう。

瑠璃さんの部屋が見え、階の下に沓があるのを認めた途端、頭に血が上った。

同時にガタンと何かが倒れるような音が聞こえ、ぼくは松明を将人に放るように渡すと、一気に階を駆け上り、妻戸をぶち開けた。

ぼくを呼ぶ瑠璃さんの声が聞こえた気がしたけれど、それを確かめる余裕はなかった。

ぶち開けた勢いそのままに部屋を横切り、瑠璃さんに覆いかぶさっているであろう男の肩に手をかけると、力づくで引きはがす。

離れろっ!

男はバランスを崩したかのように膝を付き、灯台の火に浮かんだのは────

案の定、権少将だった。

憎々しげにぼくを睨みつけてくる。

「こんなところで何をしている、衛門佐」

何をしているって?

それはこっちのセリフじゃないか!







<続>


(←お礼画像&SS付きです)

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Secre

紗姫さま

紗姫さん、おはようございます。

>吉野の高彬が大好きで!!

瑠璃が記憶を失ったあたりの話ですね!
まだまだ先のシーンですが、あの辺りはさらに丁寧に書いていこうと思っていますので、お付き合いくださいね~。

非公開さま(Nさま)

おはようございます。

まずは、おめでとうございます!Nさんもホッと一安心・・・といったところでしょうか。
良かったですね!

そして、高彬編も読んでいただきありがとうございます。
次のお話しは、そう!キスシーンですよ~。
今、書いてますので、もうしばらくお待ちくださいね。

待ってましたー!!

初夜編の高彬バージョン!!この下りの高彬もかっこよくて大好きなんですが、吉野の高彬が大好きで!!何度読みなおしたか…(´∇`)高彬サイドのお話が読めるなんて!って、もうニヤニヤしながら夜な夜なスマホから覗いています( 〃▽〃)続き楽しみにしてます!!!

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非公開さま(Kさま)

Kさん、こんにちは。

高彬って朴念仁とか言われてますけど、勘の良さってありそうですよね。
高彬、15歳ですよ~。もぎたてのフルーツのようにフレッシュです!(笑)

ぺんぺんさま

こんにちは!

> 昨日とは違って寒い朝です(>_<)

今日は寒いですね。こちらは今、雪が降り始めました。
昨日と最高気温が10度以上も違うんですって。身体がびっくりしてます。

> もし何か変なことされてたら、高彬どうなっちゃうのでしょうか。もしや………抜刀?!
> 権少将ならちょっとくらい斬られても、いいんです(笑)!!

そんな楽しげに!(笑)
でも、権少将って名前ばっかりで、武芸もなにも出来ない弱っちいイメージですよね。
原作で「大立ち回りを演じた」ってありましたけど、逃げ回ってたって感じ・・・。

> エアコンは直るのに部品の欠品とかで2週間くらいかかったんです!故障中はとても寒かったので、みんなでカイロ貼りまくったり、室内なのにコート着たりして仕事してましたよ~ 新年早々、大爆笑でした☆

2週間も!
なかなか得がたい体験をされましたね・・(笑)でも、楽しそうな感じの職場ですね!

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No title

おはようございます。
昨日とは違って寒い朝です(>_<)

瑠璃さん、間一髪で助かってよかった!
もし何か変なことされてたら、高彬どうなっちゃうのでしょうか。もしや………抜刀?!
権少将ならちょっとくらい斬られても、いいんです(笑)!!

エアコンは直るのに部品の欠品とかで2週間くらいかかったんです!故障中はとても寒かったので、みんなでカイロ貼りまくったり、室内なのにコート着たりして仕事してましたよ~ 新年早々、大爆笑でした☆

非公開さま(Nさま)

おはようございます。

毎日チェックしていただいてるだなんて、ありがとうございます。
のんびり更新になってしまうと思いますが、よろしかったらお付き合いください。

う~む、瑠璃父目線や、政文・将人・守弥以外の側近目線ですか・・・。

今、見てみたら、賊が入って名前を呼びつけたときに「兼助」って言ってますね。
しかも将人より先に(笑)どんな人なんでしょうね。
兼助のイメージが膨らんだら、「兼助目線」書けるかも・・・しれません。(が、書けないような気もします・・その時はごめんなさい)

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非公開さま(Tさま)

Tさん、こんばんは。

さっそく読んでいただいてあいがとうございます!

権少将目線の話ですか・・・(笑)しかも高彬にビビる心情・・・。
確かに興味深いといえば、深いですよね。
でも、もし書いたらかなり可哀相な扱いになってしまいそうなんですけど~!(笑)


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みそさま

> しかも刻一刻と近付いてくる初チュー!!(≧ε≦)

そうなんです!次回、初チューですよ、初チュー!

今までに書いた高彬のあれこれをいったん全て忘れて、まっさらな気持ちで書いてますよ(笑)

> ちなみに原作の通法寺炎上の際、高彬が指示を出していた権少将ってあの権少将ですかね?
> だとしたら随分早く、高彬に追いつかれてますよね、少将の位。

何かで氷室先生が「権少将はあのあとどうなったんだろう。案外、高彬に抜かれてたりして」なんて書いていた気がします。

多分、権少将のような気がしますよね。
高彬の方が4歳くらいも年下なのに、同じ少将ですもんね。

> やっぱり高彬は有能ってことですかね~♪

ですよね~!

めったに見れないヒーロー登場の舞台裏!
新鮮です。
それに冷静に権少将と対峙していた時の高彬の心情とか、すごく興味があります。
しかも刻一刻と近付いてくる初チュー!!(≧ε≦)
あぁ、気になります~っ。
特に瑠璃に『一緒に寝ましょうよ』と誘われた時の高彬の心情!!
きっと表には出てないけど、かなり動揺してるんだろうなぁ。(≧∇≦)
楽しみです。

ちなみに原作の通法寺炎上の際、高彬が指示を出していた権少将ってあの権少将ですかね?
だとしたら随分早く、高彬に追いつかれてますよね、少将の位。
宮家のお坊ちゃんだから、それなりの位はもらえそうですが…。
やっぱり高彬は有能ってことですかね~♪
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